UXとは建築である

Source

architect

「UXデザイナーとは一体どういう仕事をしているのか?」
いつも説明するときに困ってしまう。

「Webデザイン」が分かりやすい答えになるのかもしれないが、それでは仕事内容の範囲が狭すぎる。我々はアプリやビジネス、デジタルエコシステムなど、単なるWebサイト以上のものを作っているからだ。「Webデザイン」という言葉では不正確になってしまう。

すると、他分野の職業に例えて説明しなくてはいけなくなる。グラフィックデザイナー?あんまり似ていない。アーティスト?そんなわけはない。我々の仕事は何か目的を果たすために制作することだ。作品がそれ自体のために作られることはない。何よりもまず果たすべき目的があり、制作をする。

そう考えていくと、「UXデザイナー」に一番近いのは「建築家」である。

建築家は特定の目的をもって建物をつくる。プライベートのための家もあれば、公に開かれるための家もある。仕事ごとにスペースを区切られて作られるオフィスもあれば、全員が1つのスペースで作業するためのオフィスもある。

建築は芸術的側面ももつが、実際はもっと社会科学に根付いたものだ。心理学、行動学、人間の性質の理解が必要とされる。実際に施工する部分もあるため、建築家はエンジニアとしての側面も併せ持つこととなる。

建築家の仕事と同じように、UXデザイナーはインタラクションの設計をしていると言える。
構造が住人/ユーザーに影響を与え、彼らの心理・思考に訴えることによって、ある行動を促したり制限したりするのだ。

minimal1
「The Modern Art Museum of Fort Worth」安藤忠雄氏作

アップル本社の場合、トイレがスタッフ共通のエリアに置かれていることでよく知られており、異なる部署のスタッフ同士が1日に数回すれ違うことになる。デザイナー、エンジニア、役員が毎日互いに関わることで異種混合のアイデアが活性化され、ある種のアップルらしさが作られているのだ。

Facebookでは、もともとは、現実社会の構造をネット上に複製することで「共同体意識」をつくることが目的にされていた。RedditとCraigslistはその無干渉主義により、the Wild Westの雰囲気に似ている。例えば決済画面で鍵アイコンを追加するなど、画面上での小さな変化がユーザーの行動に多大な影響を及ぼしかねないからだ。

よく起こるのは、住人/ユーザーが、建築家/UXデザイナーの意図していなかったスペースの使用法を見つけることだ。現在のブルックリンとマンハッタンで最も活気があるエリアは、もともとは工業地域として始まった。住民が古い倉庫や工場を改装して住居に変えたのだ。

例えば、Twitterは当初はハッシュタグを設置されていなかったのだが、ユーザーがメタデータをツイートに組み込む必要性を見つけ、自然発生的に現れた。また、Youtube動画に付けられる悪質なコメントは、機能としては意図されていないにもかかわらず、構造自体がその行為を促していったのだ。

UXデザインと建築との類似点を掘り下げていくと、Webサイトのことを話すとき、ほとんどの人は「Facebookに行った」「Twitterに行く」など、それらが場所であるかのように話す。建築と同じく、Webサイトもアドレスをもっているように、デジタルプロダクツは土地感覚をも覚えさせるのだ。Turntable.fmが閉鎖されたとき、常連のユーザーは行きつけのお店が壊されてしまったかのように表現していたように。

UXデザインとは建築である。完璧なアナロジーではないかもしれないが、我々の仕事内容を適切に表現でき、UXデザインがネット上に見栄えの良い絵を描くことではないということを説明できる。さらには、我々が目指すべき方向性をはっきりと意識させてくれるのだ。


記事トップ写真の建物はニューヨークにある「Morgan Library&Museum」の中庭。
Renzo Piano氏作。
写真の著作権はMorgan Library&Museumに属する。