全社員が経営者のように動くポッド型組織法

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ビジネスにおける多くの問題は、社員、マネージャーと、オーナーが利益について同じ立場で考えることができれば解決するだろう。全員を経営者のように行動させる方法はあるだろうか? 答えはイエスだ。しかし、会社の構造を、あなたが少々不都合に感じるかもしれない形に変えることが条件である。

同列のインセンティブという考え方は、聖杯のようなものだ。ゴールは常に同じ、マネージャ、社員の利益と、オーナーの利益を同じにすること。


(上から時計回りに)オーナー 従業員 マネージャ

なぜ多くのインセンティブプランが失敗するのか?

販売員に歩合給を支払うのは、彼らに意欲を持って何かを売ってもらいたいからである。ビジネスの価値が高まることに興奮してもらうため、利益分配やストックオプションを行う。役員の給料を、給与上昇、利益上昇や株価と一致させようとする。

しかし、これらの試みはほとんど、人々に経営者と同じ姿勢を持たせることに失敗する。なぜか?

原因1: 短期的思考
合理的な時間枠の中で人々に報酬を与えなければならないため、多くのインセンティブは短期の尺度に焦点をあてがちである。短期の結果によってインセンティブを決めることで、長く企業が生き残るのに不可欠かもしれない長期的思考の分が悪くなる。例えば、歩合給を稼ぐため、販売員は企業にとって利益にならない取引をしたり、顧客に必要以上の購入を強要したり、売上げを期末にねじ込むために値下げをし過ぎたりする。また役員は、短期的には良く見えるものの、長い目で見ると価値を損ねるようなやり方で、株価などの指標をつり上げる。

原因2: 曖昧すぎる
ストックオプション、利益配当プランは、企業の業績が良ければ社員の利益になるが、企業が大きくなればなるほど、自身の働きが株価に影響を与えたのだと感じ難くなる。自分たちの仕事が株価や利益に何らかの方法で寄与していることを、たいてい、現場の従業員は信じにくい。彼らが企業に与えるインパクトは、企業全体の行動と比べると非常に小さいのだ。

産業の時代は、ある振る舞いについては褒美を与え、他には罰を与えるという、いわばアメとムチによる管理の上に築き上げられた。この方法は、仕事が既存の形式に則ってこなせる決まり切ったタスクに落とし込まれた、予測可能な世界では成功を収めてきた。しかしそれは21世紀には機能しないだろう。近い将来に、従業員に、可能な限り最高の仕事をしてもらう必要がある。彼らの手だけでなく、頭と心も欲しいのだ。


(上から)あり なし アメとムチによる管理

著書『Drive: The Surprising Truth about What Motivates Us(モチベーション 3.0)』で、Dan Pinkは、歩合給やその他の金銭の賞与といった外的な報酬は、ある限られた条件の上で機能することを示す研究に言及している。それは、よく知られた、Adam Smithの「分業制ピン製造工場」のように、人々が決まりに従うことだけが求められるタスクの場合だ。しかし、複雑で創造的な思考法が必要な職では、外的な報酬は危険だ。なぜなら、それは人々から、現場周辺の小さなことに気づき、新しい解決法を作り出す能力を奪いがちだからである。

Pinkの処方箋はこうだ。より創造的に考え、問題を解決し、不確定な状況でもフレキシブルでいることが求められる世界では、外的なインセンティブではうまくいかない、代わりに芸術家や発明家やその他のクリエイティブな職業人に活力を与える、内発的な動機(熟練、自立性、目的)に注力すべきである。

確かにPinkの指摘は優れている。内発的な動機は確実に人々を奮い立たせ、創造的な成功へと突き動かす。しかしビジネスにおいては、創造的な成功は考慮すべき様々な要素の一部に過ぎない。ビジネスでは、金を生み出さねばならない。発明家やクリエイティブな人々の歴史をざっと見渡すと、創造性と発明は改革に欠かせない要素である一方、改革とビジネスの成果を同時に達成するにはそれだけでは足りないのが分かる。

