グッドデザインは本当にイノベーティブか?(ディーター・ラムスの原則とデジタルプロダクツに関する考察)

Source

これは伝説的なインダストリアルデザイナーであるDieter Rams氏の「グッドデザインの10の原則」を、デジタルプロダクツに適用する考察である。

グッドデザインは革新的である
ものごとを革新していくための可能性が尽きることはない。技術の進化がつねに、革新的なデザインへの新たなチャンスを与えてくれる。しかし、革新的なデザインとは、つねに技術の革新とともに生み出されるものであり、デザインだけで完結することはない。
ー Dieter Rams氏「グッドデザインの10の原則」より

「もちろん我々はイノベーティブだ。」と、あるプロダクトデザイナーは言っていた。「我々は最新のデバイスへのソフトウェアを作っているからだ。スタートレックでさえ、我々が毎日ポケットの中にそんなデバイスを持ち歩いているとは予測できなかったんだ。」

実際には、最新のデバイスへのソフトウェアを作るからと言って、それがイノベーティブであるとは限らない。「カレンダー」や「天気予報」のアプリを検索すると、過去に作られたものがコピーされ、付加価値をつけられずに異なるUIで作り直されているだけなのが分かる。

ほとんどの新しいソフトウェアは、(アプリやWebサイトと同じように)それぞれのデバイスをほとんど使いこなせていない。時代遅れのテンプレートを使い、プラットフォームの可能性を制限してしまいながら、古いデザインやメタファーを使い続けている。

それは的外れの方向にスイングするのと同じように簡単なことだ。グッドデザインは機能を果たさないものとは共存しないため、デザインのみでイノベーションにはなるわけがない。我々がつくるほとんどのプロダクトは、すでに存在するアイデアの組み合わせであり、新しいプラットフォームの上で、違いが分かる程度に進化したものにすぎない。単純なWebサイトやスプレッドシートアプリに斬新なインターフェースを作ることはただの過剰になってしまう。

一体どこで折り合いをつければいいのだろうか?デザインの目的を諦めずに、どうやってラムスの原則をデジタル時代に適用することができるのだろうか?

全てのデザインは、仮説を立てる挑戦から始まる。そのデザインの起源と有用性を疑うことで、必要な時に媒体の限界を押し広げることができたり、最善と考えられる場合は過去の限界にとどまることができる。

「保存」を意味するのにフロッピーディスクのアイコン使うことは場合によっては最善かもしれないが、だとしたらイノベーションの名の下にそれを廃止してしまうのは無意味である。グッドデザインとは、それが最良の選択だから使われるということだ。怠慢や思考不足で使っているのであれば、デザイン自体が怠慢で思考不足ということになる。一方、カレンダーアプリに新しいインターフェースをつくることは、既存の常識を打ち破るイノベーションになるかもしれないが、ただの悪いデザインになってしまうかもしれない。

イノベーションとは未来を作ることであり、類似しているものと競うことではない。それは表面上の違いを作るのではなく、問題を解決することである。本当のイノベーションとは申し合わされた努力によって生まれるものではない。むしろ、個々のデザイナーが最善の方法で個々の問題を解決することで、自然に生まれるものなのだ。場合によってはそれは過去にとどまることであるし、滅多にないことではあるが、その媒体の限界を押し広げ、新しい道を作るものであるかもしれない。後者であることを証明するために、我々はしかるべき時と場所にいることを願うのみである。


この記事はシリーズ「グッドデザインの10の原則: デジタルプロダクトへの展開」(全10回)のPt.1です。
Pt.1, Pt.2, Pt.3, Pt.4, Pt.5, Pt.6, Pt.7, Pt.8, Pt.9

「グッドデザインの10の原則」はDieter Rams氏と長年の連携をもつVitsœのWebサイトで発表された。原則はクリエイティブコモンズラインセンスのもと、ここで見ることができる。