ITコミュニティを立ち上げるには

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インターネットはコミュニティを育んできた。特にインターネットを作っている人たち、例えば世界中のエンジニアやデザイナーであればHacker NewsDesigner NewsTwitterRedditといった所に集まっている。Techシティから地理的にどんなに離れていようと、現地で開催される議論よりもネットではより多く広い議論に参加することが可能だ。

しかし、オンラインコミュニティが大切であるのと同時に、実際に人が顔を合わせるミートアップも大切だ。サンフランシスコやニューヨークに住む人であれば、他のデザイナーやエンジニアとのミートアップで得られる猛烈なエネルギーについてイメージできるだろう。オンラインとオフラインとでは偶発性やお互いの親密さなどが異なるのだ。

私は幸いにも地方ではあるが、デザイナーやエンジニア、起業家コミュニティの活発なところに住んでいる。地元で開催されるHudson Valley Tech Meetupには900人ほどのメンバーがいて、業界の有名人、例えばFoursquareの創業者Dennis Crowley氏を招いたり、そこから派生したソフトウェアエンジニア向けのミートアップが生まれもした。さらに世界中から参加者を集めたカンファレンスも開催したりしている。

Dennis Crowley speaking at the Hudson Valley Tech Meetup
Hudson Valley Tech Meetupで講演するFoursquare創業者Dennis Crowley氏

かつてはこのようなコミュニティはなかった。ほんの数年前までHudson Valley唯一のTech界隈への繋がりといえば、すでに衰退傾向にあったIBMの本社があることぐらいで、地元にTechコミュニティなどはなく、ソフトウェアやデザインの話など話題に上る事はなかった。私自身、大学を卒業した後はHudson Valleyに戻り、デザイン文化のかけらの様なものを探してみたものの、見つけることはできなかった。

では、

  • Hudson Valleyに何が起きたのだろうか?
  • たった2年でどうTech業界にコネクションを作れたのか?
  • どうすれば他の地域の人々の手本にできるだろうか?

コミュニティの始まり

3つの質問に答えるために、私はしかるべき人物へ話を聞きに行った。Hudson Valley Tech Meetupを立ち上げた1人であり、オーガナイザーであるKale Kaposhilinだ。彼のコミュニティへの情熱は溢れんばかりで、人を引き寄せる魅力があり、感化させられる様な人物だ。こういった人であれば、然るべき人たちの間を取り持つだけで魅力的な出来事を引き起こせてしまう。どのコミュニティにもKaleと同じような人がいるのではないだろうか。そんなKaleはこう話し始めた。

2014年4月、その頃のHudson Valleyではミートアップが明らかに必要とされていたが、まだ存在していなかった。デザイナー、エンジニア、起業家がつながり、一緒に仕事をするためにミートアップが必要だった。私は当時10年ほどWeb系の仕事をしていたというのに、Hudson ValleyでWeb開発に携わる人をほんの一握りしか知らなかったのだ。そこでDan Stone(私のビジネスパートナー)と私はSchutzsmith夫妻(地元のもう一つのIT企業Digital Empireの創業者)に電話をかけ「Hudson ValleyでTechミートアップが必要だよ!」と告げると「ちょうど同じことを考えていたところだ!」と返ってきた。もうためらいはなかった。

Hudson Valleyは地形的に地域が川で隔てられている。そのためミートアップは河を挟んで交互に開催することは早い段階から決められていた。それぞれの地域の要衝であるキングストンとポキプシーという2つの開催場所で交互に開催すれば、交通の便もよく、誰もが利用しやすい。(余談だが、ドラマ「フレンズ」のこのエピソードにポキプシーが出てくる。)

ミートアップの名称決めは、思ったほど簡単には進まなかった。Kaleと他の3人のオーガナイザーはいくつかの名称をボツにしたが、最終的には数時間ほど川を下ったところで開催される49,000人ものメンバーを擁するNew York Tech Meetupを真似た名前に落ち着いた。

彼らは私たちが目指す憧れの存在だった。毎月のミートアップで800人も人を集め、Techミートアップをスポーツショーへと進化させた。彼らを都会のネズミと例えるなら、私はHVTMを田舎のネズミにしたかったんだ。だから、より近しい名前にしたんだ(他に挙がった候補と比べると気の利いた名前ではないが)。

