成功者の読書術

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本を読むことと、読んだ内容を使いこなすことは全くの別物だ。本記事では人間が記憶する3つの要素「印象、関連、反復」を利用した読書術と、成功者たちの読書メモ管理法をご紹介する。

自分にとっては厄介な問題でも、恐らく自分より賢い誰かが書いたであろう、ある本の中にはその対処法が書かれている。 — Ryan Holiday氏の言葉

全ての物語は、ある時点で誰かによって経験され、記録され、そして出版されている。もちろん物語だけではない。本には人生の教訓、例えば読者自身の人生に応用できるような確かな見解や逸話がちりばめられているのだ。

しかし、本を読むことと、読んだ内容を使いこなすことは全くの別物だ。

読書の時間を最大限に生かす方法を理解するには、物事を覚える理由を考えること、さらには覚えた情報を活用する最善の方法を把握することから始めなければならない。

記憶の仕組み

目的や意図がなければ、読書中にひらめいたアイデアなどは簡単に消え去ってしまう。それらを保持するには、記憶の仕組みを理解することが大切だ。

こうした読書中の記憶を保持するには、記憶が基本的に3つの要素で成り立っていると考えると都合がいい。

  1. 印象(後で他者に伝えられるように読む)
  2. 関連(視覚的なものと関連づけて記憶する)
  3. 反復(後で読み返したいパートを管理する)

1. 印象(後で他者に伝えられるように読む)

印象が強ければ強いほど、それが記憶に残る可能性は高い

不意を突かれるフレーズや引用に出くわしたりすると、それがある物事に対する考え方を変えることだってあり得るし、おもしろいことに、後で誰かに教えてやろうという気になることだってある。

先生を考えてみると分かりやすいかもしれない。彼らは自分が教える立場だからこそ担当の教科をマスターできる。あなただって、彼らと同じような意気込みで読書にのぞめば、より多くの情報を素早く思い出せるようになるはずだ。

『Memory & Cognition(記憶と認知)』という雑誌に掲載された最近の研究では、目的や意図を持って読書をすることの効果が証明されている。その内容は以下の通りだ。2つのグループに同じ素材を渡し、一方のグループには読書後にテストがあると伝え、もう一方には読書後、その内容を第三者に教えなければならないと伝える。

最終的に両グループとも同じテストを受けるのだが、驚いたことに、「第三者に教える」と伝えられたグループの方が(テストを予告されたグループよりも)はるかに成績がよかった。

テストを受けると予告された人たちに比べ、教えることになっていた人たちの方が内容をより正確に覚えていた。内容を効率的に整理し、重要な情報については特によく記憶していた。

明確な疑問や集中できる話題は、情報を記憶し思い出す有効な鍵となる。

事前に調べる内容を決めるのも1つの方法だが、もし時間に余裕があれば、内容を効果的に頭の中に印象付ける方法として、以下を試してみてほしい。

内容を効果的に頭の中に印象付ける方法

読書前
結末を犠牲にして、先にレビューや要約を読む。
白紙のまま読み進めると、出来事がなぜ起きたのかについて意識が働き、その出来事がなのかということについては二の次になってしまうことが多い。主題に関する前知識で読書の枠組みを固めておき、書かれている内容がさらなる話題へとどのようにつながっていくのかという視点で読み進めるようにしたい。
読書中
読書中は特定の目的を念頭に置いて、それを中心に読み進める。読みながら、考えを見失わないように。
容赦なくメモを取る。図書館の本でやれば司書から目の敵にされること間違いなしだが、傍注(余白にメモを書き、フォローアップのために目印を付けること)をうまく使いこなせるようになれば、より積極的に読むことができ、それだけ内容が記憶にも残りやすい。
読書後
本の内容を再考する。思い出したいトピックや活用したいアイデアを抽出して書き出すとともに、書き出した内容を裏付けるようなトピックや事実を調べ、それが本の内容とどのように関連するかを探る。その上で、最終的に自分のアイデアとして提出したり、議論したり、書いたりする。

2. 関連(視覚的なものと関連づけて記憶する)

関連付けについて、例えば壁の釘を想像すると分かりやすいだろう。新しく知った事実を関連のある釘に掛ける。その釘の位置を思い出せば、情報にたどり着きやすいというわけだ。

読書中に新しいアイデアや考えを思いついたら、古いものと新しいものつなげるため、似たような記憶にそれを関連付けるといい。

関連付けの方法は、語呂を作ってみたり、考えを何らかの物に結び付けたりするなど、無数に考えられる。

mind palace
劇場の形をした記憶のルネサンス宮殿

記憶に関する多くの優れた人たちが、記憶の宮殿(情報の保管場所を示す頭の中の地図)を作ることについて語っている。それぞれの記憶が頭の中の「物理的な」場所に関連付けられているため、宮殿の中を歩けば、例えば私たちが家の中で鍵を探すようにして、探していたものを「見つける」ことができるらしい。

