実践デザインプロセス ― 改訂版ダブルダイヤモンド

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本稿はイノベーションを起こそうとデザインプロセスに関わる人、クリエイティブなデザイナーやプロジェクトマネージャーに向けたHowto記事だ。どのように始め、どこに注目し、どう仕切り、どう構造化するか。そしてその意味付け、実行方法、課題や問題点の整理、そしてダブルダイヤモンドについての理解を提供したいと思う。

改訂版ダブルダイヤモンド

英国デザイン・カウンシルが既にダブルダイヤモンドについて定義をしているが、私は先に挙げた目的を果たすため、独自の解釈を加えた改訂版を考えた。本稿では基本的に改訂版ダブルダイヤモンドに沿って進めていくが、IDEO人間中心デザイン(HCD)のイデオロギーや、d.schoolで行われているデザイン思考プロセスをよく知る人にとっては、馴染みのあるアプローチやステップとなっているかもしれない。


英国デザイン・カウンシルが定義したダブルダイヤモンド (img source)


発散と収束を繰り返すIDEOのHCDプロセス (img source)


d.schoolのデザイン思考プロセス (img source)

人を理解する

Don Norman氏によると、HCD(人間中心デザイン)のプロセスとは、これからデザインによって解決しようとする、人とニーズの意味をよく理解することから始まるのだという。こうした取り組みは多くの企業や団体、教育機関によって実践され、その中でプロセスを構造化するために、上の図のようなモデルが考案されてきた。

ダブルダイヤモンド

初めてカレーを作るなら、まずは魅力的なレシピを選ぶだろう。そのレシピを使って何度か辛い思いをしたら、次はスパイスをほどほどにするかもしれないし、逆に刺激が病み付きになってスパイスを加える場合もあるだろう。つまりはこういうことだ。

人は自分のニーズや好みに合わせて、オリジナルのレシピをひねり出すものだ。

これはまさに、私がHyper IslandDigital Experience Designを学んでいた時に実施したデザインプロセスだ。

ダブルダイヤモンドはフレームワークの構造が明快でダイナミックなので、デザインプロセスとして私はよく使っている。

デザインプロセスの基本と手引き

ほとんどのクリエイティブなプロジェクトにおける主な課題は、「知らない」状態を「知っている」状態にするところにあり、言い換えれば「〜かも知れない」という曖昧な状態から「〜の方が良い」と明確に言えるようにするということだ。このプロセスは一見すると終わりがあり、一直線でシンプルな物に思えるかもしれない。しかし、実際には全く終わりの見えないプロセスである。

創造力とは、私たちの生活にポジティブな変化をもたらすために、新しい方法を模索し続ける習慣そのものだ (Hyper Island、2016)

ダブルダイヤモンドとは、課題に取り組むために構造化されたデザインのアプローチを図式化したもので、図中のAを出発点としBを目標とする4つのフェーズに分けられる。

  1. 発見/調査フェーズ(発散)― 問題の本質の理解 (Discover/Research)
  2. 定義/統合フェーズ(収束)― 注目すべき領域 (Define/Synthesis)
  3. 開発/思考フェーズ(発散)― 潜在的な解決策 (Develop/Ideation)
  4. 実現/実装フェーズ(収束)― うまく機能する解決策 (Deliver/Implementation)

各フェーズでは発散または収束のいずれかを行う。発散のフェーズでは、自分の中で限界を決めずに、可能な限りたくさんの可能性を切り開く。これに対し収束のフェーズでは、調査結果やアイデアを絞って凝縮することに力を注ぐ。

「ダブルダイヤモンド」で検索すれば様々な解釈や意味・説明が見受けられるが、個人的にはそれらによってより柔軟かつ素早い応用が許容されるので良いと思うし、私も先に挙げた独自の改訂版にこだわるつもりでいる。つまり私にとってはそれが最も魅力的なレシピなのである。

ダブルダイヤモンドの4つのフェーズは大きく2分できる。

  • Diamond 1 ― 正しいことをする(発見と定義)
    何をやるにしても、実際行動に移す前に、それが解決するのに適した問題点なのか、あるいは質問を尋ねるにあたって意味のある問いなのかを探るのだ。「何をやるか」が重要となる。
  • Diamond 2 ― 正しく事を進める(開発と実現)
    適切な問い、あるいは適切な課題を発見したら、次はこれを適切に行う方法を確認する。「どうやるか」が重要となる。

Diamond 1 ― 正しいことをする(発見と定義)

