長く使われてこそグッドデザインである

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流行に左右されず長く使われるのがグッドデザインである、とディーターラムス氏は述べた。現代のテクノロジーが次々と変化していく状況で、デジタルデザインにおいては、適応力をもつデザインシステムが構築されていることがグッドデザインの条件となる。

グッドデザインは、流行から距離を置く。そのため、古くなることもない。ファッショナブルな流行のデザインとは異なり、今日のような使い捨て社会にあっても、長く使われつづける。 — Dieter Rams氏「グッドデザインの10の原則」

「長く使われるデザイン」とはデザインの分野によって意味が異なる。素晴らしい建築は何世紀も長持ちする。グラフィックデザインでも、スイスタイポグラフィーのように、決して古くならないものもある。逆にファッションほとんどが古臭くなってしまう。

デジタルデザインについては、その寿命を考えるにはまだ新しすぎる。デバイスの技術的制限によって、今までスタイルは次々と変わっていった。8ビットのゲームは他に選択肢がなかったために特定のスタイルを持った。Windows95はパソコン初心者にも馴染めるようなデザインでつくられた。Web2.0時代に流行ったスキューモーフィズムは新しなデバイスの中で暴走した結果だ。私たちは突然ありあまる自由を手に入れて、何をすべき分からなかったのだ。


デジタル時代においては、その技術的制限によってデザインは決まっていた

デジタルデザインの寿命について考えると、自然と流行についての話になる。デザイン初心者でさえWebサイトのデザインを見れば何年頃に作られたかを推測できる。フラットカラー、角丸ボタン、パララックス効果を持った背景であれば、間違いなくkoko
2年くらいのものだろう。リボンとドロップシャドウ付きのジェリービーンズのようなボタンであれば、おそらくMySpaceと同時代のものだろう。

デジタルは早く変わりすぎて、立ち戻って基本的なことを考えることができなかった。何がデジタルデザインを長く使われるものにするのか?

短命の媒体の中で、長い寿命のものなど存在するのだろうか?もしくは、デジタルデザインにおいては何事も数年ごとに移り変わるため、流行を追いつづけるだけの宿命なのだろうか?

デジタルデザインが長く使われるための4つのポイント

新しい技術への適応力

Webは予測できず、デバイスは5年後、もっと言えば5ヶ月後にどうなっているかわからない。技術的変化に影響されないデジタルデザインだけが長持ちできる。

ニュートラルなデザイン

要素が少ない方が時代遅れになる要素もすくないため、複雑なデザインよりもシンプルなデザインの方が長持ちする。言い換えれば、読みやすいタイポグラフィーは長生きするが、ドロップシャドウやジェリーボタンはベルボトムやフリル服のようなものだ。

維持のしやすさ

どれだけ準備しようと、Web上にあるものは定期的にアップデートが必要になる。維持するのにシンプルであればあるほど、新しい技術によって廃れることは少なくなり、グラフィック面でアップデートをするのがスムーズになる。

最小限の技術

WebにおいてピュアHTMLほど長生きするものはない。完全なレスポンシブで、どのデバイスでも見れて、プラグインを必要とせず、完全にセマンティックだ。Javascriptがオフになっても関係ない。ブラウザーが特定のCSSプロパティーをサポートしていても関係ない。特定のベンダ固有プレフィックスをもたない。そのような状態で、ピュアHTML(もしくはオブジェクティブ-Cやデバイスへのネイティブ言語)に近いほど、長く使われることになるだろう。

長く使われるための設計

我々は過去のWebのデザインに長い時間をかけすぎた。かつてはスクリーン解像度を正確に予測できる時代があり、ユーザーは椅子に座って机でWebサイトを見るものだった。我々はその形式は変わらないだろうと思っていたが、その時代は終わり、Webデザイナーのほとんどはレスポンシブデザインを採用している。

長く使われるためには、デジタルデザインの柔軟性をさらに押し進めなければいけない。レスポンシブビジュアルは素晴らしいきっかけだが、長いスパンで考えずにその時々の個別事例に対応するデザインを続けていると、デバイスの流動性を生かす大きなチャンスを逃すことになる。デザインをするよりも、デザインシステムを作るべきなのだ。


個別のページを作るよりも、モジュラーデザインシステムを構築する方が将来性は高い

柔軟性と適応性をもつシステムを作ることは、デジタルプロダクトが変化しながらその包括的な価値を保つための唯一の方法だ。

デザインは劣化するかもしれないが、デザインシステムは柔軟性がある。
デザインは短命だが、デザインシステムは長生きする。
デザインは現在に縛られているが、デザインシステムは未来へ準備されている。

デザインシステムはWebにおいてまったく新しくはない。Laura Kalbag氏は2012年に24Wayサイトでそのことについて書いた。2013年にはBrad Frost氏は小さな結合子が繋がってとても複雑な構造をもつページを組み立てていくというAtomic Designのアイデアを紹介した。さらにTim Berners-Lee氏は2008年にW3Cブログにおいてモジュラリティーの重要性について議論していた。

長生きするデザインは見かけではなく、それはどのように作られ、維持されていくかなのだ。

寿命とスタイル

「フラットデザインはミディアムに対してより適している」と言うように、我々は特定のデザインスタイルを守ることを自己正当化するようになってしまった。おそらくそれは事実で、確実性は大切なものだ。しかし、たった一つの本当のデザインスタイルに固執し、他の全ては価値がないというかのように、今日現在のデザイントレンドについて議論するのは危険だ。

実際にはそれほど昔ではないが、ネットの歴史では大昔に、ボタンは押しやすいようにキラキラしていて、触れるかのように見えなければいけなかった。フラットで視差効果のあるデザインが主流になった今では、全てバカらしい。

今から3年後、フラットデザインはどのように思われるだろうか?

トレンドは正しい方向への前身だと考えれば、トレンドを追うことは間違っていることではない。フラットデザインを非難することには興味がない。それ自体が目的になって一時的なトレンドになるのなら、立ち戻って、目的を考え直すべきだ。

デジタルデザインの情勢が変われば、同じようなデザインの問題が同じような解決策に導かれるように、トレンドは有機的に生まれるものだ。一時的なデザインとは周りに流されて誰もが流されるから起こるものだ。問題に対する最善策でなかったとしても、みんなが使ってる解決策を借りしまうのだ。デザインのエコーチャンバー化が盲目的に流行を追いかけさせてしまう。

まとめ

デジタルデザインが長く使われるためには、プロダクトよりもシステムの構築に集中すべきだ。プロダクトは古びて、他のデザイン情勢から取り残される。しかし、システムは環境に応じて変化し適応できる。

かつてはピクセルで作ったが、いまはemsに移行したように、webのトレンドは柔軟性とモジュラリティーに向かっている。長く使われるグッドデザインを作るデザイナーはそのことをわかっているのだ。

テクノロジーは変わり、スタイルは流行になったり時代遅れになったりするが、webの基本的な構造が一貫していれば、長く使われることができる。今はまだデジタルデザインの黎明期だ。建築は崩れファッションは廃れるが、我々は未来のためにデザインしているのだ。


この記事はシリーズ「グッドデザインの10の原則: デジタルプロダクトへの展開」(全10回)のPt.7です。
Pt.1, Pt.2, Pt.3, Pt.4, Pt.5, Pt.6, Pt.7, Pt.8, Pt.9

「グッドデザインの10の原則」はDieter Rams氏と長年の連携をもつVitsœのWebサイトで発表された。原則はクリエイティブコモンズラインセンスのもと、ここで見ることができる。