女性プロダクトマネージャーは楽じゃない

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PMには様々な仕事の理解・経験・技術が必要となり、エンジニアとも異なる職種だ。しかし、その役割は誤解されやすく、女性PMへの偏見すら生まれてしまう。PMもエンジニアも女性にとって居心地の良い分野にしていこう。

PMになるのは簡単じゃない

プロダクトマネージャーの学位というものはない。それを中心に学ぶカリキュラムもない。多くの人は業界に入るまで、PMという職種があることさえ知らない。ほとんどのPMは、業界に入るときは工学部の学位を携えていたのだ。

プロダクトマネージャーであるということは、これまで学んできたことに加えて、別のスキルセットを習得することを意味する。その最良の方法は、プロジェクトを実施することだ。

もう一つの方法は、先人の知恵に学ぶことだ。

  1. Ben Horowitz氏の『Good PM / Bad PM』は、プロダクトのCEOとしてのPMの役割について説明している。

  2. Steven Sinofsky氏の『Zen of PM』は、実行の方法について述べている。

  3. Julie Zhou氏は、PMデザイン部門エンジニア部門がそれぞれ最高の仕事をできるようにする複雑な仕事について説明している。

  4. Quoraには、読むべき本、面接への準備、エンジニア的知識の必要の有無について、多くのコンテンツがある。

全体的な内容をすべて習得したとしても、PMの職を獲得するのは難しい。

PMとエンジニア比率は普通、超最先端の企業(Microsoft)で1 : 2程度、他の大多数では1 : 10か、それ以上となる。PMの職はそれほど多いわけではない。

PMとして良職に就くには、たくさんの具体的なテーマについて学ぶ必要がある。面接に備えるときには、プロダクトについて面接者と同じぐらいの知識が欲しいと思うものだが、そのプロダクトに何年も関わってきた人を相手には、それはほぼ不可能だ。

私は、PMの面接1日のための準備に、最低でも1週間はかけるようにしている。今の職を得るために6ヶ月、面接10回を要し、詳細な提案書を提出した

Gayle Laakmann McDowell氏Jackie Bavaro氏は、面接を突破するために、まる1冊の本を書いたほどだ。

“何かの手違い”ではPMにはなれない。山のような仕事をこなした結果、PMになれるのだ。

PMの仕事は楽じゃない

PMになれば、いくつもの特別な職務がある。

  • 必要な調査を見極めて実行する。エスノグラフィー調査になるかも知れないし、難解なデータかも知れない。PMが自力でSQLクエリを書くのは珍しいことではない。
  • 優先順位を付ける。できることよりも、やることの方が常に多い。
  • 管理権限をもたずに人々と交渉し、彼らを動かす。他のPMや首脳陣を説得して、あなたのアイデアにメリットがあり、予算を付ける価値があると思わせなければならない。
  • 開発者とデザイナーは、あなたと共に働くのであって、あなたのために働くのではない。彼らがあなたのアイデアを実現したくなるような魅力的な理由が必要なのだ。
  • するべきことを正確に決める。
  • ものごとを確実に実現させる。

役割は広範にわたる。実際にすべての仕事をするわけではなくても、すべての仕事を理解していなければならない

PMの役割を理解するのは難しい

エンジニアやデザイナーが何をしているかは簡単に理解できる。プロダクトを作っているのだ。PMの役割は、それよりずっと微妙なため、その役割がどれほど技術的なものかメディアで取り上げられないのは当然かも知れない。

でも残念ながら、それがプロダクトマネージメントに関わる女性を傷つけることになる。

今週末のニューヨークタイムズ誌で、Claire Cain Miller氏は、エンジニア分野で働く女性が多くないことの理由を考える優れた記事を書いている。ほとんどは妥当な内容だが、残念ながら、PMの役割を単純に描きすぎている。

女性がプロダクトマネージャー(PM)の役割を担うことは多い。PMには、人々を管理して営業部門とエンジニア部門の橋渡しをする、いわゆるソフトスキルが伴う。必要不可欠な仕事ではあるが、エンジニア業界で尊敬されるのはエンジニアの人々だけであって、営業職の人々ではない。(The New York Times)