発見/調査フェーズ

  1. 課題を疑う (Rip the brief)(課題解決に取り組む際の一般的な開始ポイント) ― あなたが進めようとする課題や問いについて、あらゆる部分から疑ってみる。そして本当に関心のある分野かどうか再評価する。
    できる限り多くの要素をリストアップし、特性を見つけ、興味関心が高く極端な傾向が見られる領域を明らかにする。さらに関連があり、調査が可能な場所や人(ペルソナ)、体験もリストアップする。
  2. 調査に取り掛かる前に、課題を俯瞰して見れるよう、先に上げたリストをグルーピング (Cluster topics)する。調査したいと思える領域かどうかによっては、調査に制限を課すかもしれない。
  3. とことん調査する。主にフィールド調査 (Primary Research)並びにデスク調査 (Secondary Research)を行う。調査方法についてはideo.orgによるリストを共有しておこう。
成果物
雑多な状態で良いので、とにかく調査結果で巨大な山を作るのだ。

定義/統合フェーズ

調査結果の意味をよく理解するために、次の手順を実施し、調査をまとめる。

  1. 調査結果を全てダウンロードする(あなたの生の調査結果や気付きをまとめ、それをチームで共有する)。
  2. 気付きをグルーピングし、テーマ (Themes) との類似点をまとめる。
  3. インサイトを見出し (Insights)、潜在的市場 (Opportunity Areas) を考え出す。(インサイトとは、特定のテーマに関する消費者のモチベーションや希望、欲求など、表面に現れてこない真実である)
  4. 我々が〜をしてみてはどうか (HMW) という質問を作る。これは考え出した活動領域(潜在的市場)において、為されるべきことまたは解決されるべき事を具体的に言語化することである。
成果物
より研ぎ澄まされた正しい課題を導き出せているはずだ。その課題は当初思い描いていたものをより明確化される場合もあれば、より詳細化される場合もあり、逆に否定することすらある。

Diamond 2 ― 正しく事を進める(開発と実現)

開発/思考フェーズ

解決すべき課題、あるいは挑むべき問いを推測できたので、次は思考する番だ。

  1. 思考 (Ideate)
    思考は発散フェーズの一部で、楽しいパートだ。自分らで限界を決めてはならないし、先入観を持たずに思考に臨むべきだ。そして思考の段階では何も判断を下してはいけない。「Yes, and…」の精神を心がけるべきで、「いや、・・・」とか「いいと思う、けど・・・」とかは避けた方がいい。この段階では何も止めずに起こさせてみて、お互いにアイデアを積み重ねるのだ。世の中には星の数ほどのクリエイティブなアイデアを生み出す助けになるツールがあるが、ここでは詳細には触れないこととする。
  2. 評価 (Evaluate)
    このフェーズが終わる少し前にはアイデアを評価し、気に入ったものを1つ決める。決める際に重宝される2つの決め方を教えよう。ドット投票(チームメンバーが公平にそれぞれ気になるアイデアに投票するというもの)と、効果/実現性の4象限マトリクス(潜在的な効果と、それの実現性を示すマトリックスに各アイデアを貼っていき決めるというもの)だ。
成果物
後でプロトタイプを作ってテストしたいと思えるアイデア (Idea) が1つ、あるいはいくらかに絞られて終わるはずだ。

実現/実装フェーズ

潜在的な解決策(アイデアのセット)を考え付いたなら、最終的に絞られたアイデアと、それを実装し、実行させるために必要な方法を評価する。それには、次の3つのステップからなるアジャイルなアプローチを導入するといい。

  1. ビルド (Build) / プロトタイプ
  2. テスト (Test) / 分析
  3. イテレート (Iterate) / 反復

初期の課題や問いに答えられる解決策はどの段階で実現可能かがはっきり分かるMVP (Most Viable Products/Prototypes) を目指すのだ。

成果物
提案、プロダクト、問いの答えや解決策を持ってリリース (Out)まで辿り着くことができるはずだ。

一度プロセスをやり切ったとしても、また最初からやり直すことになる場合もある。常に改善すべきことがあるからだ。

もう一度お伝えしておこう。

創造力とは、私たちの生活にポジティブな変化をもたらすために、新しい方法を模索し続ける習慣そのものだ (Hyper Island、2016)

ダイヤモンドは2つとは限らない

改訂版ダブルダイヤモンドを決定版だとは思わないし、ましてや唯一無二のアプローチだとは思わない。これは確かに私の個人的なアプローチという意味では1つしかないものではある。だがここにはまだ、挑戦したり、疑問を投げかけたり、改善すべきポイントが残っている。

自分の役割やプロジェクトに応じ、ダイヤモンドの大きさすらも異なる場合がある。つまり、もっぱらダブルダイヤモンドのある一部分だけに注目したり、強調したりする課題やプロジェクトもあるかもしれない。しかも、このプロセスは線形ではない。実際には、アジャイルであり、必要であれば前へ戻れたり、先へ進む準備をしておく必要がある。

このフレームワークを利用する人もいれば利用しない人もいるだろう。しかし私にとっては確かに役立つもので、デザインプロセスのガイドとなってきたものだ。

そんなガイドがあってもなお、プロセスの途中では先の見えない中で立ち往生したり、路頭に迷うこともあるだろう。しかしそれが普通なのだ。プロセスを信じ、対処して行くのだ。


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