Kaleは、コミュニティを立ち上げる上で一番重要なのは人であると断言していて、早くからサポートしてくれた人たち(相談に応じてくれた人、登壇者、参加者など)を大切にしている。さらに新しいコミュニティを立ち上げる際には、支え合い信頼できる共同オーガナイザーが必要だと言っている。

Techミートアップやコミュニティを始めるのであれば、必ずコアチームを形成すべきだ。コアチームがなければHVTMをここまで長く存続させることはできなかっただろう。1人や2人の力では難しい。適切なチームを形成し、時の経過と共にチームを拡大していくことが、ミートアップ持続の鍵となる。
チーム全員が何かしら活動の一端を担うことができれば、バーンアウトを避けることができる。バーンアウトは絶対に避けなければならない。Techイベントを開催するという一見楽しいことであっても、燃え尽きてしまうのは意外と簡単だ。過度の義務を与えてしまうとプレッシャーになってしまうが、そのような状況は避けなくてはならない。周りの人に頼り、周囲の声を聞き、コミュニティの助けとなる優れたアイデアを彼らに発展させてもらうのだ。

体制や責任を設け、序列を避けよ。合意を得た上で決断せよ。このショーは誰一人のものでもない。皆のものなのだ。

ミートアップを設計する

個々のデザイン/Techミートアップは、参加者のニーズや興味に応じて異なった構成となる。例えば、New York Tech Meetupでは様々なスタートアップの短いデモが実施され、その後にコミュニティの懇親会が行われる。

Hudson Valley Tech Meetupでは、1時間の交流会の後に20分のセッションが2~3回開かれる。さらに各セッションの間では参加者が何かしらの発表をする機会を担っていて、初対面の人と交流する時間にもなる。Kale氏曰く「皆が交流できるように仕向けている」とのことだ。ミートアップ後にはHudson Valley Tech Meetupのメンバーで地元のレストランやバーへ二次会に出掛けることもしばしばだ。

ミートアップを開始するのであれば、これらの構成を真似てもいいし、全く異なる構成にしてもいい。新たにコミュニティを立ち上げるHowto本みたいなものは見かけないが、しいて挙げるなら、Brad Feldの『Startup Communities』が参考になるだろう。

Hudson Valley Tech Meetup
200人以上が参加した1月のHudson Valley Tech Meetupのキックオフ。

越えなければならない壁

ゼロからコミュニティを立ち上げるのは簡単ではない。やるべきことがたくさんあるし、20%の人間が80%の仕事をこなしている。コミュニティを発展させようと行動できる人は、同様に他のことにものめり込んでしまう人たちだ。

Hudson Valley Tech Meetupで最もチャレンジングなことは、本来のビジネスから離れてミートアッププロジェクト用に時間を確保することだった。私たちのコアチームはみな、数人から十数人ほどの社員を持つビジネスを展開している。それは大事なビジネスであるし、一般的には常にそのビジネスに時間を費やすはずだ。

Kaleはこの壁についてはあまり考えず、むしろ恩恵として捉えているようだ。

やっぱり好きだからやってるんだ。名を伏せて協力してくれている人でも、イベントの企画や運営に夢中であたってくれている。完璧にするためにまだ足りないことがあれば、迷わずやるだろう。唯一面倒なことといえば、コミュニティを継続させるための資金の確保だけど、それ以外は、今や大きくなったHudson Valley Tech Meetupの素晴らしいメンバーたちと毎回新しい冒険に出る様な気分だよ。

地域の特色を組み入れる

地域には特色があるもので、ある1つの地域でうまくいったことが、他の地域の気質に合うとは限らない。Hudson Valley固有の時代背景が、どのようにミートアップの発展を特徴づけているのかKaleに聞いてみた。