何度も目にした光景だ。キャサリン・ロッシの『子供じみた王国』を読んだとき、同じことを感じた。私たちは、プロダクトマネージメントに関わる女性について書くとき、賛辞は書かない。むしろ、「純粋なエンジニア分野に参入する女性は平穏な気持ちではいられない」ことを示唆するようにしている。「その役割はソフトスキルばかりだ」と強調し、開発者にとって女性PMがどれほど「楽な相手」なのかを論じる。そして、「尊敬されるのは純粋なエンジニアばかりだ」と断言する。

プロダクトマネージメントは、女性的な「ソフトスキル」ではない。女性でも男性でも、自分をそんな風に表現するプロダクトマネージャーはいないだろう。私たちはPM的な規律の範囲内で、ものごとをかなり男っぽいやり方で表現する。管理権限も、交渉も、強制もなしで、リーダーシップについて話し合う。だから女性は、PMの微妙な側面の多くで男性の同僚よりも激務をこなすことさえあるのだ。

最近のメディアでの議論を考えてみれば、それはPMの役割にも当てはまる。何を作るべきかについて主張するとき、あなたは性悪女みたいなのか? 機能を切り捨てる提案に強く反対するとき、情緒や情熱に訴えるだろうか? 根拠のない決めつけだ。私は自分のキャリアを通じて、対等な男性の同僚なら受けないようなフィードバックを受けてきた。女性プロダクトマネージャーであることは決して簡単ではない。

PMとエンジニアリングは別である

Claire氏が書いたような記事には良い点もあるが、問題点もある。女性は「十分に努力しなかったから」PMになったのだ、という当てこすりだ。女性がプロダクトマネージャーになるためにどれだけ努力したかを考えると、侮辱的だ。

エンジニアになるよりPMを選んだことを弁護しなくてはならないと感じると、うんざりする。男性の友達はそんなことはしない。すでにPM職に就いている女性にこそエンジニアを経験させるべきなのだ、とほのめかすメディアにはうんざりだ。「お前は落伍者だ」と言っているかのようだ(そのとおりだと言う人はいないだろうが)。

その上、最後にPMになる女性は、エンジニアに就いていたことがある「べきだ」という当てこすりは、PMの役割に対する理解の欠落を示す。

優れたPMであることと優れたエンジニアであることに必要なスキルセットは同じではない。エンジニアは問題を解決して、ものごとを実現させる方法を考えるのに時間を費やす。プロダクトマネージャーは、ユーザが何を必要としているかを考え、そのニーズと他のニーズとのバランスをとる方法を考える。エンジニアは少数のプロジェクトに集中する傾向にあるが、プロダクトマネージメントは保守的になりがちだ。

Kickstarterのオフィスを例にとる。あなたが1年前に、女性PMはエンジニアであるべきだという短絡的な論理をもって入社したとすれば、あなたにとって私は「最良の目標」だっただろう。私はPMチームにいる。工学部の学位をもっていて、通関申告書に「エンジニア」と記入し、素敵なHack Weekプロジェクトでプログラムを書いていたからだ。

今年、エンジニアチームへの女性の異動があった。驚くべきことに、それは私ではなかった。このチームで経験を分け合ったエミリーだ。エミリーは私とは違ったスキルセットをもっている。プロジェクトの技術的な実装に関する詳細な問題を解くのが好きだが、それがどうあるべきかを決定したがることはなく、「作る」仕事を望んでいる。エミリーは優れたエンジニアになるに違いない。

女性のエンジニアがいないことをPM的な規律のせいにするのは間違っている。PMに女性がいることはエンジニア部門に女性がいないことの理由ではない。「PMに女性が多いのは何故だ」などと考えるのはやめよう。エンジニア部門の女性を「技術性が足りない」などと責めるのはやめよう。

それよりも、エンジニアをもっと女性にとって居心地の良い分野にしていこう。