DesignX: デザインによる改革のための道筋

Source

経営アドバイザー、TEDスピーカー、作家。

この記事はThe Design Collaborativeによる共著です

3428359

現在、世界が直面する多くの複雑かつ深刻な問題がある。DesignXはそれに取り組むための証拠に基づく新しいアプローチであり、既存のデザイン技法を拡張し、デザインの果たす役割を再構築する。

現代デザインは製品やサービス重視から、幅広い社会問題に適用できる強固な手法を重視するようになった。これらデザイン技法に専門知識と技術が加わると、大規模で複雑な問題への実践的対処策を開発できる強力な手法となる。

今日、人類が直面する重要な問題の中に、利害関係者と問題の複雑なシステムが関係している。 多くの場合、多数の人や機関(特に通信、計算、運送)に技術が関係することで課題が生じる。健康、教育、都市化、環境問題などだけではなく、持続性、エネルギー、経済、政治、さらに全体的な福利などの問題も課題となる。

職種としてのデザインの歴史

デザインがこれらの問題にどう役に立つのかを理解するためには、職種としてのデザインの歴史を簡単に振り返ることが必要とされる。現代の実践的デザインは産業革命に始まった。当時、デザイン職とその前身の職業は、欧米で新興していた中流階級のために産業が製品の製造や情報の提供を可能にするシステムを提供していた。デザイナーが重点的に取り組んだのは、大量生産と組立の発展に照らした産業の本質的価値と利益の向上であった。

第二次世界大戦以降、デザインは製品の動作や使用に無関係な外観を重視するようになった。電子回路やコンピュータチップの開発により多機能になった機器の外観を重視した結果、複雑怪奇な相互作用をもたらした。現在私たちが置かれている状況でもあるデザインの次の段階は、需要や機能に応じたデザイン技法を開発し、問題を解消することだ。結果的に人と技術の相互作用がより理解でき、より快適なものになる。

人間の需要と能力を満たすことを重視したことで、抜本的で根深い問題が発見できるツールの開発にもつながった。今では、経営管理や組織の組み立て方、さらには最重要課題でもある、曖昧で複雑に急変する大規模な社会問題などに、これらの新しい方法を幅広く適用することが可能との認識が増えている。既存のデザインツールがこれらの問題の取り組みに使用される一方で、より包括的な手法が求められている。

DesignXの目標と手法

DesignXは主な人的/社会的需要を解決するシステムや段取りに対処する際に、人々、組織、社会を支えるツールを強化することを目指す。DesignXは、実行、描画、スケッチ、試行に加えて、集中的観察技術、システム全体の深い分析、実行と試行の繰り返し、熟考や修正などを重視している。

04eaa58
個別の健康状態に関するDesignXの相互作用例”delphi.ucsd.edu

学術機関では、既存の学問分野で問題を深く分析するが、DesignXは異なる方法で問題に取り組む。深く分析するのではなく、問題に関する多分野の知識を利用し、現状改善に役立てる実用的な手法を生み出す。それは実行することの規律であり、深い理解が欠如しているものの継続的な改善を要する領域に適用される。全面解決を実現できない場合においても、現状改善を常に試行する実践的な手法であることを目指す。

これまでのデザインは製品やサービスを重視していたが、DesignX(調査や熟考、実装と検証の継続などの反復サイクルを行うデザイン技法)は、多くの社会問題に適用することができる。

DesignXは、民間や公共、大学や企業などの多くの機関によって行われている作業を編成し展開したものだ。異なるスキルを持つ人材の創造的で信頼関係のある共同作業が必要となる、複雑なシステムをもった問題に適用される。その構築基盤の事例は、草分け的組織によって過去10年の間に数多くつくられてきた。

DesignXは、あくまでも人間の需要に焦点を当て、問題の根源を追求し、基本的な問題への取り組みを目指している。定義された領域の専門知識に基づき統合と構築を行い、症状を軽減するのではなく、現状に合致する実践可能な解決の提供を常に試みる。

