誰もがクリエイターになれる

Source

創造性は一部の人だけが持てる特別な才能だと思われている。その迷信に囚われず、誰もが元々もっている創造性を発揮して、様々な仕事に生かすための5つのヒントをご紹介する。

現代においては、創造性を使ってアイデアを生み出し続けることが重要になってきている。それでも、創造的な仕事は少数の才能のある人たちだけが持つべきものなのだろうか。

そんなことはない。

一般的に創造性に対して間違ったイメージが作り上げられてしまっている。多くの人が今でも信じている創造性にまつわる迷信についての次の解説を読めば、そのイメージが全くの誤解であることが分かるのではないだろうか。

1. 創造性は誰にでもある脳の領域

創造性は才能であり、遺伝されるという迷信がある。

おそらく、20世紀の偉大な作家を3人も輩出したウォー家ブロンテ姉妹などの有名な芸術一家の存在がこの迷信の信憑性を深めているのだろう。今では、多くの人が有名人や創造的な人の子どもは、親の才能を受け継いでいると考えている。

しかし、創造性は家族からの影響はあるものの、誰もが生まれつき持つ能力で、培うことや育てること、そして教えることができるものであると研究で分かっている。

ジャック・ケルアック氏は、「天才が生み出したものを、才能が広める」のだと考えていました。一方、ノーベル賞候補にもなった作家エドワード・デボノ氏は、「創造的思考はひとつの能力であって、生まれつきの才能の問題ではない。川辺で座りながらバロック音楽を聴いて、インスピレーションを待つようなことではない」と言っている。

最先端の脳科学者は、脳の中に創造性をつかさどる特定の領域などはないと全面的に否定している。まだ全てが解明されたわけではないが、感情と同じように創造性も、脳のあらゆる領域が活性化され、数多くの認知処理が(意識的にあるいは無意識的に)相互作用することで生まれることが分かった。

brain sides

アイデアを準備し、形にし、表現し、検証する過程において、脳内の背側注意ネットワーク・視空間注意(物体に対応する時に使用)や実行注意ネットワーク(ひとつの作業に集中する時に使用)、あるいは想像ネットワーク(抽象的な思考の時に使用)などにアクセスする。

つまり、創造過程とは、誰にでもある脳の領域が連携して生み出すものであり、「一部の人のみが持つ特殊な脳の領域が生み出すもの」ではないのである。

創造性は少しずつ培うものである。瞬間的に起こるものではない。創造性が生まれつきの才能だとすれば、価値あるものを創造するために注ぎ込まれる労力や時間など全てが否定される。

頑張っても実を結ばないのではと思うだろう。しかし、ジェームズ・ダイソン氏は、掃除機の技術を完成させるのに、5年以上をかけて5千個もの試作機を製作したのだ。また、ウォルト・ディズニー氏は、1919年にカンザスシティー・スターという新聞社を解雇されているという事実をご存じだろうか。彼の当時の編集長によると、ディズニーには「想像力が欠けており、たいしたアイデアを持っていなかった」のだそうだ。

2. 創造性は時間をかけてひたすら作業すること

創造性にまつわる迷信で大きな誤解を招いているのが、創造性はコントロールできない、というものだ。創造性は突然やってきて、ひらめきの瞬間になるのだという。

私の場合は、シャワーを浴びている最中に、すばらしいアイデアを思いつくことがたまにある(だからこの便利なものをみんなに勧めたい)。落ち着いた色のタイルと白い陶磁器に囲まれ、雑念が取り払われている状態にあったからひらめいたのだ。しかし、最近の研究によると、こうしたひらめきや洞察の瞬間は、単にそれまで積み重ねてきた努力がアイデアという形になって現れただけのことなのだという。

ハーバード大学の研究者で心理学者のシェリー・H・カーソン氏によると、これは、アイデアの「抱卵期間」を経て現れるもので、目前の問題から注意がそれて、考えが自由にさまよい、普段では思いつかない物事の間につながりを見つけ出した時に起きるらしいのだ(この現象は拡散的思考と呼ばれ、創造性の構成要素のひとつに挙げられる)。

そのため、ひらめく瞬間は特別なものではないのだ。これまで積み重ねてきた努力やそれまでの思考が実になったにすぎないのである。地道に作業に取り組んできたからこそ、その瞬間はやってきたのであり、インスピレーションを座って待っていたからやってきたわけではないのだ。

あるハンガリー人の心理学教授が、275人の創造的な人に手紙を出して、執筆中の本のためにインタビューを頼んだ時の面白い話がある。依頼した結果、275人のうち3分の1が、時間がないという理由で断ったそうだ(残りのうち3分の1は返事がなく、彼らにも時間がなかったのだと推測できる)。

創造性は、さぼることなく、地道に仕事に取り組んだ結果、形になって現れるものなのだ。

Looney Toonsのアニメ製作者のチャック・ジョーンズ氏は1枚のいい絵を描き上げるには10万枚のダメな絵を描く必要があると主張している。一方、伝説のフォトリアリズム作家のチャック・クローズ氏の有名な言葉は、「インスピレーションは素人のもの。そうでない人は、ひたすら仕事をするだけだ」。

多くの著名な創造的な人が繰り返し言うのが、とにかく仕事に取り組むことが成功の鍵ということ。スタンフォード大学の心理学者のキャロル・デュエック氏の研究によると、143人の創造性の研究者が、創造性を支える一番の特性は回復力と忍耐力と答えたそうだ。

時間が創造の原材料である。創造にまつわる迷信を取り除くと、残るのは作業だけだ。勉強と実践を通して熟練する作業、問題の解決方法と解決方法の問題をみつける作業、試行錯誤の作業、考えて完璧なものにする作業、創造する作業。
ケビン・アシュトン氏著、『How to Fly a Horse』より

