「最も優秀な人材」は採用するな

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人材採用は業務の中でも特に重要なものだ。会社の中で輝ける人材であること、多様性をもっていること、デザインをツールとして考えられることなど、デザインコンサルティング会社で学んだ「人材採用の教訓」をご紹介する。

4年前、Adaptive Path社を退社するにあたって、そこで勤務した10年以上の間に学んだことを何通かのメールにまとめ、残る社員に宛てて送信した。最近そのことをふと思い出し、あの時苦労して得た教訓は、今でも他の人と共有する価値があると考えた。以下がそのメールだ。


最も優秀な人ではなく、会社に最もふさわしい人を選ぶ

現在当社は超積極的に、人材採用活動に取り組んでいる。とてもわくわくする。人探しや新人採用は、特に好きな活動だ。人と話すのが好きだから。応募者が興味を持っていること、問題解決に取り組む姿勢、目指しているものなどを把握したうえで、その人を私たちの会社に迎え入れることが正しいのかどうかを見極めるようにしている。社員の採用となると長期間のコミットメントとなる場合も多いので、それなりの覚悟が要る。しかし正直なところ、業務の中で人材採用のプロセスは、他に類を見ないほど重要なものなので、この活動に時間と労力を掛けて、私たちが最善を尽くしていることを確認する価値は大いにある。

採用についての私の基本方針はこうだ。最も優秀な人ではなく、当社に最もふさわしい人を選ぶ。デザイナーとして優秀というだけでは満足できない。Adaptive Pathの組織の中で輝ける人でなければならない。

ここで判断が難しいのは、当社の組織は常に変化している点だ。従って、その時必要な人間のタイプは、状況によって変わる。われわれが求めているのは、深い思考ができる戦略立案者なのか。プロトタイプを作る職人タイプか。それとも、話したり書いたりして周りの人と何かを共有するコミュニケーション能力に長けた者か、ということだ。

なお私は、相補性という考え方があまり好きではない。どの会社もみな同じような組織になる必要はない。多様なスキル、能力、経歴、物の見方があったほうがいい。職業上の経験であれ個人的な経験であれ、幅広い経験も欲しい。多様性こそ最も重視するべきものだ。特に当社で取り組むような事業の全体像を描くには、総合的な思考が必要だからだ。

当社Adaptive Pathでは、デザインに対して情熱的な人を採用しようと私は思ったことがない。そんな態度は、カタチに捉われ過ぎた、ただの自己陶酔につながると思うからだ。私がいつも探しているのは、「デザインで世界をどれだけ変えることができるか」を熱心に考える人だ。デザインはツールだ。それ自体を目的にするものではない。

Adaptive Pathが成功を収めるための決定的要因、また課題に対して他とは違うアプローチで取り組む当社独自のスタイルは、このような多様性を評価するところに端を発していると私は考える。こんな当社の素晴らしいところは、問題解決のために案外、デザイン以外のツールを使う点にある。直近の2年間に私が世に送り出した作品の中で、個人的に気に入っているのは、SKTトレンドマップだ(高さ約180センチメートルのポスターで、ほとんど言葉で埋め尽くされている。メディア業界の進化の様子を時系列に正確に記述したものだ)。問題を解決するには正しい方法だったが、「デザイン」と言われて人々が一般的に思い浮かべるものとは程遠い。

これ以外で、周りに影響を及ぼすことに情熱を傾ける人を見て学べるのは、そんな人々は他人とのつながりを幅広く求める傾向もあるということだ。彼らはコミュニティに対して、語りかけ、手紙を送り、対話することを望む。この種の人々は、心に抱いたビジョンに突き動かされて、そうした行動に出る。

他人の一風変わった部分を見て、ひるんではいけない。当社はコンサルティング会社なので、クライアント側の人々がわれわれにどんな態度で接してくるのか、注意深く見ていることが多い。ちょっと変わった言動を見せる人がいると、こちらもつい身構えてしまう。でも、風変わりなのは大好きだ。私は変わり者たちに助けられてきたし、Adaptive Pathも随分助けられた。多少の奇抜さは受け入れよう。

人材募集にあたっては、受け身にならずに積極的に行動に出ることを提案する。直近の募集の際、私は自分のメールフォルダをあさって、以前面接に来た人たちを探し、現在も連絡が取れることが確認できた何人かに対して、改めて以下のようなメールを送った。「しばらくぶりです。今も当社に関心を寄せておられますか。現在こんな素晴らしいポジションを募集しているのですが、いかがでしょうか。あなた自身が応募できない場合は、どなたか適切な方を紹介していただけませんか」このメールがきっかけで以前の応募者と連絡を取り合ううちに、素晴らしい候補者に出会うことができた。

さらに、LinkedInも活用しよう。これは役に立つ。無料会員のままでも十分だ。


Adaptive Pathを退社してからもう4年になるが、私のやり方は今も全く変わっていない。今付け加えることがあるとすれば、「候補者を見て『何か違う』と感じた時は、その直感を信じて、採用は見送った方がいい」ということだ。というのも、面接時に私が「この人はいける」と感じても、最終的に断られたことがある。しかし私が悪い予感を感じた時に、それが裏切られたことはない。私の印象に反して(直感以外の論理的根拠があったために)当社に迎え入れた人で、採用してよかったと思ったことはない。