ビジネスにおける偉大な改革家は創造性だけで成功したわけではない。彼らの成功は、創造的な思考とビジネス理論の混合物である。Xerox PARCには創造性と発明は欠けていなかったが、Steve JobsとSteve Wozniakはその創造性を、人がお金を払いたいと思うような実体ある製品に翻案することができた。ビジネスの偉大な改革家たち、Henry Ford、Thomas Edison、Benjamin Franklin、John D, Rockefeller、Andrew Carnegie、Walt Disney、Sam Walton、Ted Turnerらは、創造性とビジネスセンス、顧客とマーケット力学の深い理解を一体化させた。

インセンティブの同一化への挑戦には3つの部分がある。

  1. インセンティブは、人がビジネス全体に与えた影響がありありと分かる、現実的で手に触れられるものでなければならない。
  2. 長期的思考と短期的思考のバランスをとるべきである。
  3. 報酬は、ビジネス全体をより健全に成功に導いたことに対して、釣り合いを持たせるべきである。

良いインセンティブシステムは経営者のように考え、行動したことに対して報酬を与えるものだ。では、全ての従業員に自分が経営者であるかのごとく仕事をしてもらうことは可能だろうか。

可能だ。そしてその答えは実にシンプルである。全員に経営者のように動いてもらうには、彼らに「ビジネスの中のビジネス」を与えることだ。

ポッド型組織という「まるい思考法」

そのアイデアを機能させるにはまず、大規模の近代的ビジネスデザインに最もよく見られるテンプレート、複数事業部制が唯一の方法ではないことを理解することだ。1920年に最初に実現された複数事業部制の形式は今日の標準になった。その形式はいくつかの面では飛び抜けて効果的だが、変革に際しては重大な弱点も抱えている。

組織デザインに関し「当たり前」に見えることが実際は全くそうではないことがある。基本事項として当然視していることが、実際は選択肢に過ぎないこともある。


(上から)取締役会 CEOと企業管理 事業部 複数事業部制の組織

組織を設計する時、私たちは部署に分けがちである。より効率的に業務を進めるため、ビジネスを分割し、仕事を分割する。ソフトウェア開発者たちをまとめて、彼らがソフトウェアに集中できるようにする。販売員らをまとめて販売とお互い学びを共有することに集中できるようにする、など。誰もがそれは当たり前だ、と言うだろう。そして非常に効率的だ、と。しかし、効率性が一般化し、ますます価値が改革によって喚起される世界に移ると、効率性はもはや最優先のゴールではない。

効率性よりも改革に最適化するには、組織内の仕事をどのように分けたらよいだろうか? 事業部制の思考法を、まるい思考法と呼ぶアプローチで補完する、というのが答えだ。

皆が慣れ親しんでいるような事業部制の組織では、仕事を機能と専門に分ける。組織をこのように分け続けていると、効率性を増進できるが、そのビジネスの総合的目的から人々を切り離してしまうという副作用がある。機能グループの人々は、組織の目的ではなく、グループ内の仲間に自己を同一化しやすい。


(上から)組織化の理念 コア機能、プロトコル基準とサービス ポッド(小さな集団) ポッド型組織

ポッド型組織では、仕事を「ビジネスの中のビジネス」に分ける。それぞれが、自身の権限のみによって完全なサービスとして機能し得る。各ポッドがスモールビジネスとして機能するので、その焦点はポッドの外、つまりその顧客に留まる。全体として見ると顧客は組織の中や外にいるかもしれないが、各ポッドは完全なサービスを提供する。まるいアプローチによって、大きな企業は小さな企業の群れや集まりのように動けるようになるのだ。これは全体に、事業部制組織ではなし得なかったレベルの柔軟性と順応性を与える。ポッド型組織はフラクタルな組織だ。全てのポッドはそれぞれ自律的なフラクタルユニットであり、ビジネス全体を表し、同時に全体の代理としても機能するのである。

どこかおかしいと思うだろうか? 本当にこれは可能なのか?

