個別最適に、パーソナルスペースを考慮しているか? — コンテキストを理解する(6)

Source

デジタルプロダクトデザイナー/リーダー
Twitterデザインマネージャー
Clearleftエクスペリエンスデザイナー

テクノロジーの進化に伴い、インターネットユーザーを取り巻くコンテキストも変化し、明確に定義することは難しくなってきた。現代のデスクトップ/モバイル・コンテキストの落とし穴から、コンテキストを正しく理解するための切り口について考える。(連載第6回)

連載「コンテキストを理解する」
第1回: コンテキストの落とし穴
第2回: デバイスの多様化によって必要となる視点
第3回: 環境からデザインを逆算する
第4回: 時間軸の中で必要とされるものとは?
第5回: 受動的か能動的かを意識して体験を考える
第6回: 個別最適に、パーソナルスペースを考慮しているか?
第7回: 場所情報を用いるリスク
第8回: ユーザーの周りにも人がいることを意識する
最終回: コンテキスト・デザインの5原則

コンテキストをデザインに落とし込む7つの切り口

リサーチをすれば、単なるコンテキスト以上の洞察が得られる。プロダクト戦略を練る時、サポートするデバイスを選ぶ時、コミュニケーションの手段を企画する時など、いかにリサーチが大切かが分かるはずだ。

しかしせっかく見つけた様々な種類のコンテキスト上の情報や発見は、どのようにデザインに繋げば良いだろうか。当然ながら、コンテキストをいかに分類しても近似値でしかない。カテゴリは溶け合わざるを得ないからだ。しかし次に示すコンテキストの7つの「切り口」が重要な面を網羅しているので、コンテキストの重要性を自信を持って説明できるはずだ。

切り口-1: デバイス
切り口-2: 環境
切り口-3: 時間
切り口-4: 行動
切り口-5: 個性
切り口-6: 場所
切り口-7: ソーシャル

本記事では7つの切り口のうちの1つ、「個性」について取り扱う

切り口-5: 個性

もちろん、デザインには身体の能力と限界についても考慮することが非常に重要だ。戦前に、デザインをより良くするために人体計測と人間工学をより深く理解しようと取り組み続けたHenry Dreyfuss氏の努力は、現代のテクノロジーにもいまだに影響を与え続けている。入力における物理的要因の影響は非常に大きい。

個性のコンテキスト、すなわちユーザーの性格や心の状態、好き嫌いなどは、個人差があるため研究するにはなかなか難しいものだが、いくつかのパターンが見えてきている。デバイスの形態は、そのデバイスに何ができるかだけではなく、そのユーザーと感情的な関係を築けるかどうかというところにも影響してくる。例えばスマートフォンに対する一般的な姿勢がこれをよく表している。スマートフォンを常にユーザーと共に、あるいは少なくとも手の届くところに置いていると親しみを感じ、そこにパーソナルスペースを見出す。パーソナルスペース(「近接学」)の認識に関するEdward T. Hall氏の研究によれば、概して、人はそのスペースを親友や家族、恋人のために確保している場所だという。


スペースの区分け / (左から)親しい、個人的、社会的、公共

人が自分の携帯電話との感情的なつながりを築き始めても驚きはない。それらは、私たちが秘密を打ち明けられるパートナーであり、かつ超人的な力を与えてくれるツールであるのだ。これこそ本当の最初のパーソナル・デジタル・デバイスだと言えよう。

このパーソナルスペースが侵害されると、人は強く反応する。煩わしいSMSのスパムを誰もが嫌がることや、掲示板での痛烈な議論もそうだ。ポータブルデバイスを利用したサービスを考えているならば、ユーザーがそれを使おうと選択した時点で、こうしたパーソナルな性質があることを考えるべきだ。

ユーザーの好き嫌いについてはユーザーの行動によって理解しやすくなる。こうした好みは画面設定にはっきりと表れたり、クリックスルーやコンテンツの保存、購入履歴といった過去の行動から推定されたりする。だが、インターフェースをカスタマイズするために過去の行動から学習することができる可能性はあるが、そのアプローチは思ったより複雑になる。過去の選択を優先させるAdaptive menusは、デスクトップのソフトウェアに織り交ぜることで成功した例だ。つまり、それらはユーザーにとって使いやすいショートカットを提供することができるのだが、理論的根拠が不明確な場合には、ユーザーは予測不可能なものと見なすことが多い。

あなたのアプリケーションをユーザーの過去の動作にぴったりはめ込みたいのなら、自然による浸食現象や、ゆっくりと時間をかけて履き慣らす靴のように、時間をかけた微々たる変化の積み重ねがなくてはならない。2002年のBBCホームページのリデザインプロジェクトは、ユーザーが行ったインタラクションにじわじわと合わせていくアイデアが採用されている。

(From The Glass Wall – BBC.)
BBCのホームページTHE GLASS WALLより

色を変えることでユーザーを導線通りに動かせることができるはずだ。各個人向けにページをカスタマイズできるのであれば、最もよく使われる箇所の色を、徐々に彩度が強くなるようにし、それによってより豊かで、より関連性の高い体験を提供できるのだ。

このようなユーザーのものの見方やモチベーション、恐怖、およびテクノロジーに対する姿勢といった感情的な問題は、当然のことながら、なかなか引き出しにくいものだ。この点こそ、あなたの研究には価値があると証明できるところだ。ユーザーのインタラクションにつながる個性のコンテキストについて、手がかりを得るために行うインタビューにはしっかりと時間をかけて、注目すべきパターンを見出すべきだ。

個性コンテキストを理解するポイント

  • システムを個別のユーザーに適応させるために既定の設定を使うことができるか
  • あるインタラクションに対するユーザーの好みを、ユーザーに示させるのは適切か
  • サイトに対し、ユーザーはどんな種類の感情的なつながりを持つか。そしてユーザーがサイトへのアクセスに使っているデバイスに対してはどうか
  • インタラクションに対し、ユーザーは精神的にどのような姿勢であるか

第7回: 場所情報を用いるリスク へ続く