リサーチからデザイン思考への転換

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視聴者を理解することはユーザエクスペリエンスデザインにおいて、また、その他のユーザを中心に置いたデザインの過程において非常に重要なものだ。しかし、私たちはそれを、どのように実践しているだろうか?

既に存在している製品やサービスに関しては、ユーザの洞察やフィードバックが豊富にあるかもしれない。しかし新しい製品においては、正式な視聴者調査は計り知れないほどの価値がある。そしてそれこそが、私たちがLondon Liveのために行ったことなのだ。

デザインを始める前に、私たちはLondon Liveの戦略的機会を明らかにするため、徹底した視聴者リサーチをオンラインで実施した。ターゲットとする人口統計から幅広く10人の参加者を選び、彼らの日々の移動や社会生活、仕事、インターネットや他のテクノロジーの利用、ニュースやビデオ、その他のメディアの消費について探るため、聞きとり調査を行った。これにより私たちは、彼らの日常生活にぴったりのデジタルプラットフォームをデザインするために必要な洞察を得ることができた。

視聴者リサーチは、有用性リサーチとは異なる。特定の製品の使い方を調べるのではなく、ユーザの行動や動機を調査するのだ。もちろん両方とも、ユーザ中心のデザインの過程では必要なものだ。

ユーザエクスペリエンスのための視聴者リサーチは、市場リサーチとも異なる。市場の規模や価格設定、特定の製品アイデアを売り込む方法には関係しない。その代わり、ユーザが生活の中で解決しようとしている問題を特定するのに役立ち、それをより良い新しい方法で解決するために、私たちはデザインを使うことができるかもしれない。

「なぜ?」というゴールデンクエスチョン

「なぜ?」と問うことは、意味のある洞察を得るための鍵だ。それは問うのも問われるのも簡単ではないし、快適でもない。私たちは普通、自分のふるまいを詳細に分析するのを楽しまない。なぜなら、それによって、自分たちが普通であるかどうかを問うことになるからだ。「なぜ?」というのは本来的には非難だ。学校に通っていた頃を思い出すだろう。しかし、「なぜ?」と問うことは、行動パターンの裏に隠れている動機を理解するためには必要不可欠だし、もっと心地よい方法で行うこともできる。例えば、「どうして好きになったのですか?」や「このような行動を起こさせたきっかけは?」といったフレーズを使うのだ。これらはより思慮深い質問であり、挑戦的な感じが和らぐ。

鍵となる動機を特定する

ある特定のグループの中で共通した行動パターンは、共通の目的を示唆している。私たちがLondon Liveの調査で、参加者と一緒に探ったトピックの1つは、地域の天気情報だった。私たちは、地域の天気情報に興味のある参加者たちに、天気のチェックに「何を」、「いつ」、「どこで」使うかだけでなく、「なぜ」使うのかも尋ねた。

そこから分かったのは、話を聞いた全ての視聴者にとって天気は重要であるということだった。これは特に目新しいことではない。しかし有用だったのは、全員が「今日は傘や上着を持っていった方がいいか」を考えるために、天気をチェックするという共通の動機があったことだ。

動機をデザインに転換する

天気情報から得られた動機は、あまり重要に思えないかもしれない。しかしこれにより、London Liveの天気情報を視聴者のニーズに合わせて調整するために重要な指針が得られた。

調査から分かったのは、以下のようなことだ。

  1. ユーザは、天気情報にすばやくアクセスする必要がある
  2. ユーザは詳細を必要としていない。必要なのは気温と降水確率のみ。

これは、アプリやWebサイト、日刊紙、テレビやラジオの速報、など、既に天気サービスで溢れかえっている世界では、製品に直接適用できる貴重な情報だろう。特に、ユーザが気圧や風速などのデータを必要としていないということが分かれば、ターゲットとなる視聴者に有用なサービスを提供することができるのだ。


London Liveの天気アイコン

要求をデザインで満たす

私たちは、London LiveのWebサイトの全てのページにおいて、グローバルナビゲーションバーで天気の概要を表示することにした。ユーザはニュースをチェックしながら、あるいは出かける場所を探したりテレビを見たりしながら、重要な情報を見ることができる。やっている行為を中断する必要も、別の場所に移動する必要もない。

この先数日間の予報の概要は、ナビゲーションバーを拡大すれば見ることができる。(参加者の多くがやっていると言ったように)翌日の服装を選ぶという非常に重要な要求にもこたえてくれる。

ひと目で天気が分かるように、テキスト情報は最小限にし、目立って認識しやすいアイコンを使った。

視聴者中心のデザイン

London Liveの天気情報の例は単純なものだが、きちんとした初期調査を行うことで、私たちがデザインした全ての機能に視聴者の洞察を適用することができた。例えばテレビの見逃し配信やニュースへのコメント機能、行動喚起などだ。

もしも既に製品があり、視聴者との関係も構築しているなら、デザインの改良に直接適用できるような貴重な洞察を、既に手に入れているかもしれない。London Liveでは、まったく新しいプラットフォームを作り出すために、正式な視聴者調査は不可欠だった。視聴者の行動(そしてきわめて重要な、目的と動機)をしっかりと理解することは、製品デザインを成功させるための最良の土台になり得るのだ。