4つの業界から4つの例を見てみよう。食品加工会社、小売店、ソフトウェア会社、そして複合企業である。

例1: 食品加工会社Morning Starの自己組織化された市場

私企業であるMorning Starは1970年に、トラック1台のトマト運送業としてスタートした。今日、会社は世界最大のトマト加工業者となり、年間800億円の収益を上げている。

Morning Starでは、従業員は自分で自分を管理し、報告は従業員同士で行うだけである。企業は、従業員が自身の活動をコーディネートできるようなシステムと市場を提供している。全ての従業員1人1人が、仕事してケアすべき卸売り業者と顧客、そして個人的な関係性を持っている。

全ての社員は個人のミッションステートメントを書き、自分がどのように会社のゴールに寄与するかを宣言する。それを達成するためのトレーニング、資源や恊働は責任を持って行わねばならない。さらに全員が年次で「同僚の意見書(Colleague Letter of Understanding (CLOU) 」を作成し、翌年に向けた約束と期待を述べて、同僚との顔をつき合わせたミーティングで交渉を行う。まとめられた全ての合意事項は3,000人の対同僚のつながりについての記述であり、それはまた企業全体の活動の記述でもある。Morning Starの各事業部も、同様に、他のユニットと合意事項を作成する。

従業員が何かを必要だと考えた時は、発注書を出すことができる。より良い業務遂行のためにサポートや新しい役割が必要な時は、雇用プロセスを開始できる。その額が大きくなればなるほど、当然、同僚を納得させ、注文に対する合意を得ることが重要になる。なぜならユニットの命運がかかっているからだ。時間が経つにつれ、従業員は徐々により複雑な役割を求められるようになるので、彼らを助ける役目の人を雇う。管理職は存在しないので、管理職に就くための競争はない。前進するためには、従業員は同僚により価値あるサービスを提供する方法を見つけなければならないのだ。


Morning Star:互いに説明責任を持つ市場

Morning Starの規律は、相互の説明責任を持つという強い意識から来ている。問題解決には調停を通す。調停で解決しない場合は、同僚の委員会が開かれる。それでもうまく行かない場合、争議は社長に上げられ、最終決定を下される。問題が深刻かつ長引く場合は、従業員は解雇されるかもしれない。しかし、解雇の可能性がある一方、彼らの誰も、頭上をウロウロする上司を持たない。彼らが持っているのは顧客だ。

1週間おきに会社は、財務やその他の指標に関して、誰でも見られる詳細なレポートを発行する。

各事業部は業績によってランク付けされ、リストの末尾に並んだユニットには厳しいやり取りが待っている。年次企画会議では、事業部は全企業に対して計画を示し、従業員はバーチャル通貨を使って投資し、それはその年の予算を伝えることになる。従業員は、業績を評価し、業績に基づいて支払いレベルを設定する報酬委員会を選出する。

Morning Starは、全ての従業員がビジネスの中のビジネスを代表する市場である。Morning Starについてもっと知りたい人は、Morning Star Webサイトや、Gary HamelによるHarvard Business Reviewの優れた記事、『First, Let’s Fire All the Managers (まず、全管理職を解雇しよう)』を参照してほしい。

例2: 小売店ノードストローム方式

Nordstromは、卓越したサービスと年間1兆円の収益を上げていることで知られるハイエンド小売業の株式会社である。

Nordstromの社員ハンドブックはとても短くシンプルで、カードサイズに収まるほどだ。そこに書かれているのは、

「いかなる状況においても最善の判断をくだそう。ルールはそれだけだ。」


(上から)Nordstromの方法 サービス文化 販売+セレクション 管理トラスト+サポート 財政的報酬

Nordstromの「顧客第一」の文化が行動の規範となっているものの、Nordstromの販売員は自由に決断ができる。その顧客サービスの文化はNordstromの成功の核心である。全てのシステムはNordstromのフロアにいる販売員をサポートし、彼らが考え得る限り最高の顧客サービスを実践できるように作られている。Nordstromが何かの在庫を持つ時は、全サイズを提供できるように努める。あるサイズの商品がないために顧客を落胆させたくないのだ。

販売員は他のストアのように、部署に縛られてはいない。販売員が、自分の顧客が洋服や靴、コロン、その他の商品を探すのを助けるため店舗中を歩き回りたいなら、それは許される。Nordstromの販売員はTwitter、eメール、それ以外の何でも都合の良い方法で顧客と連絡を取り合える。顧客へのメッセージはこうだ。希望の購入方法、希望の連絡方法が何であれ、望む通りにいたしましょう。

