場所情報を用いるリスク — コンテキストを理解する(7)

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デジタルプロダクトデザイナー/リーダー
Twitterデザインマネージャー
Clearleftエクスペリエンスデザイナー

テクノロジーの進化に伴い、インターネットユーザーを取り巻くコンテキストも変化し、明確に定義することは難しくなってきた。現代のデスクトップ/モバイル・コンテキストの落とし穴から、コンテキストを正しく理解するための切り口について考える。(連載第7回)

連載「コンテキストを理解する」
第1回: コンテキストの落とし穴
第2回: デバイスの多様化によって必要となる視点
第3回: 環境からデザインを逆算する
第4回: 時間軸の中で必要とされるものとは?
第5回: 受動的か能動的かを意識して体験を考える
第6回: 個別最適に、パーソナルスペースを考慮しているか?
第7回: 場所情報を用いるリスク
第8回: ユーザーの周りにも人がいることを意識する
最終回: コンテキスト・デザインの5原則

コンテキストをデザインに落とし込む7つの切り口

リサーチをすれば、単なるコンテキスト以上の洞察が得られる。プロダクト戦略を練る時、サポートするデバイスを選ぶ時、コミュニケーションの手段を企画する時など、いかにリサーチが大切かが分かるはずだ。

しかしせっかく見つけた様々な種類のコンテキスト上の情報や発見は、どのようにデザインに繋げば良いだろうか。当然ながら、コンテキストをいかに分類しても近似値でしかない。カテゴリは溶け合わざるを得ないからだ。しかし次に示すコンテキストの7つの「切り口」が重要な面を網羅しているので、コンテキストの重要性を自信を持って説明できるはずだ。

切り口-1: デバイス
切り口-2: 環境
切り口-3: 時間
切り口-4: 行動
切り口-5: 個性
切り口-6: 場所
切り口-7: ソーシャル

本記事では7つの切り口のうちの1つ、「場所」について取り扱う

切り口-6: 場所

ロケーションの情報は、ネイティブ・ハードウェアのAPIと、Web上のGeolocation APIのおかげで、自動で検知するのが簡単だ。APIはデバイスに現在地を返するように命令する。GPSやIPアドレス、WiFiやBluetoothのMacアドレス、携帯電話ID、ユーザインプットなど使えるものなら何でも使って検知する。APIから得られる主な情報は、1組の緯度と経度の座標情報である。もし他の地理的なデータにアクセスする権限があれば、より分かりやすく、場所の検索がしやすいものにすることができるだろう。例えば、街や地域の名前、住所、特定の場所に個人的な名称を付ける(例えば、「家」とか「仕事場」)などだ。

人は「家」とか「仕事場」のように毎日を過ごす場所にいることが多いが、今やどこにいてもテクノロジーを駆使することができる。ここで、用語について整理しておきたい。私は「モバイル」はユーザの場所を参照するものであり、デバイスカテゴリとは考えていない。持ち運びやすいデバイスも存在するが、生活圏以外の場所で使われた時のみデバイスを「モバイル」と言うことができる。

デバイスとそれを所持する人の現在地が単純には関連していないことが想像できるだろう。外出している全てのユーザが、情報に気を取られていたり、情報を消費しているわけではない。また全てのスマートフォンのユーザが細かな作業に対処できるわけではない。しかしモバイルの固定観念を見ると、ある1つの真実を教えてくれる。旅行や仕事で見知らぬ場所にいる人々は、その地域に関する情報を必要とするということだ。最近の推測によると、スマートフォンからの検索の33%はユーザのいる「場所」に関する情報だという。

ロケーションのコンテキストを知ることは、旅行、小売、観光業に関連した業界にとっては重要な情報となる。ロケーションのコンテキストは、ポータブルデバイスのもっとも分かりやすい活用事例であるが、これはデスクトップブラウザでも使えるものでもある。ほぼ全ての主要なブラウザでGeolocation APIはサポートされているので、ユーザの利用機会を損なわないよう気をつけよう。

また、あなたはキーワード的なロケーションデータを活用できるかもしれない。キーワード的なロケーションデータとは、カレンダーの予定や、旅行の目的地のツイートメッセージなど、自身の意志で発信した情報のことだ。このような個人的なデータを扱う際は細心の注意を払い、あいまいな言葉がある場合は用心したほうがいい。英国人にとって「ボクスホール」というのは、ロンドンにある地域の名前と、人気の車のブランド名の両方を意味する。「ビーストン」はノッティンガムにもリーズにも存在する地名だ。同じようなあいまいなコンテキストのデータは、キーワード的なデータを使い、エラーの可能性を探り、それを吟味して少しでも改善を試みよう。

情報のモラル

位置情報を知らせるアプリは、商業的にもUX的にも、良い機会を与えてくれる。しかし位置データを軽率に使えば、トラブルを引き起こすことになるだろう。プライバシーの問題で、GeolocationAPIの仕様では、ユーザは自身の位置情報にアクセスする権限を使用しているWebアプリに特別許可を出す必要がある。現在のブラウザはプライバシー保護を目的として、確認のメッセージを出すようになっている。同じように、OSは通常、ネイティブユーザにgeolocationのリクエストを受け取るように促す。利点がすぐに明らかにならなければ、ユーザは権限を拒否するだろう。もしアプリが位置情報にアクセスすることで、より良い仕事をしてくれるような(より適切な結果を導きだし、ユーザをイライラさせない)ものであれば、権限のリクエストと同じタイミングで、そのことを説明する事を忘れないようにしよう。自分勝手な理由だけで位置情報を取得してはならない。不当なリクエストはユーザの信頼を裏切ることになり、国によっては、情報に関する保護法に引っかかり、違法になるケースもある。

相関関係と因果関係の混同

どんな時でも、不完全な仮説は、巨大な落とし穴を生み出す。例えば、インディ500が開催される日に、インディアナポリス・モータースピードウェイにいる人はおそらくレースのためにそこに来たのだろう。しかし、その目的は、観客としてか、スポンサーとしてか、主催者としてか、警備員の1人してなのかは分からない。それぞれで目的が違う。API(Geolocation APIも含む)の中には、正確な緯度経度の精密な値をリターンするものがある。その値をよく見て、エラーの可能性を見つけ、最適で正確な情報を提供するようにしよう。

場所コンテキストを理解するポイント

  • ユーザは詳細な位置情報を必要としているか
  • ユーザの位置情報にアクセスすることで、アプリのサービスは向上するか
  • ユーザに位置情報のアクセスを許可してもらうには、どう説明するのが一番いいか
  • 位置情報を提供するのに、緯度経度の他にもっと分かりやすい形式はないか
  • 提供する位置情報が正確であると確信を持つにはどうしたらいいか

第8回: ユーザーの周りにも人がいることを意識する へ続く