Googleによる1億円規模の鼻炎アレルギー商品キャンペーンとは?

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新しい商品を打ち出したり、自分のブランドを立ち上げたり、今のビジネスを広げようと思っていても、誰にも見られてなければ何の意味もない。

あなたのページを見てもらうためのコンテンツ制作を行おうと思ったら、検索エンジンという確かな情報源を使わない手はない。

私たちのPodcastの番組「The Studio」での最新エピソードで、いくつかの世界大手企業のクリエイティブディレクターやリーダーたちに話を聞いた。その中から、WundermanのMatthew Connor氏による、無名の薬品メーカーを有名にした、Google主導の大規模なデジタルキャンペーンの話をご紹介しよう。

ゼロからのブランディングの再出発

2009年、アレルギー緩和のための鼻用スプレー、Flonaseは事実上消えたも同然だった。広告はなく、取材もない。消費者の目には、この商品は全く映っていなかっただろう。

この企業がWundermanに協力を求め、ゼロからプロジェクトを始めた。Flonaseをデジタルの時代に再登場させるため、大規模で大胆で、考え方を根本から変えるような新たな出発を計画した。しかし、ご存知のとおり、2000年後期以来、オンラインの世界は大きく変化をしていた。

彼らにはテクノロジーが使えるこの時代でオンラインとうまく付き合う戦略が必要だった。今の時代、ユーザーはただ単にコンテンツを読むだけでなく、直接ブランドに関わることができるのだ。

Connor氏は以下のように話す。

コンテンツは、さまざまなwebサイトのディスカバラビリティ(見つけやすさ)を高め、改善してくれる道具になろうとしていた

私たちがコンテンツを作り上げるのは、ただの楽しみのためや、それが新しいことだからという理由ではない。私たちは企業のページ検索を最適化し、顧客を情報元に導こうと努力している

Googleの戦略

今回のキャンペーンの柱となるコンテンツとして、Connor氏と企業はまず、新しいwebサイトを構築し、それをさまざまな形態のメディアの拠点とした。

次に、季節や自然の出来事と重なるコンテンツカレンダーを作った。継続的にコンテンツが追加できるようなリズムを作り出したのだ。

しかし、それはどんな種類のコンテンツだろうか? ここでGoogle BrandLabが登場する。

Googleの巨大な検索エンジンとのつながりを利用して、Wundermanは、異なるコンテンツをGoogleがデザインした項目ごとに以下のように分類した。

ヘルプ・コンテンツ

Googleの提案
中核となるユーザーのための、常時オンの「プル型」コンテンツ

Wundermanの活用法
アレルギーを患う人々のためのガイドと情報を、ショートテールとロングテールの両方のキーワードをターゲットとして作成することにより、ブランドに慣れ親しんだアレルギー患者のために、いつでも使えるプル型コンテンツを作成した。

ハブ・コンテンツ

Googleの提案
主要な潜在顧客のためにデザインされた、定期企画の「プッシュ型」コンテンツ

Wundermanの活用法
顧客に向き合うブランドとして、Flonaseの「ハブ」コンテンツを、もっとライフスタイルに基づいたものと定め、アレルギー患者の現実生活とアレルギーを克服する力にコンテンツを結び付けた。

ある時は、アレルギーを患う6人のInstagramerを雇い、春のアレルギーシーズン中にFlonaseを使って生活しながらアレルギーに打ち勝つ様子を投稿してもらった。

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Google BrandLab

ヒーロー・コンテンツ

Googleの提案
広範囲な認知度を高めるためにデザインされた大規模な興業イベントや派手なキャンペーン

Wundermanの活用法
これはまさしくドル箱だ。大量のコンテンツがただの投稿を超えて、ほとんど独立した存在になる。WundermanはFlonaseのキャンペーンのために、春のアレルギーシーズンに向けて、これまでとは全く異なるサイトを構築した。Flonaseのブランド名は大きく扱わず、アレルギーのない生活の体験を前面に押し出すことで、「アレルギーに打ち勝とう!」というメッセージを打ち出したのだ。

