優れたプロダクトは優れた質問から始まる — スプリントの使い方

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心理学とテクノロジー、経営学を中心に執筆、教授活動を行っているコンサルタント。
Hooked: ハマるしかけ』著者。

Google Venturesで実践されている「スプリント」。プロダクトを短期間で改善させるそのプロセスをご紹介する。

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私の友人、Jake Knapp氏が素晴らしい本を出版した。タイトルは『Sprint: How to Solve Big Problems and Test New Ideas in Just Five Days.』だ。本の中では、彼が普段Google Venturesのチームメンバーたちと行っているアイデアから、プロトタイプ、テストに至るまでのプロセスを素早くこなすやり方を説明している。以下はJake氏がNirAndFar.comのために特別に寄せてくれた記事である。


到達点から考える

「スプリント」の1週間の始まりである月曜日は「到達点から考える」というエクササイズから始まる。つまり、この週の終わり、そしてその先の将来を考えるということだ。チーム全員で、長期的な目標や、その目標を達成するために解決しなければいけない問題など主要ポイントを明確にする。

大きな問題が出てくると、すぐに解決したいと思うのは当然だろう。5日間の「スプリント」では時間が限られているし、チームはそわそわしている。問題に対する解決法はもうすでにチームメンバー全員の頭の中になんとなく浮かんできているだろう。しかし、初めのうちは慌てずに、自分の知っている情報をシェアし、優先順位を決めることで、間違った方向に進めてしまったり、時間や労力の無駄を発生させなくて済む。

「到達点から考える」ことは、タイムマシーンの鍵をもらったようなものだ。「スプリント」プロジェクトの最後の日にワープできたとしたら、どんな質問の答えが出ているろうか? もし、6カ月、いや1年後の未来に行けるとしたら、このプロジェクトの成果であなたの仕事はどう改善されているだろうか? たとえ、先の結果が明らかな場合でも、書き留めたりして明確にしておくことは決して無駄な労力ではない。まずはプロジェクトの長期的な目標から考えよう。

会話の初めは、チームメンバーにこんな質問を投げかけるのはどうだろう。「なぜ私たちはこのプロジェクトを進めているんだろう? 半年後、1年後、さらに5年後にはどうなっていたいだろうか?」と。

このような話し合いは30秒で終わるかもしれないし、30分かかるかもしれない。もし他のメンバーがあなたの目標に賛成していなかったり、目標にあいまいな部分があったりしても、恥じることはない。それでも話し合って、答えをまとめるように努力してほしい。ここでしばらく作業がストップしてしまいイライラするかもしれないが、その分、目標は明確になり、それに対する充実感や自信をこの1週間ずっと持ち続けることができるだろう。

あなたが掲げる目標は、チームの指針や願望を反映させたものがよい。やりすぎでもいい。この「スプリント」をすることで、どこからどう仕事を始めたら良いのかが分かるようになったり、あなたがもつ最大の目標に対しても確実に近づくことができるだろう。長期的目標が決まったら、ホワイトボードの一番上にそれを書いておこう。この「スプリント」期間中、そこに掲げておけば、チーム全員が同じ目的に向かって作業を進められる指針となるだろう。

悲観的な視点で考えてみる

ではここで気持ちを入れ替えよう。長期的な目標を書いて、あなたは今、楽観的になっている。完璧な将来を思い描いているはずだ。

では、次は悲観的になろう。今から1年の月日が経って、プロジェクトが最悪の結果になっていたらと仮定してみる。失敗した理由は何だったんだろう? どうしてそうなってしまったのだろうか?

目標の下にはいつも危険な思い込みが隠れている。思い込みが検証されないまま放置される期間が長くなればなるほど、リスクはどんどん高くなっていく。「スプリント」期間は、この隠れたままの思い込みを掘り起こして、質問形式にし、答えを見つけられるいい機会だ。

目標を立てた時と同じように、このような質問をすることで、話し合いができ、解決法に近づくことができるはずだ。これにより、1週間を通して参照でき、金曜のテスト後に評価をして使えるチェックリストのようなものを手に入れることができるだろう。

質問形式で思い込みを掘り起こす

2つ目のホワイトボードにあなたの疑問をリストにして書いていこう。チームメンバーが思い込みと質問が思い浮かべやすいように、例を以下に挙げる。

  • 「スプリント」期間中に、解決したい質問は何か?
  • 長期的目標を達成するには、何が必要か?
  • たとえば、プロジェクトがこの先、失敗すると仮定する。原因は何だろうか?

このエクササイズで重要なのは、思い込みや障害物を質問形式に言い換えることである。Blue Bottle Coffeeがオンラインストアを立ち上げるのに「スプリント」を実施した。「スプリント」をやる前は、オンラインストアによって新規ユーザーを取り入れ、彼らの専門技術を広く届ける方法は何かしらあるだろう、と思い込んでいたが、実際「スプリント」やってみるとどうしたらいいのか分からなかった。Blue Bottleの例のように、思い込みを見つけるのは難しいことではない。質問形式にしたものが以下だ。

Q:新規のユーザーを呼び込むには、どうしたらいいか?
A:私たちの技術を信頼してもらうようにする。

Q:それを質問に変換すると?
A:私たちの技術をユーザーは信頼するだろうか?

ここに書き出した会話に少し違和感を覚えるかもしれない。こんなふうに会話をする人はいない。しかし、潜在的な問題を質問形式にすることで、分かりやすくなる。スケッチやプロトタイプ、テストで解決するのが容易になるだろう。また、不確実だったものを、ワクワクするものに変えることができる。

1つか2つくらいの質問しか思い浮かばないかもしれない。それでいい。あるいは、10個以上浮かんでくるかもしれない。それでもいい。たくさんの質問が出てきて、リストが長くなったとしても、とりあえず優先順位を付けるなどの心配はしなくていい。それは、「スプリント」の目標が決まった初日、月曜の終わりに決めればいいのだ。

これらのような将来を考えた質問から始めると、きっと恐怖心が湧いてくるだろう。重い質問や、あいまいなことがあれば、誰でも不快感を覚える。しかし、それらが一カ所にすべて集まっているのを見れば、そうじゃないときより心は落ち着くはずだ。自分たちがどこに向かって進み、どんな障害が待ち受けているか知ることができるからだ。


Jake Knapp氏はGoogle Venturesのデザイン・パートナーだ。彼は、23andmeやSlack、 Nest、Foundation Medicineなど、他にも多くのスタートアップでこの「スプリント」を100回以上実施してきた。自分のチームで「スプリント」を試してみたいと思ったら、『Sprint: How to Solve Big Problems and Test New Ideas in Just Five Days』をぜひチェックしてほしい。