アイデアだけで勝負する起業時代の終焉

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LOGiN編集長、ドワンゴにてモバイルコンテンツ事業などを手掛けた実業家、フリーライター。

マイクロソフトが主催するMicrosoft Innovation Dayに参加し感じたことは、スタートアップを目指す起業家たちの若さだ。「若さ」という言葉には新鮮な起業家という面もあるが、ここでは文字通り実年齢の面での若さだ。

日本マイクロソフトの平野拓也社長は、ビル・ゲイツと対話した際に「恐いものは何か?」と尋ねたことがあり、そのときの答えが印象的だったと話す。

大企業は恐くない。一番恐いのは、学生だ。寝る間を惜しんで、一所懸命パッションでいろんなアイデアを持って、果敢に挑戦する、そういう学生が一番恐い。 — ビル・ゲイツ

学生には時間があると言ったらそれまでだが、ここでいう恐怖はその行動力の大きさではないだろうか。しかも彼らには、アイデアも豊富にある。

これからのビジネスにとって有益な成果をもたらすテクノロジーのひとつに、IoT、AI、クラウドコンピューティングといった技術があるが、子供の頃からインターネットを活用してきた世代にとって、これらは使えて当たり前の時代になってきた。そんな彼らが、今回のようなイノベーティブなイベントにどんどん参加し、自らのアイデアを、多くのアクセラレーター、インキュベーターの前に晒し、切磋琢磨し、具現化していく世界が、もうすでにビジネスシーンにできあがりつつあるのだ。今回のイベントにも、起業を目指す学生が非常に多く参加している。

これからのスタートアップに必要なもの

もし今、何か面白いアイデアが浮かび、それを持って起業してみようと考えているならば、まずはそんな彼らがライバルにいるということも念頭に置いて、そこからスタートアップを考える必要がある。

起業するにあたっては、もちろんアイデアありきなのだが、しかし彼らのような若き起業家は、スタートアップの際に、より多くのアクセラレーションプログラム、インキュベーションプログラムを活用することも忘れてはいない。今まで多くの起業アイデアが市場に投下され、話題になるも、ほとんどのアイデアがスケールせずに終わっていくことを、彼ら自身がインターネットの世界で実体験として持ち、単なるアイデアのみのサービスは通用しないことを肌で感じているのだ。

アクセラレーションプログラム等を活用したからといって、それらが成功するとも限らないことは重々承知だ。が、しかし、自らのアイデアでイノベーションを起こすには、アイデアよりも、より早いスケーラビリティーと、それをバックアップしてくれるアクセラレーションの必要性を感じ取っている起業家も多いのである。特に資金力の乏しい起業家にとって、それらは必須項目。せっかくのアイデアも、もたもたしていたら、世界中のどこかで同じようなアイデアが登場し、そしてあっという間に、そのアイデアは一世代前のものになっていく時代だからである。やはり行動力こそが、アイデアを具現化する武器であることは間違いない。

アクセラレーション必須の時代が到来する

そしてこれからの時代、それらの良き相談相手が、アクセラレーターであり、インキュベーターなのだ。投資家とて、ただ投資しているだけではない。やはり同じようにこの世界を見てきていることを忘れてはならないし、会社を大きくしていくという点において、見習うべき点は少なくない。特にひとつのビジネスが大きくスケールしていくには、これまでのビジネスシーンでの経験がものを言う。スケールしていく起業家に必要な能力として、他の声にも耳を傾け、そして迅速に対応していくことも忘れてはならないのだ。アクセラレーター、インキュベーター向けのプレゼンテーションは、大きくスケールするサービスが必ず直面するユーザーの声との戦いがあるが、これらはその前哨戦のようなものだ。

また同時に、これらのイベントやプログラムに参加するということは、今現在の社会的な課題や、求められているもの、他の起業家が何を考えているか、そういうことも参考になる。自分たちのアイデアと他人のアイデアの違いを比べる機会もできるし、また意外にも自分では思い浮かばないような意見に遭遇できることもある、自分自身のスキルアップにも役立つ貴重な体験だ。

大企業や投資家には、本当にアイデアがないのか?

では、なぜ投資家や大企業が、それだけの経験があるのにも関わらず、こういったイベントでイノベーティブな活動を支援し、若き起業家に投資しているのだろうか? 大企業には本当にアイデアがないのだろうか? それとも投資家たちの思いつかないようなサービスが求められているのだろうか? たぶんそれはそうではないのだ。
恐らく大企業の中にも優秀なアイデアマンは数多くいるに違いなく、そして技術力も豊富にあるはずなのだ。その証拠に、何か大きくスケールしたサービスが登場すると、決まってその二番手、三番手が早々に出てくることから、それらを伺い知ることができる。しかし世の中に登場するイノベーティブなサービスを見ると、その多くが新規参入の若き起業家によるサービスばかりだ。それこそが、ビル・ゲイツが恐いという、学生たちのパッションと行動力に他ならないのではないだろうか。
大企業には、その行動力、いやむしろ判断力といったほうが適切かも知れないが、まだスケールしていないものに対して、それを正当に評価し、ビジネスとして突き進むような体制が皆無というのが実情だ。イノベーティブなことをやるには、行動力と小回りのきく機動力が必須であることも、大企業は理解しているからこその支援なのだろう。

くどいようだが、まず新しいアイデアが浮かんだら、それをどうスケールさせていくかを考え、そして良き相談相手となる投資家たちが何を求めているかを考え抜き、良きアクセラレーションプログラム、インキュベーションプログラムを活用していこう。これらの多くは、最初からグローバルな市場を相手に考えて実施されているものが多いので、その面でも、良きアドバイザーになるはずだ。たとえ自分たちのサービスにグローバル化の必要性を感じなくても、もしもWEBやスマートフォンのネイティブアプリケーションを活用していこうと思っているなら、これから戦う相手はグローバル企業であることの自覚も必要だろう。これはサービスがスケールすればするほど、そういった要望が高まるであろうし、また投資家にも必ず問われる項目であろう。やる、やらないはともかく、考え、いつでも対応できるように振る舞えるかどうかは、必須能力と言っても過言ではない。

これらのことができなければ起業をするなとまでは言わないが、現代の若き投資家はここまで考えているということを肝に銘じ行動しなければ、これからのスタートアップシーンでの勝ち目はもはやない、スタートアップの時代は、そんなシーン突入していることを忘れずに。大事なのは、より早く、いかに大きくスケールさせることができるか、そこを真剣に考え、そして行動することが成功の鍵だ。