ブランディングデザインの完璧な見せ方

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ニューヨーク在住。
ブランディング、タイポグラフィー、デザイン史などについて執筆。

2016年の最もプロフェッショナルで、革新的なブランディングデザインのプレゼン方法を10のカテゴリーでご紹介。

1.コンセプトを一目で伝える

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画像:Manual

多くのロゴは、簡単なものであっても、あるコンセプトやアイデアが基になっている。例えば、ManualがFort Point Beer Company向けにデザインしたものは、ビール工場の近くにある美しい橋の鉄のトラス構造の一部をモチーフとしている。それを被写体とした見事な写真をブランドの表現に含むことによって、この企業のコンセプトを直感的に伝えることに成功している。

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画像:Manual

同じデザイン会社が、サンフランシスコにあるYerba Buena Center for the Arts向けにも新しいブランド・アイデンティティをデザインした。これだけなら、抽象的な多角形のように見えるかも知れない。しかし、実は、このコンセプトはYerba Buenaの建物のユニークな形に基づくもので、かつ成長を意味する外側に向かって伸びる矢も表そうとしている。このロゴの基になっているコンセプトは少し曖昧ではあるが、アニメーションを含めたこの地図の画像が、素晴らしい効果をもたらしている。

2.プロセスを残す

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画像:DesignBridge

芸術を愛する人が皆言うように、素晴らしい作品がどのように作られたかの背景を知ると、その作品をより深く理解できる。同じことがブランディングデザインでも言える。DesignBridgeは、Guinnessの新しくてより写実的なハープのロゴを作るという、素晴らしいプロセスに関わった。イギリス最古のハープ製作所の1つを訪れ、実際に楽器に触れることで、ハープらしさを表すカギとなる視覚的要素を見つけた。デザインを提示する際にこの特別な取り組みに光を当てるべきだと考え、作業プロセスが分かるスケッチも含めた。

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画像:UnderConsideration

Interbrandは、シンプルながら効果的な手法をAT&T向けのデザインの提示に採用した。シンプルに、制作プロセスを記録した写真のコラージュを入れ、完成までに検討した多くのバージョンを一目で見ることができるようになっている。

3.違いを明確に見せる

Screen Shot 2016-07-06 at 11.20.52 PM
画像:Wolff Olins

もし、ある企業に一番最初のブランド・アイデンティティの制作を託されたら、真っさらな状態から作業を始めることになる。しかし、既存のイメージを変える場合には、新しいデザインが古いデザインよりいかに優れているかを示すことが必要となる。Wolff Olinsの手法は、しゃれた新しいデザイン(上記の左の画像)と古いブランドの素材を集めたコラージュ(右の画像)を並べて見せることで、古いブランドがいかに粗削りでまとまりのないものだったかを示している。

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画像:UnderConsiderationより

InterbrandによるAT&Tのデザインは、古いデザインに非常に近い。AT&Tの要求が、完全なイメージチェンジではなく、マイナーチェンジして、新しい21世紀のさまざまなメディアに効果的に適用できるブランドとすることだったからだ。そのため、新しいデザインを提示するのに使われた手法は、単純に古いデザインの上に新しいデザインを重ね、小さいながら重要な改良を示すことだった。

4.細部を見せる

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ロゴタイプのデザインには、とてつもなく多くの精密な手作業が必要になる。しかし残念ながら、素人目には、ただフォントを選んだぐらいにしか見えないかも知れない。自分のデザインが”単なるフォント”などではないことを分かってもらうには、Uberと同じことを方法を試してほしい。具体的な長さ、幅、角度をグリッド線を使って詳細に見せることで、ロゴタイプが美学的に作られていることを証明している。

5.柔軟性を見せる

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画像:Manual

この六角形はManualによるYerba Buena Center for the Artsのロゴ(前述)の輪郭線だ。このモデル画像を見れば、Manualのデザインを修正して、Yerba Buenaの広告、季節毎のカタログ、さらには看板に視覚的な統一感を持たせられることが分かる。このような柔軟性は、現代のブランディングでは重要な価値となる。あなたのデザインを使ってマーティング要素の複雑な基盤を統一できることを示せたなら、首尾よく事が運ぶだろう。

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画像:Interbrand Australia

Interbrand Australiaが作ったAustralian Design Centerのロゴ。この”モジュール式”ロゴの基本形は、左から3つ目の、上に三角形が乗った3個のブロックからなる。このロゴの卓越性のカギは柔軟さにある。他の視覚要素やテキスト要素を組み込んで拡張することもできるし、小さいサイズに縮小させて小さな画面サイズに合わせることもできる。デザイナーがクライアントにロゴの基本形しか見せなかったとしたら、ただシンプルなだけに見えるかもしれない。しかし、さまざまなバージョンを示すことによって、素晴らしい多用性が見えてくるのだ。