特に、解決に技術を要する人間と社会の需要が混在する問題の解決に適しており、それが目的とされているこれらの問題の多くは部分的あるいは完全に自動化された知的システムを含む、人やグループ、人工物のネットワーク化で生じる異なるレベルのコミュニケーションに関連している。自然と人工のシステムが混在するネットワークゆえに生じる複雑な問題にDesignXは対応している。

求められるチーム構成

複雑な問題には複雑な解決が要される。これを達成するには、問題と解決の理解に関わる分野を網羅するチーム構成が必要だ。問題ごとにチームを構成し、各メンバーがおのおのの専門知識を出しながらチームに貢献、協力できなければいけない。DesignXのデザイナーはあらゆる分野の専門家と連携しなければならない。専門家の知識や手法を踏まえ、最適な手法を問題に応用し、多数の制約や利害、異なる意見を克服しなければならない。

必要とされる幅広い技術

DesignXには、多種多様な利害関係者や専門家と効果的に対応するために、スキルや知識、ボキャブラリーが求められる。分野として、デザインは異なる技術力を要する。科学と実験に基づく場合もあるが、多くの場合、まだデザイナーのスキルや見識、創造力に任されている。

DesignXを成功させるためには、検証や試行によって明らかにされた幅広い技術を必要とし、それは証拠に基づくデザインを重視することになる。科学的調査に基づいて構築した手法があれば、枠組み作りやデザインパターンを根拠にした手法もある。それでも試行錯誤を重ね改良や評価を続け、実用時の長短、実用に適した状況を認識して検証する発見的な手法もあるのだ。

教育も変えなければならない。

以前にも増して問題は流動的であり、多くの場合、情報の内容の変化が速いため、検証が間に合わない。そのため、教育のモデルのみならず分野のモデルに関わる問題を調査するための新しい研究習慣が必要だ。新しい研究方法や教育方法に対応できる理論的基礎を必要とし、好転する社会や経済の変化に対応できる新しい知識や手法を有効にするための革新的で包括的な社会のエコシステムが求められる。そのためには、迅速に評価や検証、プロトタイプの展開、試験運用、さらには暫定的な”解決策”を実施できる新たな手法を開発しなければならない。迅速なフィードバックや作業の繰り返しによって優れた結果を導き出せるようになる。“速く学び、学ぶことを怠らない”を信条にすべきだ。

教育も変えなければならない。今日、大学では分野中心の教育のため、技術、芸術、社会科学、政治、ビジネスなどの複数の分野を取り巻く複雑な問題に対処できていない。あらゆる分野の専門家や学生が特定の問題に取り組めるような、分野だけでなく問題を土台とした新たな揺るぎない教育モデルが必要だ。分野ごとの教育だけではなく、問題ごとに教育することが必要なのだ。

デザインによる改革

私たちは、デザインの実践や教育、そして研究における抜本的改革を求めている。デザインを用いて現状改革をする時なのだ。

世界の多文化間の対話を強化することが重要だ。エネルギーや資源の大量消費を必要とするシステムに取って代わる、品質とパフォーマンスの対策を伴う持続性が、今、世界的に求められている。

興味のある方は、DesignX: 新たなデザイナーの社会的役割とは?も読んでほしい。


この記事はThe Design Collaborative”による共著です。著者は次の通り(アルファベット順):Ken Friedman(同済大学デザイン・アンド・イノベーション大学、スウィンバーン大学デザインイノベーションセンター)、Yongqi Lou(同済大学)、Don Norman(カリフォルニア大学サンディエゴ校、デザイン研究所)、Pieter Jan Stappers(デルフト技術大学工業デザイン工学部)、Ena Voûte(デルフト大学)、Patrick Whitney(イリノイ技術協会、デザイン協会) お問い合わせはdesignxcollaborative@gmail.comまで。