顧客は商品を家に持ち帰り試着することを勧められ、いつでも返品することが可能なのだ。もし、「いつまでに返品すればよいのか」と聞けば、販売員は「いつでも」と答える。しかも、本当にそう思っているのだ。あるNordstromの顧客が、「Nordstromが大好きな理由は、一人で店内を歩きたい場合は歩けるし、もし、助けが必要な場合はいつでも嫌な顔せず助けてくれるから」と言っている。

顧客にいかに愛されているかが分かる。

現場のセールス・アソシエイトを信頼し、決定する責任を与えているため、ノードストロームでの買い物体験は、顧客にとっては「小さな店のオーナー自身とやりとりしているようなもの」だと、ウエスティン・ホテルの名誉会長ハリー・マリキンは言う。ノードストロームのセールス・アソシエイトは「売り場で必要な判断をすべて任されている。言ってみれば、個人商店のオーナーのようなものだ」。R・スペクター&P・D・マッカーシー著 山中鏆監訳/犬飼みずほ訳『ノードストローム・ウェイ 絶対にノーとは言わない百貨店』より。

Nordstromの企業文化では、社員に会社や利益より、顧客を第一に考え決定することが求められているNordstromが店という舞台を提供し、それぞれの社員が起業家かのように与えられた舞台で仕事を進めているのだ。コミッション制で、Nordstromの販売員でも、時給1,300円で、年収1千万円台も可能だ。ある販売員は次のように言っている。

Nordstromが全てのリスクを負い、素敵なお店や雰囲気、高品質の商品などを提供して、働く環境を作ってくれている。私はただ毎朝、一所懸命に働き、お客様を尊重し大切に扱う心構えで出勤すれば良いのだ。

Nordstromの社員は業界で最高のサービスが提供できるのは、販売員はNordstromというFortune500にランクされる企業の後ろ盾で個人起業家のように仕事を進めているからだ。

例3: ソフトウェア会社Rational Softwareの自己組織化されたチーム

1981年に設立されたRational Softwareは、ソフトウェアエンジニアのためのツールを提供していた。2003年にRationalはIBMによって2400億円で買収された。Rationalが買収される前の話なので、過去形で話を進めるが、もしかしたら今でもIBM内でも同じように組織が機能しているかもしれない。

Rationalの目標は社内の誰から見ても明確だった。「顧客を成功させる」だ。フィールドチームと呼ばれる小さく自立したポッド単位で顧客対応していた。それぞれのフィールドチームは技術やビジネスの専門家と協力し、独立した単体として機能するのだ。製品やプロジェクトの販売をしたチームが納品の責任も担っているのだ。必要な資源はパフォーマンスに応じてチームに提供される。

Rationalのチームをベースとしたアプローチは文化として社内全体に浸透した。「チーム意識がないとRationalでは働けない」と、1991年から 1999年まで、RationalのマーケティングVPだったJerry Rudisinは言う。Rationalは短期的に厳しい状況に陥ろうとも、チームの適応を第一にした。「私が地域マネージャだったころ、一番成績の良かった営業を1度だけでなく何度も首にした」と言うのは、17年間Rationalのあらゆる分野で働いてきたKevin Kernanである。「チームプレーヤーでない人間に対しては容赦しなかった。企業文化を害するものでしかなかった」。

Rationalのクロス・ファンクショナル・チームは、社内で経営技術を育成するのに最高だった。それは、全てのチームメンバーがビジネスのあらゆる側面を理解することができたからだ。チーム内でメンバーが綿密に連携し、常にお互いを刺激しているのだ。会社が成長するにつれ、多くの技術者が営業の道を切り開き、チームを新しい領域へと導いたのである。自分の会社を立ち上げた者も多くいた。


Rational:自然と構成されたチーム

ラショナルの経営陣は会社のポートフォリオのようにチームの管理に焦点をあてた。チームは次の5つの項目で評価された。

  1. 顧客の成功: 最も大きな評価対象であり、顧客の目標達成にチームは貢献できたのか、ということだ。
  2. 収益: 収益目標を達成あるいは超えたのか、である。
  3. チーム開発: チーム全体やメンバーの成長に最善を尽くすことはできたのかを評価。
  4. 領域の拡大: チームの活動の及ぶ範囲や収益を拡大できたのかが評価の対象になる。
  5. ビジネスの基本: 他のチームとの連携はできたのか、自分のお金を扱うように、会社の金を使っているかが評価される。

