データ分析の未来 — 意思決定者に求められる「速い思考」とは?

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テクノロジー、データ分析、マーケティングに関するジャーナリスト。アワード多数受賞。

現代はビッグデータ、IoT、そして消費者情報の爆発の時代だ。ブランドや企業は統計を存分に活用しようとデータの入手にやっきになっている。

これはビッグデータのデータアナリストや企業にとっての金鉱であると言えるが、それだけでなく、データから金塊を探し出そうとするビジネスにとっても夢あふれる未開の分野だ。

今は初期産業のヒステリックとも言えそうな雰囲気が漂っている。そんな中、処理され分析された1000TBのブランドデータと1枚の画像が同等の価値をもつことすらあるかもしれない。

もしマーケターが、消費者のデータをすべて入手し、製品ラインで起こっていることを描いて視覚化し、一枚の画像にまとめたとしたらどうだろうか。


Image Credit: Gratisography

市場の動向についての50ページのレポートよりも、1枚のスケッチで知りたいことの全容が掴めたことがあるだろう。一瞬のうちに大量のメッセージを取得する方法があったとしたらどうだろうか? たとえば顔、アバター、または1曲の音など…。これは興味深く、未来的なアイデアだ。でもあなたが思うより早く実現するかもしれない。

SNS上の感情を音楽という言語に変換する

最近ロンドンで催されたフィールドワーク·フェスティバルでは、クイーンズ大学ベルファスト出身のデータ分析企業、AdreboardがMinistry of Sound(マルチメディアエンタテイメントビジネス)とチームを組んでとあるプロジェクトを行った。ソーシャルメディア上で、有名なブランド名に対する個人の感情表現を調査し、それを元に8分間のミュージックトラックを作成したのだ。この調査はPatchblocksを使い、世界的な広告代理店のHavas heliaによって実施された。

結果はDJに渡され、ハウスミュージックとミックスされて独自のサウンドになった。オンライン上の喜びや怒りの感情が、音楽という言語にどう変換されるかの実演だった。言うなればデータがグルーヴ感を得たのだ。

Adorebordはスタートアップの会社で、インターネットから収集したデータを使い、ブランドが持つ顧客への感情的なインパクトを測っている。彼らは「未来のデータはどのような形をしているのだろうか?」「Iotによって否応なくもたらされる情報の蔓延をどう視覚化すればいいのだろうか?」という課題に向き合っている。

Havas Heliaのデータ&デジタル最高責任者であるBen Silcox氏は、この革新的なプロジェクトにも参画した。彼は、私たちがどうすれば無味乾燥で科学的なデータの枠組みから逃れられるのか、ということを熱心に研究してきた。

私たちの生活の多くの部分にオンラインとのやりとりが関与している。ソーシャルメディア上での感情表現はほとんどが言葉によるものであることからも分かる通り、これらの多くは実体のないものだ。このプロジェクトは、オンラインデータをどのようにして実世界に持ち込み、新しく楽しいものを作り出せるかという試みだ。ブランドについては、まず手始めに彼らのビートが他と比べてどうなのか見て、何が最適化できるのかを判断するのだ。


Image credit: Adoreboard

Adoreboardは、幅広いブランドや個人がTwitterに投稿したコメントや閲覧数を特定し、分析した。そこからは、驚きや不快などを含む20種類以上の人間の感情が検出されたのだ。

そしてアルゴリズムを作成し、データをメロディーとリズムに変換した。Ministry of SoundのDJであるSheldon氏はこのTwitterから生成されたビートをベースに、ハウスミュージックとミックスして8分のミュージックトラックを作成し、それがヒットした。

簡単な答えはない。しかしUnileverのグローバル·データ&アナリティクス副社長Shawn O’Neal氏は、最近このように述べた。

私が発見した一番の教訓は、データが語る内容を人々に説明しようとする時、結局それはデータではないのだということを自覚するということだ。

どんなに数値が良かったとしても、ビジネスの意思決定者に対して表現し切れていなければ、決してうまく行かない。まったくインパクトがないのだ。

O’Neal氏はデータの洞察と単純化を常に大切にしてきた。データはどのような筋書きを語るのだろうか。

「速い思考」と「遅い思考」

ノーベル賞を受賞した行動心理学者のDaniel Kahneman氏は、彼の著書ファスト&スロー: あなたの意思はどのように決まるか?の中で、脳内でデータが処理される時2つの方法があるという概念を詳細に論じている。彼の理論は、思考には2種類の基本的なシステムがあるというものだ。「速い思考」は無意識で、直感的で、努力を必要としないのに対し、「遅い思考」は意識的で演繹的推理を用い、努力を要する。

私たちは「遅い」思考が仕切り役だと思いがちだが、実際には衝動的な「速い」思考が主導権を握っていて、毎秒ごとに大量の決定と判断を下しているのだ。

分析論の問題点は、これがすべて「遅い思考」によるもので、集中と骨の折れる分析を必要とするということだ。


Image Credit:Eva-Lotta Lamm, Flickr

課題は、データ分析を「遅い」思考から、「速い」直感的な思考へと切り替えることだ。金鉱を探して猪突猛進に進みながらも、100人の地理学の教授と同等の知識を持って臨む姿勢だ。

データ分析の未来

Adoreboardは世界一洗練された思考システムを作ろうと努力してきた。人間が作った世界一のコンピュータにより提示された情報を元に、決定を下そうというのだ。

コペルニクスが『天球の回転について』を発表した時、世界は変わった。しかし1543年にはとても限られたデータしかなかったはずだ。直感的な洞察があったからこそ、彼は想像を飛躍させて、太陽系の真ん中に太陽を据えたのだ。

そして、AdreboardとO’Neal氏にとっては、これがデータ分析の未来なのだ。データを人間本来の方法で表現することにより、意思決定者は重要な想像の飛躍により、洞察を機会に変えていくことができるのだ。

しかしそれはどのような姿をしているのだろうか。この先5年、デジタルマーケターにとっての1つの大きな課題は、データが語っている内容について人々に理解してもらうためのかけ橋を作ることだろう。


Rory McIlroy氏は12カ月にわたって大衆の感情や情操を分析し、それを音声と視覚に変換して表現してきた。

意思決定者にはデータを素早く消化し理解する能力が必要だ。たとえそれが移動中であっても、携帯電話からであっても。

もし19世紀のアラスカの採掘者が、今日私たちが持っているような地理的な知識を持っていたとしたらどうだろうか。携帯電話で山の位置を差せば、データが変換されて金の眠っている場所の画像を表示してくれるとしたら?

それがデータ分析の未来なのかもしれない。