相次ぐデザイン会社の買収から考える ビジネス領域におけるデザイン思考の重要性

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root inc. 代表取締役 高知県出身。デジタルハリウッド卒業後、都内の制作会社経て2012年創業。 サービス開発に特化したデザインコンサルティング・制作事業を手がける。

昨今、アメリカを中心に大手企業によるデザイン会社の買収事例が増えており、ビジネス領域においてデザインの重要性が高まっていることが伺えます。

今回は、米国の金融大手キャピタル・ワン、世界最大規模のソーシャルネットワークFacebook、戦略コンサルティング会社マッキンゼーの買収事例をもとに、デザイン会社を買収する目的と今求められているデザインの価値について触れていきます。

デザイン会社の買収事例

日本国内でもここ数年で、今までデザインに関心がなかった大企業やスタートアップでさえデザインを求める動きは大きくなっています。

そんな中、アメリカの大手企業が優れたデザイン会社を買収することで、組織内にデザイン力を取り込む事例が増えてきています。いくつか買収事例を紹介していきましょう。

米国の金融大手キャピタル・ワンがAdoptive Path買収

2014年10月UXデザインコンサルティングファームのAdoptive Path の買収を発表しました。このニュースは世界中で注目を集め、金融大手のキャピタル・ワンがなぜデザイン会社を買収したのか? など様々な意見が飛び交いました。

複雑な金融の業界構造において、Adoptive PathのUXデザインのナレッジがどこまで変化を起こすことができるのか、動向に注目が集まっています。

FacebookによるHot Studio , Teehan+lax買収

EbayのUXデザインを手がけたことで有名な Hot Studio は2013年、当時の最大規模の買収としてFacebookへ参画。

Teehan + lax はTwitter創業者の一人、エヴァン・ウイリアムズの手がけるショートブログサービス Mediumのデザインを手がけた会社で2015年に買収を発表しています。

マッキンゼーによるデザイン・コンサルティング会社LUNAR買収

1984年設立の老舗デザインファームLUNAR。このデザイン会社は、過去30年の間、アップルやHP、SanDiskをクライアントとしてきたトップレベルの会社であり、2013年からマッキンゼーとの試験的な取り組みを経て2015年5月買収を発表しました。最大手戦略コンサルティングファームにおいても、「デザイン」が重要な武器として今注目を集めています。

デザイン会社を買収する目的と価値

デザイン会社の買収目的は企業ごとに異なる部分ありますが、デザイン文化を社内に取り込み、既存のチームに良い影響を与えるや、優秀なデザインファームを囲い込むことでライバル企業へのナレッジの流出を防ぐなどの視点が考えられます。

また、こういった意見の他に、マッキンゼーの事例などから、近年変化の激しいビジネス領域において課題解決の一つの手段として、デザインが武器となることが顕在化してきていることは明らかです。これまでは戦略的なアドバイスを求めていたコンサルティング会社のクライアントが、事業とユーザーのエンゲージメントについての解決策を求めるようになり、さらにアドバイスだけでなく実践してくれるパートナーを求めるようになっているという変化もあるようです。

多くのデザインファームにおいてもビジネス領域からデザインに取り組む動きが目立っており、そういったナレッジを効果的に取り込む手段として買収を行っていると考えられるのではないでしょうか。

しかし、こういった買収によるデザインナレッジの取り込みは資金力のある一部の大手企業にしかできないものであり、今後より注目を集めるのは、大手以外の企業に対してデザインのナレッジを持つ人材がどのように連携していくのかではないかと思われます。

経営層とともにビジネスをデザインする

root でも普段Webサービスの事業企画、仕様策定フェーズから関わることが多々ありますが、実際に現場でのやり取りを行っていて「経営層の人々は必ずしもデザインに対する理解が深いわけではない」と感じられる場面に遭遇することが少なくありません。

デザイン思考(デザイナーの発想法やツールを誰でも使えるようにすることで、幅広い問題解決を可能にすること。出展:Wikipedia)がビジネスの課題解決に用いられるようになり、サービスのデザインを始め幅広いビジネス領域でデザイナーの価値が高まっています。この流れに伴いデザイナーのインハウス化が進むと言われる中、経営層の人々が上手くデザイナーを社内で活躍させられるだけのデザインに対する理解、知見を持ちあわせていないのは一つの課題になってくるのではないでしょうか。

現にそういったケースが発生するシチュエーションは多く、そういった場合、経営層の描くビジョンをデザイナーへ伝える橋渡し的な存在としてコミュニケーションをリードする人材(デザインディレクター ※1)の必要性が高まるのではないかと考えています。

※1: ビジネス領域の策定においてデザインに関する深い知見を持ち合わせた人材。 一般的にWeb業界で言われるディレクター職とは違いビジネスレイヤーからデザインレイヤーを横断的に監督する幅広いスキルセットを求められる。

まとめ

アメリカでのデザイン会社買収事例を見る限り、今後日本国内でも類似のケースが生まれる可能性は大いにあると思われます。

ある意味トレンドとなっているこの買収劇が成功となるか失敗となるかの差は、経営層のデザインに対する理解が影響するのではないでしょうか。

優秀な人材を買収によって獲得することはできても、そのナレッジを最大限生かすための知識を持ちあわせていなければ、宝の持ち腐れと化し、失敗に終わる可能性もあるでしょう。

最後に非デザイナーでデザインについて興味をお持ちの方はぜひ下記の書籍や学習コンテンツを読んでみることをオススメします。デザイン思考を効果的に導入するためのヒントが書かれています。

参考:
http://wired.jp/2013/05/17/accenture-fjord/
http://www.wired.com/2015/05/consulting-giant-mckinsey-bought-top-design-firm/