「収益目標は達成しても、全体的な評価が低いチームがいる場合がある。それは、担当した顧客が目標を達成できない場合である」とKernanは言う。ある年、7名で構成されたチームの新しい営業担当が首にされた。首に至った理由は、チームメンバーへの接し方が悪かったのと顧客と明確な契約が交わされ、この売り上げが会社全体の収益の25パーセントを占めるのにも関わらず、あやふやな内容の書類を作成したからだった。

チーム単位で機能しているところに、上層部からの介入はほとんど不要である。チームの中にパフォーマンスの悪いメンバーいたとしても、そのメンバーに改善するようプレッシャーを与えられるのは、なんと言ってもチームなのだ。「私が地域マネージャだったとき、配下に25チームありましたが、私はあまり彼らの仕事に口を出しませんでした。基本的管理はチーム自体が行っていました。」とKernanは言う。

チームは必要に応じて、外部のコンサルタントを雇用したり他のチームと適材メンバーを交換したりと、雇用決定も行っていた。「新しいメンバーを入れる時は気を付けなければならない」とRationalの営業ポッドのメンバーとして働いたことのあるRay LaDriereは言う。「雇った人が期待どおりでなかったとしても、1年間は雇い続けなければなかった。」パフォーマンスの悪い人が一人しかいなかったとしても、チーム全体のパフォーマンスに影響することがあるため、雇用決定には慎重だった。

「17年もの素晴らしい経験をさせてもらいました。Rationalでかなりの年数働いた人で同じような感想を持たない人はいないと思います」とKernanは言う。「ソフトウェアのデザインや作成、導入などの方法を変えることで世界を変えるのが我々の目的でした。そして変えることができたのです」。

例4: 複合企業Semcoの民主的な管理体制

Semcoはブラジルの複合企業で、液体や粉末、ペーストなどを製造して複雑な技術やサービスを専門に提供する。提供先は、冷蔵や物流、情報処理システム、不動産、在庫や資産の管理、バイオ燃料などの産業で、収益は年間約230億円である。

Semcoでは自己管理が行われている。人事部が存在しない。Semcoの従業員は何をするかを自分で選び、どこでいつ働くかも自分で決めることができる。自分の給料も自分で決めるのだ。部下が上司の評価をし、企業のリーダーは投票で選ばれる。さらに、新事業の参入や事業からの撤退なども従業員で決めるのだ。会社を民主制で運営している。

CEOのRicardo Semlerによると「このような体制をどのように制御するのかよく聞かれます。私は何もしていません。体制自体に機能させるのです」。

Semcoは、会社の重要な決断に社員も参加することでモチベーションを上げることができ、ただ上司から命令されて仕事をしている人よりも良い選択をするという理念から成っている。投票によって選ばれた委員がそれぞれの事業部の従業員を代表し、上層部のマネージャと定例会議で仕事場の問題を話し合う。工場の移設のような重要な事項に関しては、全社員が投票によって立場を表明することができる。

Semcoの従業員は働く時間も自分で決めることができる。これを初めて提案した時に、特に工場での作業においては無理だとマネージャが信じていたことを、CEOのSemlerは明かす。しかし、Semlerには確信があったのだ。「従業員に自己管理ができると思わないのか」と聞いたそうだ。マネージャにも従業員に自己管理ができることが分かり、実際に行われている。

Semlerは単純に「大人として行動してもらいたかったら、大人として扱えばいい」と言う。

従来の階層的管理を行っている会社よりも時間のかかる場合はある。これについては、Semlerの著書『Maverick: The Success Story Behind the World’s Most Unusual Workplace(異端児の世界でも最も珍しい仕事場でのサクセススト―リー)』で次のように述べている。

民主主義には反対意見が伴う。民主主義は管理する上で有効な手段ともなる。従来の経営陣は、説明、代替案、異議、不安など全てが話し合われた後に決定したことの方が、上からの決定事項よりも素早く導入できることを考えない。

Semcoの成功の要因となった企業理念の1つは、どの事業も全社員が全体を把握できるほどの大きさでなければならないということだ。Semcoでは、事業が成長し、150人を超えるようになると、その事業を2つに分けてしまう。

