初期のデザインアイデアを発展させるピンポン方式とは?

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IDEOデザインディレクター・ビジネスデザイナー


本稿は、現在ClassPassに身を置くRosaria Manninoとの共著。イラストを手掛けたのはAlicia Pompei

デザインについて会話する時は、形状と機能のバランスを取るという考えに支配されることが多い。そして、流通や価格決定モデル、コストといった要因を考慮する「ビジネス思考」は、別の議論として取り残されがちだ。存続性について検討することは議論の妨げになると見なされる場合もあり、チームが自らのアイデアの「良さを明らかにする」まで検証は先延ばしにされてしまう。

しかし、そんな風にやらなければならないのだろうか? デザインチームも、ビジネス思考から創造的な発想や刺激を得る可能性があるのでは?

IDEOの描くベン図では、デザイン思考は望ましさ(desirability)と実現可能性(feasibility)のみに限定されない。ビジネスの見通しを表す存続性(viability)も含んでいるのだ。実際、存続性について早い段階から検討し、アイデアをふるい落とすだけでなく生み出すための手段とすることが活力になると、私たちの多くは考えている。

だが、これは実際の場で何を意味するだろうか? ビジネス思考を統合して、デザインプロセス初期の活性化する方法とは? 例で考えてみよう。

私たちは2015年、イスラエルのスタートアップGreen Onyxと組んで仕事をした。Green Onyxは、微小な水生植物「ミジンコウキクサ」を新たなスーパーフードとして世に広めることを目指しており、ミジンコウキクサをキッチンカウンターで育てられる器具を開発した。

当社のデザインブリーフは、アメリカ市場向けのゴートゥーマーケット戦略に関して、説得力のある提供価値とアイデアを生み出すことだった。以下では、ビジネス思考を早い段階で両社の提携に取り入れるために使った、ピンポン方式のアプローチを説明していこう。

ピン: ユーザーニーズ

まず行ったのは、潜在ユーザーのニーズを見極めることだ。私たちは、全体的な健康状態、食習慣、そして食物に対する考えについて、消費者の話を聞いた。また、ミジンコウキクサを主な食材とする様々なレシピを考案して、試食してもらった。

その結果、潜在ユーザーの中には、それほど健康に良くない好物の中に健康食材を混ぜ込むのを好む人もいる、ということが分かった。Jessica Seinfeld氏の著書『Deceptively Delicious』の要領である。そのような人たちにとっては、ミジンコウキクサ入りのブラッディマリーなどは申し分のないレシピだ。

ポン: ビジネスニーズ

ビジネス面では、Green Onyxはミジンコウキクサの製造業者にはなりたくないと考えていた。ミジンコウキクサをユーザーの手元に届けるには、同社はレストランなどの潜在的な小売パートナーを説得して、ミジンコウキクサをその場で増やすことのできる器具に投資してもらう必要があった。

ピンポンの両方を行きつ戻りつ検討する

ユーザーニーズとビジネスニーズの両方から着想を得ることで、私たちは提供価値、レシピ、そして小売パートナー候補という確固たる要素を手にした。ユーザーニーズを基に得たコンセプトやアイデアは存続性の観点でふるいにかけ、Green Onyxのニーズを満たすように展開させられるかを確認した。

健康食材を好物に混ぜたがるユーザーにとっては、ミジンコウキクサ入りのブラッディマリーは名案(かつ美味しいもの)であるものの、もしそれが唯一のユースケースだとしたら、自らミジンコウキクサを増やすための器具に投資するレストランは現れないだろう。

そこで自問自答した。彼らが投資したくなる要因は何だろう? レストランは一般的に、かなり小さな利幅で営業しているから、食材のコストが主な問題であることは分かっていた。もう1つ懸案となるのは、労力を要する込み入ったレシピだ。既存の業務の流れを乱してしまうようなレシピは採用されそうにない。

名レシピであるブラッディマリー・ミックス単品ではなく、費用対効果の高い食材を用いた使い勝手の良いレシピ集を提供してはどうだろうか? パートナー候補のレストランにとって、ミジンコウキクサがもっと魅力的な食材に見えてくるはずだ。

逆の検討も行った。ビジネスニーズを基に得たコンセプトを、望ましさの観点からふるいにかけたのだ。レストランでミジンコウキクサのメニューを提供するには、そのための器具を備え付けてもらう必要があることは分かっていた。新しいものを商売用のキッチンに持ち込むことは、コスト面だけでなくスペース面でも大きなハードルとなる。しかも特別な用途に限られる器具となれば、なおさら難しい。

当社のデザインチームは上記の見識を踏まえて、メインキッチンでの作業を邪魔することのないよう、器具を接客カウンターに設置するという案を考えた。たまにレストランで見かける、搾り立てオレンジジュース・マシンのようなイメージだ。しかし、この案がユーザーのニーズや願望とどう調和するだろうか?

当社のユーザー調査では、野菜は加工していない形態の方が大いに好まれると判明した。どんな見栄えなのか? どうやって育ったのか? 実際、野菜のどの部分を食べているのか?

見える構造の器具にしようというアイデアが急浮上した。これはユニークなユーザエクスペリエンスとなるかもしれない。1人前のミジンコウキクサが発注に応じて取り込まれ、注文の品に入れられる様子が見えるようにするのだ。

このピンポンでのやり取り、つまりユーザーニーズであると、Green Onyxのニーズである利益を行きつ戻りつ検討することで、私たちの最終的なコンセプトと提供価値が望ましさと存続性の両方に沿うものとなるようにした。

ビジネス思考のポイント

ビジネスを心得るということは、目が疲れるほど細かなExcelの表や、いいアイデアを常に否定することで特徴づけられるべきではない。いわゆる卓球台を挟む両者が新しい考えや提案を受け入れてくれるなら、市場で成功する可能性がより高い解決策を生み出すことができるのだ。ひょっとすると、そもそも卓球台さえ要らなくなるかもしれない。

直面している課題の解決策を考える時、皆さんならビジネス思考をどう出発点として活用するだろうか?


本稿は、現在ClassPassに在籍するRosaria Mannino氏との共著です。イラストを手掛けたのはAlicia Pompei氏