Hudson Valleyは生活したり、仕事をしたり、遊んだりするのに適した場所だ。私は1990年代後半にキングストン(ハドソン川沿いにある小さな町で、この地域の中心地である)に引っ越してきた。ここは自宅と仕事場が徒歩圏内で、私生活とビジネスを一体化できる理想の場所だったんだ。一方キングストンは発展を求めていたし、エネルギッシュな新しい住人に受け入られること、形作られることを切望していた。私たちには活力があり、同じ立場で物事を考えられる貴重な友人やクリエイティブな同僚たちと一緒に、コミュニティを作り上げていきたいと思っていた。
私と近しい状態の人は、様々な地域で見つけることができるだろうし、そうした人々の多くはコミュニティを良くさせるためにテクノロジーを利用している。Hudson Valley周辺で言えば、住民たちは家族やアート、コミュニティを中心とした生活の質を優先している。もっと積極的なキャリアパスを描きたい人であれば、街へと出て行っていると思う。私たちの多くは、過去にそうした経験を経て今に至っているか、あるいは初めから挑戦的なキャリアは望んでいないかのどちらか。
Hudson ValleyでTech業界で仕事をしている人は意識的、もしくは無意識的にコミュニティやオープンスペース、地元の料理などの、より穏やかな生活スタイルを追求している。この特徴は、私たちのTechコミュニティによく現れていんだ。
昨年最もよく話されたのは、様々なタイプのコミュニティプラットフォームについてだった。その他では、地元で採れた食材を、燃料をなるべく使わず如何に直接人々に届けるかだったり、それらに必要とされるテクノロジーについて。また、多くの社会企業家のソフトウェアに関する議論や都市再生に関する話だったり、IPOに向けたアイデアなんかよりも人の役に立てる技術の方がワクワクするよね!といった話が多いね。

コミュニティの残すもの

Kaleの言葉をまとめると、新しいコミュニティを始めることは、とてもチャレンジングであるし、また十分な恩恵を受けるということだろう。また、関係性を築くこととコミュニティを強化することの有効性は、Hudson Valley Tech Meetupの長期メンバーの一員として断言できるものがある。Hudson Valley Tech Meetupは、地域の姿に合わせて運営されているが、逆に地域自体も再建されて始めている。例えば、地元の自治体やコミュニティリーダーが教育の専門家や投資家と連携し始めるなど、影響を受けなかった者はもはや誰もいない。Techコミュニティは、ちゃんとその形跡を広い地域に残しているのだ。

このようなコミュニティを運営する上で、最も満足感の得られるポイントとしては、偶然の出会いだったりアイデアの他家受粉によって得られる変革を、目の当たりにできることだろう。Kaleも同様に感じているようだ。

人との繋がりや関わりを楽しめる人であれば、どの地域でデザイン/Techコミュニティを立ち上げても楽しくやりがいを持って進められるだろう。私の場合は基本的に外向的な人間なので、他の人と関りや共感を持ったり、他の人から学んだりすることは素晴らしい経験だった。定期的にTechコミュニティを開催するのであれば、そこに共感できる仲間を最低でも1人、チームに入れるべきだろう。私は、Hudson Valley Tech Meetupによって人々が連携しあったり、何かを成し遂げたりするのを拾い出したい。多くの人がそのことにワクワクしているし、サポートしたがっている。彼らがいいアイデアを持っていて、それを完遂させようとするなら、彼らは助けられるべきだ。

そう昔のことではないが、Kaleが、投資家であるBrad Feldが執筆した『Startup Communities』を読むことを勧めてきたことがある。この本は起業家エコシステムを街で作る方法だったり、Brad氏自身のコロラド州ボールダーでのTechコミュニティでの立ち上げについて書かれた本だが、この本を読んで証明されたポイントがある。私たちがHudson Valleyで経験したことの多くは、彼のボールダーでの経験によく似ていたのだ。

あなたは目立ったデザイン/Techコミュニティがない地域で生活しているかもしれない。また、周囲でスキルを磨こうとしているのは、自分だけだと感じているかもしれない。それは必ずしも間違いではない。あなたの周りには、同じことを考えている人や、自発的に行動を起こしてくれる人、誰かが何か新しいことを始めるのを待っている人が近くに沢山いるかもしれない。もしこのコミュニティの立ち上げ方が気に入って、こういった活動が自分の地域でもできればいいと思っていたら、すでにあなたはコミュニティを立ち上げる資格を持ち合わせている。行動に移そうではないか。


経験や洞察を共有してくれたKale Kaposhilinに感謝する。彼のインタビューは、記事の長さや明瞭さを考慮して要約また若干、再構成している。
Kale KaposhilinDan StoneDaniel Schutzsmith、そしてSabrina Schutzsmithが行うHudson Valley Tech Meetupの活動に感謝する。
掲載した写真は、2016年1月に行われたHudson Valley Tech MeetupでDaniel Schutzsmithによって撮影された。