また、企業理念に透明性と信頼もある。

「組織の力の源は情報である。そのため、情報の隠ぺいや選別、保持などの行為は情報を蓄積して権力を手にしようとする人にしか有利にならない」とSemlerは言う。


Semcoでは、毎月全ての数字が共有され、内容の話し合いの場が持たれる

毎月Semcoでは、参加自由な会議が事業単位で開催され、事業に関する数字が社員に知らされ、検討や議論が行われる。また、財務報告書や貸借対照表、損益報告書やキャッシュフロー計算書などの理解を深められるよう社員のための講座も提供している。

利益に関してはどうなのか。

Semcoでも利益はとても重要で、軍司令官が武器に対して貪欲であるように、利益に対して貪欲である。武器の供給が止まってしまえば、兵士は死んでしまう。会社が利益を得られなければ、会社も死んでしまう。しかし、軍隊は兵士を食べさせるためにできたのではない。それは、会社も同じで、社員をどんどん雇用するために収益を挙げるのではない。食べ物は兵士の糧となり、戦う力になる。しかし、兵士には単なる消耗品としての役割だけでなく、崇高な目標、厳しい訓練や敵との戦いに挑む理由が必要だ。それと同じように会社でも利益と目標が同時に存在しなければならない。しかし、残念ながら、多くの会社では相容れないことなのだ。Ricardo Semler著書『The Seven-Day Weekend: Changing the Way Work Works(7日間の週末 働き方を変える)』より

Semcoの利益の25パーセント近くが社員に還元されるが、会社は分配の方法については決めていない。毎四半期、事業部ごとに収益貢献率が計算され、収益の23パーセントが事業部に渡り、事業部内で自由に分配できる。今のところ、常に事業部内で均等に分配されている。

社員の中でも、特に自信がある人は給料の25パーセントまでを会社に預け「リスク」を負うことができる。会社の業績が良ければ、ボーナスによって報酬が通常の150パーセントにまで上げることができる。反対に会社の業績が悪いと給料の75パーセントで我慢しなければならないのだ。

これで会社は成り立っているのか。Semcoは1980年の4億円から今日の230億円にまで成長しているのを見ると、成り立っていると言えるのではないだろうか。

ポッド型組織を試すべき理由

会社によって手段は異なるものの、Morning StarやNordstrom、RationalやSemcoはポッド型組織で成功している。このデザイン方式は、全ての状況や部署に当てはまるわけではない。しかし、この改革的な努力を会社は無視している場合ではない。長期的実行を可能にするためには、効率と改革的努力をバランス良く保つ必要がある。

ポッド型組織は珍しいが、理論ではない。事実である。小売販売業や製造業、IT業界、企業などでポッド型は適応できる。Fortune 500にランクされる企業でも応用できる。自分の会社ではどうだろうと考えていても、試してみないと分からないのだ。

まずは、改革的なことをする部署や店舗、事業所かR&Dグループなど1カ所で組織の再編をしてみるのはどうだろうか。R&D部や急成長を遂げているWebサービスの会社などをよく見てみれば、階層的というよりポッド的に編成されていることがあるかもしれない。

ポッド型組織で、従来とは完全に異なる方法で実行しなければならない4つのこと

  1. 情報は公開され誰もが入手できる必要がある。
  2. 社員の道しるべや会社の団結のきっかけとなる理念や基礎、土台が必要である。
  3. 縄張り意識がなく、率直な話し合いができ、自分のみならず他人にも責任を課すことができる人材が必要である。
  4. 人やチームが正しい決断をし、「ビジネスの中のビジネス」ができると信じるオーナーやマネージャが必要である。

ビジネスの中のビジネスを遂行させることで、社員の動機をオーナーや経営陣の動機に合わせることができるのだ。誰もがビジネスオーナーであり、マネージャなのだ。報酬は現実の有形となり、短期的、長期的扶助金のバランスは取れ、従業員はビジネスに貢献できれば報酬がもらえることになるのだ。

改革的なことを実現させたり、顧客に身近に感じたり、複雑な組織を管理したければ、ポッド型を試してみる価値はある。


著書『The Connected Company(つながりを持つ会社)』からの抜粋。