アートとデザインはどこが違うのか

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アートとデザインの違いはどこにあるのか。

この問いかけ、デザイナーであれば、1度は考えたことがあるのではないでしょうか。
アーティストもデザイナーも、ともにビジュアル的なものを生み出すという点では共通しています。また、見た目の美しさや、作品の完成度が重視されるのも同じです。

しかし、デザイナーが制作した作品に対し、「これはアートだね」と言われた場合、それは評価されていることになるのでしょうか?

「アート」と「デザイン」の間には、決定的な違いがあります。デザインを生業とするならば、その違いを常に意識する必要があるでしょう。両者を対比させながら、どのような違いがあるのかを探っていきます。

アートとデザイン、3つの大きな違い

1. インスピレーションか、モチベーションか

アートとデザインの最大の違いは、見る人が何を感じ取るかにあります。
一般的に、アートは芸術家自身の視点や感覚をもとに生み出されるものです。そこには芸術家自身が発信したいメッセージや、共有したい感覚が織り込まれています。見る人は作品を通して、作者の思考の一片を感じ取ったりインスピレーションを刺激されたりするのです。

一方、デザインにはクライアントがいて、制作するための目的があります。商品の購入、サービスの告知など理由は様々です。しかし、いずれにせよ、見る人に何らかの行動を起こさせるためのモチベーションを与えることが制作の目的となります。

2. 思想か、技術か

アーティストは、自身の思想に基づいて作品を生み出しています。もちろん、作品を生み出すためには、それを裏打ちするための技術が必要となるでしょう。

しかし、ほとんどの場合、評価されるのは技術ではなく、独自の視点や発するメッセージなど、彼ら自身の思想です。

それに対してデザイナーは、制作の技術によって評価を受けていると言えるでしょう。
デザインとは、「クライアントが求める目的の達成のために行われる行為」であり、そのための定石や方法論が存在します。

良いデザイナーとは、こうした技術が蓄積されている人であり、制作の目的を達成するために最適な手段を選ぶことができる人のことを言うのです。

3. 違うメッセージか、同じメッセージか

アートは見る人によって解釈が違います。
例えば、モナリザが微笑んでいる理由を聞かれても、すぐに答えられる人はいないでしょう。このようにアートは見る人の背景知識や、その時の感情によって受け取るメッセージが異なります。もちろん、そこに正解はありません。どのように解釈してもいいのです。

しかし、デザインは人によって解釈が異なってはいけません。デザイナーやクライアントが意図していないメッセージを発していれば、それは失敗と見なされ、修正の対象となります。良いデザインはどんな人にも同じメッセージを発信していなければなりません。

デザインは、アートを生み出す行為ではない

「デザインとアートの違い」といった基本的な事柄をじっくり考える時間は、日々の激務の中ではあまりないかもしれません。また、仕事をこなしているうちになんとなく分かってくることなので、「あえて今さら」と考える人もいるかもしれません。

しかし、アートとデザインは似ているようでまったく別のものです。この違いを再確認することで、行き詰った時の指針や方向性のずれが修正されることもあります。
たまには、新米デザイナーの頃に繰り返し聞かされ、問われたこの違いを、原点に戻って思い出してみてはいかがでしょうか。新しい道が見えてくるかもしれません。

参考:The Difference Between Art and Design

画像:photo credit: Stefan Baudy via photopin cc