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画像:Wolff Olins

柔軟性は大切だが、必ずしもAustralian Design Centreの例のように曲芸的に複雑でなくてもよい。Wolff Olinsの例では、ブランドを認識できる形を保ちながらも、もっと簡単に、そのエレガントなロゴタイプを動かしたり曲げたりできることが分かる。

6.適応性を見せる

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画像:UnderConsideration

この提案は、さきほどの提案と似ているが同じではない。「柔軟性を見せる」とは、さまざまな環境にわたって機能するようにデザインの形を変えることが可能だと分かってもらうこと。「適応性を見せる」とは、ある1つのデザインがさまざまな条件の中で本来の姿を維持できることを分かってもらうことだ。この例で、Interbrandは、白の背景、黒の背景、色付きの背景、そして写真の前でもロゴが良く映えることを示した。これは、元の3次元的なデザインではできなかったことだ。

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画像:DesignBridge

もう1つの例は、DesignBridgeによるGuinnessのロゴ。白黒印刷でも、刻印された黄金の形状でも、きれいに見えることが分かる。とても端正なデザインだ。

7.配色の正当性を伝える

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画像:Manual

カラースキームはブランド・アイデンティティのデザインで最も扱いにくく、筆舌に尽くしがたく、それでいて極めて重要な問題だ。色彩心理学に関して研究は山ほどあるが、結局はセンスの問題なのだ。そんなものをどうやってクライアントに伝えればいいのだろう。PANTONEの色見本は無視して、ManualがYBCA向けの文具でやったように、実際のブランド要素を使ってカラースキームを説明しよう。

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画像:UnderConsideration

Uberは、色に対して、さらに革新的で適応性のある手法をとった。Uberのアプリのカラースキームとグラフィックの背景パターンは、ユーザが世界のどこにいるかによって変わる。このアイデアは理屈では理解しにくいので、視覚的なデモンストレーションがとても役立つ。コラージュはそれぞれ、ある都市と、その土地の典型的な模様や風景を示し、それらの変換先であるカラースキームの隣に並べられている。

8.選んだ書体の意図を伝える

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画像:Enchilada

Enchiladaがロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団のためにやったように、クライアントのためにカスタムの書体を作るスキルがあなたにあれば、賞賛に値するだろう。しかし、手持ちの選択肢から書体を選んでいるだけだとしても、心配無用。Enchiladaと同じことをして業界標準のサンプルをクライアントに見せるのは良い考えだ。Enchiladaに倣って「Lorem Ipsum(ダミーテキスト)」を捨て、それよりも、その書体がそのブランドにとって正しい選択である理由を簡潔に説明しよう。

9.リアリティーを持たせる

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画像:UnderConsideration

クライアントに製品パッケージの良さを見せるのはとても難しい。その理由は、3次元的なものを2次元で伝えなければならないからだ。新製品の発表会はもちろん重要だが、そのデザインが実生活でどのように見えるかを分かってもらうことも賢明な考えだ。この、Jones Knowles RitchieによるBudweiserのモデル画像は特に効果的で、それぞれのボトルの向きによって全体のデザインを見せている。

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画像:Manual

この、ManualによるFort Pointのデザインも、表現の手本となる。フレーム全体を缶のデザインで埋め尽くすことによって、白い背景の前に缶を並べるよりも、ずっと魅力的な画像になっている。

10.展開例を見せる

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画像:UnderConsideration

最初に述べたように、現代のデザイナーは、自分のデザインがトートバックからiPhoneの画面、さらには建築物にまで、ありとあらゆる場所に出現することを念頭に置く必要がある。Northは、Tateの新しいブランドロゴがピン、Tシャツ、靴でどのように見えるかを示す、素晴らしい仕事をしている。この写真は実物の商品のように見えるが、クライアント向けにブランド表現を作っている人なら、似たものをサンプルとして簡単に作れるはずだ。

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画像:Interbrand Australia

この、Interbrand AustraliaのAustralian Design Centre向けデザインの画像には重要な教訓が含まれている。そのブランドデザインが人々の目に入ると想定される現実空間でどのように見えるかを常に考えることが大切だ。その空間にいる人々の様子も見せられればさらに良い。

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画像:Wolff Olins

そして、最も注目されている最新の技術をいつも心に留めておくことを忘れてはならない。Wolf Ollinsは、そのデザインがApple Watchインタフェースでどのように見えるかを、いち早くクライアントのGrubhubに伝えた。