知っておくべき5人のメキシコ人デザイナー

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20世紀初頭、フリーダ・カーロ氏やディエゴ・リべラ氏を生んだメキシコは、優れた芸術家を輩出する国という評価を受けるようになった。その伝統を受け継ぐ現代の素晴らしい5人のメキシコ人デザイナーをご紹介する。

本記事は、注目すべき才能あるデザイナーに光を当てる機会というだけではない。昨今のメキシコのデザインの一般的な特徴、即ち鮮やかな色調、大胆なパターンやシンボルの使い方などを広く普及させることに貢献した人々と、メキシコ国内で、その伝統の枠を破って活躍してきた人々の両方への理解を深める機会でもある。ぜひ彼らの世界を堪能してほしい。

Luis Pinto

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Luis Pinto

メキシコで生まれ育ったLuis Pinto氏は、スケッチからコンセプトの構築まで手掛けるデザイナーだ。作品は魅力的で見る人をわくわくさせるものだが、時として奇抜なものもある。

彼の作品には、メキシコのグラフィックデザインによくみられるモチーフが多用されている。背景を鮮やかな色で平面的に塗りつぶし、そこへカラフルな主題を置いて、コントラストをくっきりと出す。Pinto氏はこのコンセプトを究極まで突き詰めて、ここに挙げた作品では、白い部分を残さず、濃く深く鮮やかな6色だけを使っている。

また、Pinto氏の作品に使われる、メキシコらしいデザインを象徴するもうひとつのモチーフは「炎」だ。ここに挙げた作品では、手のひらの中央に置かれている。Pinto氏はデコレーションやパターンの作品で、いつも火のモチーフを使うが、これは彼がメキシコ文化からインスピレーションを得ていることを表しているのかもしれない。

Lourdes Zolezzi

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Lourdes Zolezzi

Saul Bass氏、福田繁雄氏、Paul Rand氏など、歴代の偉人たちの影響を受けつつ自分の仕事をするのは容易なことではない。女性のグラフィックデザイナーともなればなおさらだ。

Lourdes Zolezzi氏には間違いなく、前述のデザイン界のレジェンドたちへの意識が感じられる一方、その作品には、彼女ならではの主張も強く表れているので、ぜひ注目しておくべきだ。

Zolezzi氏の作品は、カット&ペーストの使い方、不安定な形状、構成のスタイルが特徴的だ。想像力をかきたてる、強いコピーが添えられていることも多い。彼女の作品のテーマは、メキシコ文化に直結しているわけではないが、鮮やかな濃色の背景が彼女の作品の根幹となっている点は特筆すべきだ。

この特徴が、上記のデザイン界のレジェンドの影響によるものか、メキシコ文化に由来するものかは、恐らく人によって解釈が分かれるだろう。いずれにせよ、彼女の作品にはそうしたものからの影響が見て取れる。

Rafahu

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Rafahu

Rafahu氏はメキシコシティ在住の大物イラストレーターだ。名前を覚えておく価値はある。特に同じくイラストレーターとして活動している人たちには注目してもらいたい。文化的に、彼の作品に現れているメキシコらしさとは、祭りのような暖色系のカラーパレットだ。赤系と黄系の色が中心で、緑系と青系の色がアクセントとして少し使われている。

加えて、彼独特のスタイルという評価が定着しているが、Rafahu氏は恐らく、メキシコでよくみられるパターンをベースとする派手なデザインを好むのだろう。ここに紹介した例では、愉快で素敵なロボットが、赤と黄色の点、ストライプ、ジグザグ、シェイプなどで彩られている。

Rafahu氏の感性には、メキシコらしさがうかがえる部分が幾らかあるものの、だからと言って、その点にこだわっているわけでもなさそうだ。彼のスタイルはシャープでデジタル、そこへわずかにリアリティが加わっている。Rafahu氏は、背景を塗りつぶすのではなく白以外の色で構成し、光と空間のニュアンスを探求している。

ここに紹介する作品では、薄暗い地下のような雰囲気の、少しほこりっぽい場所に置かれたロボットが、うっとりした表情を浮かべている。ロボットとそれを取り巻く全てが、はっきりしたコントラストを成している。

Orlando Arocena

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Orlando Arocena

メキシコ人デザイナー、Orlando Arocena氏は鋭い作風が持ち味だ。Arocena氏もスケッチから取り組むが、レイヤーを積み重ねていくタイプであり、仕上がった作品を見れば、そのスタイルは一目瞭然だ。はっきりした色使いと多くの次元の重なりを感じさせる、デザインの達人だ。

恐らくLuis Pinto氏と同様に、メキシコの視覚的文化要素を表現することにこだわりがあるのか、彼の作品にはメキシコの古代文明を感じさせる、何かの意味を象徴するパターンが含まれる。メキシコ文化を表す、サボテンと花を抽象化したものが、シンボルとして含まれている。そしてメキシコ国旗の中央に描かれている鷲のモチーフも使われている。

Eréndida Mancilla&Manolo Guerrero

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Eréndida Mancilla & Manolo Guerrero

最後に紹介するのは、2人のメキシコ人デザイナーのコラボレーションで、グラフィックデザインスタジオを運営しているBluetypoだ。

その2人、Eréndida Mancilla氏とManolo Guerrero氏がメキシコのグラフィックデザイン界で有名な理由は、彼らがメキシコの芸術やデザインの象徴的な要素、すなわち幾何学模様、パターン、暖色系のカラーパレット、明色で平板に塗った背景などをベースとしながら、これらを洗練度の高い、ミニマルでモダンなデザインに落とし込んだことだ。これが現在のデザイン界で高く評価されている。

ここで彼らを紹介するに当たって選んだこの作品は、政府当局が学生たちを銃で制圧した「トラテロルコの虐殺」をモチーフとしたもので、彼らのメキシコ人としてのルーツを強調している。また同時に、メッセージ性の強い、ミニマルなスタイルもよく表現されている。また彼らは、メキシコの代表的なアーティスト、フリーダ・カーロ氏のトリビュート作品も制作している。

まとめ

ここまでに見て来たとおり、明るい色合い、陽気な暖色系のカラーパレット、背景に白を残さないこと、幾何学模様、シンボルの活用は、メキシコのグラフィックデザインの典型的な特徴だ。現在の私たちはデザインのるつぼの中で生きているにもかかわらず、本記事で紹介してきたデザイナーたちの多くは、メキシコ人であるというテーマをベースとして、意識的であれ無意識的であれ、それぞれ彼ら独自のひねりを加えて、作品を仕上げている。彼らはまた、私たち見る者に対して、デザインは、デザイナーが生まれ育った環境からどれほどの影響を受けるのかと思わず自問する、コンテクストも提供してくれている。


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