グッドデザインはスタイルではない

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グッドデザインとは表面的なスタイルではなく、ロジックに基づいて本質にたどりついたシンプルなものである。Dieter Rams氏の「グッドデザインの10の原則」をデジタルプロダクトに当てはめた考察(最終回)。

グッドデザインは純粋で簡素である。「Less, but better」— より少なく、しかもより良く。それは、本質的な部分に集中するということ。それによって製品は、不要で過剰なデザインから開放される。純粋で簡素、そこに立ち返ることだ。 — Dieter Rams「グッドデザインの10の原則」

18か月近く前にこのシリーズを始めて以来、デザインの世界では多くが変わった。

かつては業界で非現実的だとして避けられていた話題が、今ではオフィスやコーヒーショップやメディアで広く議論されている。新しいツールやメソッドが当たり前になった。ついにデザインが価値を生み出すものとして地位を得たのだ。

こういうもの全ての中で、私たちの分野の基本は変わっていない。Dieter Rams氏による不朽の原則は、昨日と同じように今日も真実で、明日も変わらないだろう。人間の問題を特定し、最も効果のある方法で解決するには、デザインが適している。デザインは個々のメディアやツールセットのいずれよりも幅広いものなのだ。

Rams氏は最も重要な原則を最後まで取っておいた。実用性の次にはシンプルであることが、グッドデザインという品質を証明する。シンプルであれば確実に、そのプロダクトは情報処理のために、焦点が絞られ、配慮が行き届き、調整されている。

シンプルであることはグッドデザインであると同時にグッドビジネスでもある。画面に表示される要素が少なければ少ないほど、その要素ひとつひとつが伝えられる情報量が大きくなる。

全ての優れたものと同じように、シンプルにするのは難しいことだ。無駄がなく焦点を絞ったインターフェースを創造するよりも、余計な特徴や飾りをつける方がずっと簡単だ。事実、バッドデザインは、無意味な飾りつけを探せばすぐに見つかる。

スタイルではなく本質を見よう

現在のデジタルの世界を見渡してみると、シンプルであることが優位に立てると考えられるようになってきた。Web2.0とiOS6の時代のツヤツヤした質感やレザーのような質感は、フラットなボタンと色使いへと変わった。私たちはどんなものを作る時も、よりシンプルなインターフェース、よりシンプルなフロー、よりシンプルな美しさをずっと求め続けてきた。

シンプルであることやピュアであることをいくら賞賛しても、相変わらず過剰なデザインがはびこっている。

スキューモーフィズムだけが悪いのではない。多くのフラットなインターフェースも過剰なデザインで、本質から外れたパララックススクロールやスクロールハイジャッキング、意味のないアニメーションといった重荷が課せられている。ミニマリストらしく見えることと、ミニマリストであることは違うのだ。

フラットデザインならば無駄が無いということではない。それは、スキューモーフィズムのデザインが、意味の伝達において全く無意味とは言えないのと同じだ。スタイルに関係なく、グッドデザインは、本質だけに集中しているのだ。

作業全体を通してこの原則を確認するために、常に「ロジック」を自問し続けるべきである。なぜアプリケーションはこのように動くのか? なぜこのエレメントが必要なのか? なぜこのフォント/色/質感/動きを選んだのか? 全ての決定が正しいと確認された場合にだけ、「極めて簡潔」なデザインにたどり着いたことが確認できるのである。


連載を終えて

もちろん、この原則が当てはまるのは、デザインだけではない。Blaise Pascal氏の著作にある名言、「もっと短い手紙にしたかったが、時間がなかった」を思い出す。

同様に、デジタルジャーナリズムの世界においては、あまりにも発行が多いため、厳しい編集スケジュールの中で、毎日多くの記事が大量生産されて、質が低下している。より多くのノイズを含んだシグナルを追いやるよりも、頻度を下げて、より意味のある発行をすることによって、私たちの業界の評判や話題に貢献する方が良い。より少なく、しかしより良く。

今後どうなるかよく分からないままこのシリーズを終えるのは、気が進まない。今、発行する状況は、The Industryが始まった時とは少し異なっている。話題は変わった。私たちは、もう自らの新しい職業を認めてもらうのに苦労しない。デザインが尊重されているのだ。「何」と「どのように」の議論を越えて、「なぜ」を話題にすることが増えた。

他にも議論すべきことがある。デザインは、実業界、政界、その他既存の機関とどう関わるのか? 一般の人々に広告をクリックさせる方法よりも、もっと興味深い課題にエネルギーを注ぐにはどうすれば良いのか? 「デザインは世界を良い方向に変えられる」という私たちの主張を遂行しながら、どのように社会貢献すれば良いのか?

私たちは、グッドデザインとは何かを知っている。私たちが見てきたこの基本的な原則が、私たちの指標である。

さあ、何をデザインしようか。


この記事はシリーズ「グッドデザインの10の原則: デジタルプロダクトへの展開」(全10回)のPt.10です。
Pt.1, Pt.2, Pt.3, Pt.4, Pt.5, Pt.6, Pt.7, Pt.8, Pt.9, Pt.10

「グッドデザインの10の原則」はDieter Rams氏と長年の連携をもつVitsœのWebサイトで発表された。原則はクリエイティブコモンズラインセンスのもと、ここで見ることができる。

写真: “Apple” by Joe King, used under CC BY 2.0 / Modified from original