デザインの「良い嘘」と「悪い嘘」

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Dieter Rams氏の「グッドデザインは誠実である」という原則を、デジタルデザインに当てはめて考察。サービスやプロダクトを正確に使えるようにユーザーを導く「良い嘘」もあれば、ユーザーが望まない操作を仕掛ける「悪い嘘」もある。デザイナーはいつの時代も誠実にユーザーに向き合わなければいけない。「グッドデザインの10の原則」シリーズ Pt. 6

グッドデザインは誠実である。

グッド・デザインは、製品を実際以上に革新的、強力、有用に見せたりはしない。守ることのできない約束で消費者を操るものではない。 — Dieter Rams氏「グッドデザインの10の原則」

『カルビンとホッブス』のストーリーで、行動力のある6歳の少年カルビンが、シリアルのキャンペーンでプロペラ帽子プレゼントに応募するために、何ヶ月もシリアルを食べる。ようやく応募し、6週間待ちに待って、ようやく帽子が届く。帽子をかぶり、その小さなモーターの電源を入れるとプロペラが回り出したが、、、、何も起こらない。カルビンが期待していたように飛ぶことはできなかった。一瞬にして、現実が突きつけられる。そのプロペラはただの飾りで、飛行用ではなかったのだ。夢は打ち砕かれた。

グッドデザインは見せかけだけの期待を作らない。それは機能、能力、媒体に対して誠実である。装飾にはそれ以外の意味は持たせない。示唆された機能はきちんと果たさなければいけない。プロダクトやサービスによって示された能力は正当でなければいけない。グッドデザインはそれが伝える情報や代理するプロセスに対して誠実であるように、媒体に対しても誠実でなければいけない。

これはむしろ原則以上の問題であり、実用主義の問題でもある。ユーザーへは一度しか嘘はつけないが、真実は何度でも伝えることができる。誠実なデザインはユーザーとの健全な関係を構築するために、プロダクトやサービスにおいて信頼と自信を積み重ねる。それがグッドデザインであり、グッドビジネスなのだ。

デジタルデザインと誠実さ

デジタルメディアは形を与えるまで目に見えず、その空っぽのデバイスは、モノよりも不誠実なデザインになりやすい。デザイナーはプロダクトとサービスを正確に作ることには特に注意しなければいけない。

不誠実なデザインは意図されずに起こるものだ。それは我々の仕事を目指したものとは違うものに見せてしまう。例えば、消費者向けのアプリを実際の目的よりも華やかに見せたり、見た目は美しいwebサイトでも機能が果たせなかったりする。多くの場合、目的とは異なった不誠実なデザインが作られてしまうのだ。


欧州合同原子核研究機関でのヒッグス粒子発見のプレゼンテーションで、ComicSansの書体が使われたスライドが映し出された。このタイポグラフィーは内容にそぐわず、不誠実なデザインが意図されずに作られる良い例となってしまった

デザインの「良い嘘」

ユーザーのために、デザインが「正しい嘘」をつく場合がある。

スキューモーフィズムがその典型だ。我々はwebサイトのボタンはボタンのように見える必要はないということはわかってる。しかし、慣れていないユーザーにとっては、グラデーションと影をつけることでより意味をはっきりとさせることができる。フラットなデバイスに偽の影と光を作る仕掛けではあるが、目的はユーザーを助けることで、だますことではない。デザインではよく起こることだが、目的がルールに勝るのだ。

主にデザインとは、複雑なアイデアをシンプルにするためにメタファーを構築することだ。バーチャルな簡略は不誠実ではなく、比喩を超えたものが不誠実なのだ。インターフェイスは事実に着色することで、正しい状況を伝える。それがインターフェースの役割だ。コンピューターは二進法の情報しか処理できない。それを超えたコマンド操作やグラフィカルインターフェイスはメタファーとなる。

デザインの「悪い嘘」

反対に、デザインの「悪い嘘」もある。そのような例を集めたdarkpatterns.orgにあるように、「悪い嘘」はミスではなく、人間心理にもとづいて丁寧に作られたものであり、ユーザーのことを考えて作られているのではない。

世間的に評価されているようなサイトでさえ、このようなことは起こる。特に悪質な嘘は以下の特徴がある。

強制コンティニュー
フリートライアルのためにクレジットカード情報を入力しなければならず、月末までにキャンセルするのを忘れて請求されたことはあるだろうか?それが強制コンティニューだ。

ゴキブリホイホイ
フリートライアルにサインアップし、購読を終了するためには、営業時間中にその会社に電話しなければいけなくなる。これによって、同じようにキャンセルしたい人は意欲をそがれてしまうだろう。そして会社はただで利益をあげることができる。まるでゴキブリホイホイのような仕組みだ。

プライバシーザッカリング
Electronic Frontier Foundationによって命名されたパターンであり、「難しい専門用語とインターフェースを作り、ユーザーが意図しないことまでシェアさえようとする」こと。Facebookを使ったことがあれば、はっきりと何のことかわかるだろう。

「悪い嘘」は「良い嘘」とは正反対の結果をもたらす。それらはデザイナーやプロダクトの利益のためにユーザーをだまし、そこから抜け出せなくさせる。なんとしてでも騙されないようにしてほしい。

まとめ

デザインとはコミュニケーションであり、誠実なコミュニケーションのみがユーザーの注意と関心を引くに値する。グッドデザインは誠実であり、先入観と制限を受け入れる。デザイナーとして、ユーザーをリスペクトし、望まないことをさせないようにデザインをしなければいけない。Dieter Rams氏が述べたように、”グッド・デザインは、製品を実際以上に革新的、強力、有用に見せたりはしない。守ることのできない約束で消費者を操るものではない”。


この記事はシリーズ「グッドデザインの10の原則: デジタルプロダクトへの展開」(全10回)のPt.6です。
Pt.1, Pt.2, Pt.3, Pt.4, Pt.5, Pt.6, Pt.7, Pt.8, Pt.9

「グッドデザインの10の原則」はDieter Rams氏と長年の連携をもつVitsœのWebサイトで発表された。原則はクリエイティブコモンズラインセンスのもと、ここで見ることができる。