頭の中の「物理的な」場所から情報を探し出す。

私たちの脳は、言葉や抽象的な思考だけよりも、視覚的なものがあった方がずっとうまく機能する。つまり、より効果的に記憶するには、記憶したい情報を場所や視覚的なものに関連付ければいいということになるだろう。

3. 反復(後で読み返したいパートを管理する)

記憶に影響を与える最後の要素であり、長期の記憶にとって最も重要なのが反復だ。本を再読、再考することがなければ、知識を吸収できる可能性は低く、実世界に応用することも難しくなる。

これは、必ずしもその本を何度も通読しなければならないという意味ではない(もちろん、それはそれで効果的ではあるが)。それよりも、後で読み返したいと思ったパートに関するメモ書きを自分なりに管理する方法を見つけることの方がより重要だと思える。

成功者たちのメモの管理法

成功したクリエイティブな人たちは、単に楽しむためだけではなく、学ぶために本を読んでいる。

両者に大した違いはないと思われるかもしれないが、そんなことはない。

目的を持った読書というのは記憶の全ての作業を集約させることで、特定の目標を持ち(印象)、内容を他の情報とつなぎ(連関)、時間と労力を費やして何度も何度も読み直すこと(反復)を意味しているのだ。

ここで、一部の博識な成功者たちがどのように考えをまとめ、読書を最大限に生かしているかをご紹介しよう。

1. Ryan Holiday氏:作家、マーケター

Ryan Holiday氏が月ごとに送ってくる推薦図書メーリングリストは、私のお気に入りのニュースレターの1つになっている。私の興味の焦点は、多岐にわたって広い知識を有するRyan氏が、本の内容について、どのように考えをまとめるのかということだ。

私が見たところ、彼は彼の師であるRobert Greene氏から学んだ方法を使っているように思える。

以下がその概要だ。

  • 読みながら、余白に詳細なメモを書き、そのページの隅を折る。
  • 1~2週間後、本を再読し、なおも印象に残ったメモを写真程度のサイズのカードに書き写す。
  • それぞれのカードの右上にカテゴリやテーマを書き込む(カードの色で判別してもよい)。
  • カテゴリごと(または本のプロジェクトに取り組んでいるのであれば章ごと)にカードをまとめる。こうすれば、カードの再構成も容易になるし、カテゴリ内でアイデアをランダムに組み合わせることもできる(創造性の原点)。

ryan holiday note cards

2. Maria Popova氏:作家、brainpickings.org創設者

brainpickings.orgを読めば、Maria Popovaが驚異的な記憶力を持っているか、あるいは考えを整理して蓄えるものすごい方法を考案したかのどちらかであるということが分かる。

実際は、どうもその両方らしい。

彼女は、執筆中の内容に関連する内容を素早く見つけ出すため、独自のインデックスを作っている。その仕組みは以下の通りだ。

  • 読みながら興味を持った箇所や引用をハイライトする(余白にメモを取る)。
  • 本の背面(前面)に、ハイライトをしたページのリストと、書き残したメモがどのカテゴリ(例えばcreativity(創造性)なら「C」とか、あるいは最新プロジェクトの名前でも)に属するかというインデックスを作成する。

3. Austin Kleon氏:芸術家、作家

芸術家であり作家でもあるAustin Kleonv氏は、私たちの脳が視覚的な情報によりよく反応するという事実を活用して、頭の中の地図にメモを取るような形を再現している。

彼の説明はこうだ。

2次元の記憶の宮殿を、紙の上に構築している。メモを非直線的な形で取り、画像や言葉を隙間に配置することで、文章を連続的に書くのでは不可能な関連性を見ることができるよ。

austin kleon - musicophilia

4. Josh Kaufman氏:ベストセラー『Personal MBA – 学び続けるプロフェッショナルの必携書』の著者

他の方法ほど複雑でも興味深くもない一方、彼の方法(Benchmark Revenue Management社のCEO、Tyson McDowell氏にちなんでMcDowellグリッド法という)は、新しい考えを自分の意見やアイデアに結び付けるのに適した方法だ。

手順は以下の通り。

  • シンプルな2列のグリッドを作成する。
  • 一方に、印象に残った事実、思考、または引用を書き込む。
  • 対となるもう一方に、自身の個人的な反応や考えを書き込む。

以上、このような方法を参考にすると、メモしたパートを再読する時にも、初めて読んだ時の気持ちを維持しながら、またそのパートにのぞめるのではないだろうか。

読書は人生の大きな喜びの1つだ。日々の生活の忙しさを和らげるすばらしい方法であるとともに、目的を持って読むことで自分を成長させることもできるし、他人の経験や知恵を学ぶこともできる。


各画像のクレジット:Lou Levit氏Ryan Holiday氏Austin Kleon氏