3. 創造性は学び、鍛えられる

創造性は教えられないという考えは、芸術学校を退学した人が共通して使う言い訳である。この考えは迷信の信憑性を深めてしまい、創造性を普通の人の手には届かない能力にしてしまうことになる。

しかし、世界中で創造性は教えられており、ニューヨーク州立大学バッファロー校にはInternational Center for Studies in Creativity(国際創造性研究センター)という機関さえ存在する。この機関はBBDO(広告会社)の創設者のひとりであるアレックス・オズボーン氏(ブレインストーミング、アイデアを引き出すという概念を発明した人物)によって設立されたものである。そして、一定の能力が磨かれた人(ベテラン)と初心者を対象に数々の研究をした結果、創造の筋肉を鍛えることで発揮できる力があることが分かった。

最近の研究では、実績のあるベテラン作家は、新人作家に比べて、効率が良く、情緒豊かで、偏りがないため、最終的にはより創造的な状態で創作していることが分かった。

この研究は、ベテランと新人のグループに分け、ある物語の冒頭を読んで、続きがどうなるのかをブレインストーミングしてもらう。その後に2分間執筆してもらうものだった。しかもこれを脳がスキャンされている状態で行うというものである。

脳の中でも、意欲や計画、報酬、そして注意に関係する前頭葉を調べたところ、ベテランの脳では、特に下前頭回を含む、言語や目標選択において重要な役割を果たす領域が、大幅に活性化していることが分かった。下前頭回は、主に表現的行為の解釈など、感情言語の処理に関係する領域である。

Gray726_inferior_frontal_gyrus

Ant. horiz. Ramus 外側溝の前枝
Pars Orbitalis 下前頭回の眼窩部
Pars triangularis 下前頭回の三角部
Ant. asc. Ramus 外側溝の上行枝
Pars Opercularis 下前頭回の弁蓋部

ベテラン作家は、ただ言語を理解するだけでなく、文章の根底に流れている感情や抽象的なアイデアに時間をかけることができたのだ。これらも、創造性の構成要素である。

British Psychological Society(イギリス心理学会)のアレックス・フェデラ氏は次のように述べている。

アイデアは、内側から湧き上がると、すぐに概念から表現に至る道を進み、ためらいなく伝えられる形となり、喉から飛び出そうとするのだ。

4. 創造性はグループ間で刺激される

夜を徹して一人きりで創作に励むイメージが、誰もが描くクリエイター像である。本当は努力や創造的なチームによる共同作業の賜物であるにも関わらず、人は、歴史を書き換え、創造をたったひとりの人間の手柄にしてしまう。

ピクサーでは、アーティストが新しいキャラクターを作成すると、みんなでテーブルを囲み、アイデアを出し合っている。他人の創造力と想像力を効果的に利用することで、自分のアイデアをさらに広げることができるのである。

優雅な式や美しい絵画、素晴らしい機械は試行錯誤を重ねた末にできたつまらない成果物と思うことができ、作成者はみんなと同じように欠点を持つ小さな命と思うことができる。
ケビン・アシュトン氏

『The Myths of Creativity』の著者であるデビッド・バーカス氏は、「Creative Anonymous(匿名創作)」というサポートグループを提唱している。これは、有名な文芸グループ「Inklings」のように、かつて、J.R.R.トールキン氏、C.S.ルイス氏、チャールズ・ウィリアムズ氏といった英国の作家たちが、非公式にパブや誰かの家に集まり、影響を受けたものについて話し合い、原稿の読み合わせをしながら互いの強みを引き出し合った場を、創造性のために設けるというものである。

実際に、グループで読み合わせをしていたトールキン氏のある原稿が出版の価値があると、C.S.ルイス氏が強く主張し、トールキン氏を説得したというがある(後に『指輪物語』として出版されたものである)。

5. 創造性は制約によって高められる

歴史を通して、創造性は、階級やタイプを区別するようにはっきりとした一本の線として存在してきた。そして、創造性は創造する時間と手段を持つ人だけの特別な行為として常に考えられてきたのである。

しかし、制約があった方が創造的思考は生じやすいことが、最近の研究で分かった。

アムステルダム大学の社会心理学部の研究によると、制約に直面すると、人は一歩下がり、大局を見て、普段はつながっていない物事の間につながりを見つけ出すのだそうだ。この能力は「グローバル・プロセシング」と呼ばれる創造性の特徴である。

建築家のフランク・ゲーリー氏や発明家のマックス・シェパード氏のような人でさえ、制約こそが創造的思考を影響する一番の要因であると言っている。

例をもうひとつ。ドクター・スース氏の『Green Eggs and Ham』は、50種類の単語だけで書かれている。こうなった理由は、Seussが、ランダムハウス出版社の創設者ベネット・サーフ氏と、それが可能かどうか賭けをしたからだそうだ。

自分の作品をできが悪いという理由で隠してしまうのは簡単だ。「自分にはひらめきがないから」という理由で創作をあきらめてしまうのはもっと簡単だ。しかし、他の全てと同じように、本来は創造性も培うもので、実践を通して強化できる能力なのだ。

アンディ・ウォーホル氏はこれについて上手に表現している。「なぜ芸術家は特別だと思われているのだろうか。数多くある仕事のひとつにすぎないのに」。

作家であれ、彫刻家であれ、デザイナーであれ、あるいはバンジョー奏者であれ、常に柔軟な心と必要に応じて助けを求められる姿勢を持って、使う道具に固執しなければ、最終的にもっといい創造者になれる。


画像出典:Mallory Johndrowio9Wikipedia