受動的か能動的かを意識して体験を考える — コンテキストを理解する(5)

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デジタルプロダクトデザイナー/リーダー
Twitterデザインマネージャー
Clearleftエクスペリエンスデザイナー

テクノロジーの進化に伴い、インターネットユーザーを取り巻くコンテキストも変化し、明確に定義することは難しくなってきた。現代のデスクトップ/モバイル・コンテキストの落とし穴から、コンテキストを正しく理解するための切り口について考える。(連載第5回)

連載「コンテキストを理解する」
第1回: コンテキストの落とし穴
第2回: デバイスの多様化によって必要となる視点
第3回: 環境からデザインを逆算する
第4回: 時間軸の中で必要とされるものとは?
第5回: 受動的か能動的かを意識して体験を考える
第6回: 個別最適に、パーソナルスペースを考慮しているか?
第7回: 場所情報を用いるリスク
第8回: ユーザーの周りにも人がいることを意識する
最終回: コンテキスト・デザインの5原則

コンテキストをデザインに落とし込む7つの切り口

リサーチをすれば、単なるコンテキスト以上の洞察が得られる。プロダクト戦略を練る時、サポートするデバイスを選ぶ時、コミュニケーションの手段を企画する時など、いかにリサーチが大切かが分かるはずだ。

しかしせっかく見つけた様々な種類のコンテキスト上の情報や発見は、どのようにデザインに繋げば良いだろうか。当然ながら、コンテキストをいかに分類しても近似値でしかない。カテゴリは溶け合わざるを得ないからだ。しかし次に示すコンテキストの7つの「切り口」が重要な面を網羅しているので、コンテキストの重要性を自信を持って説明できるはずだ。

切り口-1: デバイス
切り口-2: 環境
切り口-3: 時間
切り口-4: 行動
切り口-5: 個性
切り口-6: 場所
切り口-7: ソーシャル

本記事では7つの切り口のうちの1つ、「行動」について取り扱う

切り口-4: 行動

ところでユーザがしたいこととは何だろうか? 今やテクノロジーは人の行動を幅広くサポートしている。従来のように人とコンピュータが向き合うような分かりやすいインタラクションの形ではない。

多くの人は、複雑なぼんやりとした目的がいくつかあるような状態でWebを使用している。何か特定のタスクがあるわけでもなく、あるいは何か1つのタスクには絞り切れていない状態だ。ほとんどの行動、例えば何か調べものをしたり車を買ったりすることは、複数のデバイスで複数のアクセスが生じる。より短い時間で済む行動ならば、特定のスタイルのインタラクションに限られるものもあるし、ネイティブアプリなら、より具体的なタスクに対処するようデザインされていることもある。例えば、料理や経路検索など、現在の物理的な行動のサポートとしては、片手で持てる程度のデバイスを使用する可能性が高い。しかしタスクが非常に重要である場合、利用可能なテクノロジーは何でも使うだろう。ニューヨークの地下鉄で全編書かれた書籍もある一方、アフリカではフィーチャーフォンで10,000字の事業計画書が書かれている。

ユーザの行動を注意深く調べる1つの方法は、「リーンフォワード(能動的姿勢)」と「リーンバック(受動的姿勢)」により分類することだ。インタラクションが本質的にアクティブでユーザが主導となっているか(プレゼン資料のリサーチなどか)、もしくはもっと受動的なものか(友人との休日の写真を眺める事か)を調べよう。

歴史的には、Webはリーンフォワード(能動的)タスクに偏っていた。学術的な研究からその起源を見れば、これは驚くべきことではない。しかしながら、新たにリーンバックの用例が登場し、特にタブレットなどの新しいデバイスにおいては際立っている。例えばYouTubeやVimeoでは、ユーザ入力を最小限に抑えたリーンバックモードを試験運用している。プレイリストを見るには理想的だ。しかしリーンバックのインタラクション全てがテレビのようであるべきだと仮定するのは間違いだ。作家のCharles Stross氏はそれを放送の誤りと称している。Webの可能性は受動的であるだけではなく、古い消費モデルを超えた、関連情報の領域にまで拡張する。その例は、ひと目で分かるものであり、1つの目的を持ってリアルタイムで情報を部屋に流すというシンプルなものだ。

(A glanceable of London’s bus timetables is perfectly at home on the quiet, unobtrusive Kindle. The web comes into the world. By James Darling & BERG.)
ひと目で分かるロンドンのバスの時刻表は静かで控えめなKindleにうってつけだ。
画像: JAMES DARLING & BERG

ひと目で分かるということは穏やかなコンピュータの使い方の早期実現なのだ。現実の世界で平和に存在しているデジタルテクノロジーである。やがて副次的なWebブラウザやアプリが一般家庭やビジネスで当たり前になるだろう。ユーザはひと目で分かるアプリを、目立たない場所で実行しつつ、ひと目で必要とする情報を得ることができるようになるのだ。

一般的に、リーンバックな体験ではユーザによる入力はほとんど要らないし、直列な画面遷移となる。そうしたものが最小限のインターフェースにふさわしい。つまり、雑音もなければ、ユーザの注意を引くためのコンテンツの代わりもないのだ。それが最小限のインターフェースに値する。本当の目的が他のことかもしれないユーザに対し、ほとんど関係のないインタラクションで、簡潔に情報を伝えなければならない。テキストと背景のコントラストを最大にしなければ、などと考える必要もなく、テキストコンテンツ向けの大きなサイズで読みやすいフォントを使った方がいい。テキストが読みやすいものである限り、穏やかなコントラストであっても情報はそうした環境に負けることなく浸透していく。

行動コンテキストを理解するポイント

  • ユーザが行動したい単純なタスク、あるいはぼんやりした目的があるか
  • これらの行動やタスクはデジタル上か、あるいは現実の行動をサポートするものか
  • その行動には物理的な制約があるか。私たちはそれをどうサポートできるか
  • インタラクションはリーンフォワードかリーンバックか、あるいはその両方か

第6回: 個別最適に、パーソナルスペースを考慮しているか? へ続く