Crew(筆者の運営するサービス)では、これに似たプロジェクトを行い、我々に親しみのなさそうな多数派のユーザーと対話するための専用サイトを作り上げた。SlackvsHipChatなどでは、Slackへの切替えと、それを使うことの是非を実証した。あるいは、アプリ、Webサイト、ブランディングのコストがどれぐらいかを素早く見積もるHow Much to Makeシリーズなどもある。これらのマイクロサイトが私たちのトラフィックとプロジェクトの重要なリファラになったことから、このヒーロー・コンテンツには語り尽くせないほどの実力があることがわかる。

成功するキャンペーンの2つのポイント

このキャンペーンの成功は、コンテンツのカテゴリ分けに帰着するだけではない。Connor氏は対談の中で、さらに2つの重要なアドバイスを提案した。

1.ユーザーと親密な関係を築く

ユーザーは、ブランドがデジタル空間の中で独自のストーリーを語ることを期待するようになり、テレビ放送のスポット広告でよくあるような、商品のうたい文句の単なる押しつけとは、親密さの理念や質が違うことに気付くようになった。

例えば、Google BrandLabは、Dysonの羽根なし扇風機の事例を紹介した。これは、基本的には真ん中に大きな穴の空いた扇風機だ。

この技術を説明したテレビスポット広告は非常に誠実で真面目なもので、オンラインの視聴回数は約18,000回だった。第2バージョンもあり、それは、倉庫で人々がこの扇風機を手にして並べ、風船が扇風機の穴を風に吹かれて進んでいくという3分間の動画だった。

その人たちはオタクっぽい感じで、説明の音声はなく、演出のクオリティは低い。扇風機を手にしているのはオタクっぽい人たちだが、飛んでいく風船を眺めるのは誰が見ても面白いものになっていた。比較によれば、この動画は1,800万回視聴されたと思われる。

2.メディア中立の概念を使う

「アレルギーに打ち勝つ」ことに焦点を当てたヒーロー・コンテンツが起点となって、全てが前進することになった。これがConnor氏の言う「メデイア中立」概念だ。商品の話をするのではなく、シナリオをひっくり返してユーザに直接語りかけるのだ。

どうするか?ではなくどうしてなのか?に焦点をあてるということだ。

Instagramのキャンペーンが、商品ではなく個人に結び付いていたこと、そして、アレルギーに煩わされなければ何ができるか? に結び付いていた、ということを考えてみよう。

この考え方をさらに大きく活用した。アレルギーの症状の害を被らず、邪魔されることもない状態を、ただ何度も繰り返して祝福する。ただしネガティブなものごとを長々と述べるのではなく、その代わりにできるポジティブなことに焦点をあてた、ヒーローになるようなものだ。

商品を実際に使用したInstagramerたちから、実際に素晴らしいコメントが寄せられた。この愛すべきコメントたちは正直な感想であり、人々の心に共感を呼び起こすことができた。

キャンペーンの結果

キャンペーンの8か月後、Flonaseはデジタル世界の暗闇から出て、Claritinなどの有名なブランドと同じ土俵に立つことができた。

8~9か月の期間中、60~70のコンテンツを投入した後に確かな転換時点があり、有機的なディスカバラビリティとエンゲージメント時間が急激に上昇し始めたことは興味深い。ある時点で突然、私たちは、ユーザにとって正当で意味のある形で人々と繋がったのだ。

コンテンツゲームに参戦することは長期戦を意味する。適所に堅実な戦略がなければ、ただ壁に物を投げつけて、どれが刺さるか試すようなものだ。

これが、世界中のブランドのために数十億とまではいかなくても数百万のページ閲覧回数を導いたコンテンツのフレームワークを作り上げた、Googleの方法である。