コンテキスト・デザインの5原則 — コンテキストを理解する(最終回)

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デジタルプロダクトデザイナー/リーダー
Twitterデザインマネージャー
Clearleftエクスペリエンスデザイナー

テクノロジーの進化に伴い、インターネットユーザーを取り巻くコンテキストも変化し、明確に定義することは難しくなってきた。現代のデスクトップ/モバイル・コンテキストの落とし穴から、コンテキストを正しく理解するための切り口について考える。(連載第9回/最終回)

連載「コンテキストを理解する」
第1回: コンテキストの落とし穴
第2回: デバイスの多様化によって必要となる視点
第3回: 環境からデザインを逆算する
第4回: 時間軸の中で必要とされるものとは?
第5回: 受動的か能動的かを意識して体験を考える
第6回: 個別最適に、パーソナルスペースを考慮しているか?
第7回: 場所情報を用いるリスク
第8回: ユーザーの周りにも人がいることを意識する
最終回: コンテキスト・デザインの5原則

前回までの7つの切り口(デバイス、環境、時間、行動、個性、場所、ソーシャル)を使って、自分のリサーチの役に立てたり、自分のチームメンバーに質問を投げかけたりしてみてほしい。答えはプロジェクトごとにもちろん違うだろうが、一般的な原則はある。

コンテキスト・デザインの原則とは

1. コンテキストとは多面的である

特徴の違うコンテキストはそれぞれで使えるポイントが違う。Paul Dourish氏は、コンテキストは流動的で、常に交渉が可能だと予測した。全てのコンテキストが、常に大切な要素だとは言えない。デザインの中でそれが適切か適切でないかという線引きは明確ではないのだ。調査し、テストし、あなたの直感を信じて、どのコンテキストの要素を使えばいいかを選択し、あなたのデザインに役立ててほしい。一般的な原則では、コンテキストがユーザーの行動に特に影響がない限り、コンテキストの優先順位は低い。しかし、この結果を導き出すために調査や考察をすることには価値がある。もし、状況が変われば、突然何かのコンテキストの要素が重要になってくることもあるのだ。

2. ユーザーにストレスを与えない

どこにいても可能な限り、ユーザーは関連するコンテキストで同じ機能とコンテンツにアクセスできる権限を持つべきである。ユーザーのデバイスの選択によって不便さを与えてはならない。このようなミスを犯してしまった悪い例は、ポータブルデバイス上で誰も使わないだろうと誤って判断し、便利な機能を削除してしまうモバイルサイトである。デザイナーのJosh Clark氏はこれをある本から一部の章を抜いてしまうようなものだと述べている。デスクトップコンピュータに戻ってくるまで、不必要にユーザーを待たせるのは横柄で怠惰な行為である。これは、自分に知識は十分あると思い込み、ユーザーやユーザーの周りの環境を理解するのに十分な時間を使っていない人が陥りやすい誤りだ。

例えば、もしあなたの大型スクリーンのサイト用に、PCサイトとは別に単独のモバイルサイトを作成することを決め、機能の同等性を目指すとする。あなたのメインのプロダクトを理解し、定義し、それから違うコンテキストがそれぞれユーザーエクスペリエンスを強化することのできる方法を探す。特定のコンテキストで絶対に必要な場合(例えば、どうしても乗り越えられないセキュリティ上の理由がある場合など)や、純粋にユーザーエクスペリエンスを改善できる場合のみ、内容や機能を隠す。コンテキストは、複雑性を和らげ、パワーを与える目的で使い、扱いにくい難しいデザインを避ける言い訳として使ってはならない。

しかし、特定のコンテキストに合った方法で、同じコンテキストや機能を提供するのは、何の問題もない。複数のデバイスやコンテキストを通して統合されたユーザーエクスペリエンスの概念は、虚構である。多様性がありすぎるのだ。一貫性を持たせることを目指したほうがずっと良い。そうしてプロダクト全てがまとまると、全体としても理解しやすいものになるのだ。

3. 慎重に進める

コンテキストはとても繊細で人間的である。それを尊重しよう。テクノロジーがコンテキストを使って人々を驚かせたり喜ばせたりするのは素晴らしいことだが、調子に乗ってはいけない。あなたの自慢で巧妙なアルゴリズムだとしても、ユーザーのコンテキストを読み間違えることはよくある。ある人にとってうんざりするような交通渋滞は、別の人にとっては静かで平和なひと時になりうる。

あなたのプロダクトの人間性をコンテキストによって向上させる方法を探してみよう。しかしそれは慎重に探そう。信じられないならば、仮定を元にして作られた膨大なバリエーションを提示するのではなく、あなたのプロダクトの別の事例の中で安定性と類似性を目標にしてみてほしい。可変性があり過ぎるコンテキストの読み取りシステムは、混乱を生じさせるだけで、デザインや実装、維持をより複雑なものにしてしまう。別のスクリーンごとにいくつかのレイアウトを提示できるバリエーションや、特定の機能を持ったデバイス向けに、より良いデータアップロードのプロセスなどの手法を使えば、将来的な管理が大変容易になるだろう。

4. 適応性を認める

別のコンテキストに合うように、プロダクトを根本的に改造する場合、ユーザーにそれを知らせ、決定を否定する権利を与えよう。例えば、小型スクリーンのモバイルサイトから、何かの機能を取り除かなくてはいけないとする。その場合、ユーザーに大型スクリーンのサイトになんらかの方法で戻れるようにする(現在では、フッターにリンクを貼るというのが、普通である)。大型スクリーン版がデバイスやコンテキストに最適化されないので、ユーザーはこの決断に賛同して変更をしてくれるはずだ。

OSの中にはユーザーに、どんなデータを集めたか知らせるために、GPSユニットの使用を示すアイコンを使ったりする。しかし、もしサイトがコンテキスト的なデータをさまざまな情報や景色を提供することに使っているのであれば、インターフェースでそれらの選択を表示する方法を探すのもいいだろう。


Foursquareは、コンテキストを説明することに長けている。このスクリーンだけでも、ソーシャルコンテキスト(特定の場所”ベニュー”に「いいね」した友人)、ロケーション・コンテキスト(地図と距離)、時間のコンテキスト(「この場所はいつもより混んでいる」)が、コメントと一緒に表示されているのが見て分かる。

5. 決断を再考する

コンテキストは不安定なものである。なぜならコンテキスト自体が変化するからだ。デザインしたデジタルプロダクトの人気の寿命と持続性を向上させるため、柔軟性と新しい使い方を考えなくてはならない。私たちが作ったものでユーザーが独自の使い方を確立するにはどうしたらいいのだろうか? 大手のソーシャル・ネットワークでは、新たなユーザーの集まりを通して、進化している。これらの7種類のコンテキストは、時代を超えたものであるが、10年後でも当たり前に通用すると想像するのはほとんど不可能だ。今ある景色を定期的に見直すのはやめて、新しい方法で渡り歩けるような柔軟性のあるシステムを構築してほしい。それには、新しいことに挑戦し、テクノロジーの将来にとって新しい形のコンテキストが何を意味するのか考えていく必要がある。


連載「コンテキストを理解する」
第1回: コンテキストの落とし穴
第2回: デバイスの多様化によって必要となる視点
第3回: 環境からデザインを逆算する
第4回: 時間軸の中で必要とされるものとは?
第5回: 受動的か能動的かを意識して体験を考える
第6回: 個別最適に、パーソナルスペースを考慮しているか?
第7回: 場所情報を用いるリスク
第8回: ユーザーの周りにも人がいることを意識する
最終回: コンテキスト・デザインの5原則