映画タイトルデザイン傑作選

Source

ニューヨーク在住。
ブランディング、タイポグラフィー、デザイン史などについて執筆。

アカデミー賞でもっと評価されるべき、映画タイトルデザインの名作をご紹介!

2016年のアカデミー賞授賞式が2月29日(日本時間)に行われ、映画業界のアーティストを全24部門に分け、その栄誉をたたえた。今年で第88回目を迎える式典だが、残念なことに、今年もグラフィックデザイナーが壇上に上がることはなかった。

映画の中でグラフィックデザインが脚光を浴びるのは、タイトルシーケンスの部分だ。サイレント映画が主流の時代は全てのセリフが字幕だったため、グラフィックデザインは映画制作のもっと中心的な位置付けにいた。

アカデミー賞で初めてグラフィック要素の重要性を認められたのは1929年のことだ。『The Red Mill』のエレガントで読みやすい活字書体とアール・デコ調の大文字が観客に心に響き、タイトルをデザインしたJoseph Farnhamが新しい部門となる「タイトルデザイン賞」を受賞した。

しかし、トーキー映画の時代が訪れ、グラフィックタイトルの役割はオープニングクレジットシーケンスへと縮小する。結果として、新しく創設された「タイトルデザイン賞」は一度きりで姿を消すこととなった。

しかし、うれしいことにタイトルデザインは1960年代に完全復活を遂げる。新しく普及したカラー映画や鮮やかなグラフィックデザインが流行したおかげで、本来の力を取り戻すことができたのだ。Saul Bassが現代的なクレジットを披露したAlfred Hitchcock監督作品『North by Northwest (1959年公開、邦題:北北西に進路を取れ)』や、Maurice Binderがジャズの要素を盛り込んだシーケンスを作った『DR. NO (1962年公開、邦題:007/ドクター・ノオ)』が登場して以降、時代の流れはすっかり変わった。

しかし、この2人も彼らに続いた、Pablo FerroRichard GreenbergKyle Cooperなどの継承者たちも、未だにアカデミー賞で評価されたことはない。

グラフィックデザインにとって、現在のアカデミー賞で一番重要な瞬間は、作品賞ノミネート作品の紹介をするシーケンスが流れる時だ。過去2年間、デザイナーHenry Hobsonによる見事な作品が使われている。

2014年に彼が作ったシーケンス(上の動画)では、レトロな映画ポスターを彷彿させるカラフルな色彩やタイトルの下の小さな活字が再現された。2015年の作品(下の動画)では、ポスターで使われたモチーフは排除され、代わりに各映画特有の美的要素を反芻させるアニメーションが制作された。

このシーケンスのクオリティーが示すように、Hobsonは新しい世代のデザイナーだ。新しいツールを通し、1960年代に活躍した先人のようにタイトルデザインに新たな活力を与えた。

多くの人が、クリエーティブエージェンシーImaginary Forcesがデザインワークを手がけたDavid Fincher監督作品『Se7en (1995年公開、邦題:セブン)』によって、シーケンスデザインが活気を取り戻したと考えている。

また、この年はジェームズ・ボンドシリーズでも新たな風が吹いた。Daniel Kleinmanが制作した『GoldenEye(1995年公開、邦題:007/ゴールデンアイ)』のクレジットシーケンスはCGを駆使した歴史的な作品となっている。

次に続く衝撃的な作品はSteven Spielberg監督の『Catch Me If You Can (2002年公開、邦題:キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン)』だ。この作品では完璧なまでのレトロ感が演出されている。更に『Blue Valentine (2010年公開、邦題:ブルーバレンタイン)』では花火を効果的に使い、暗闇の中でイルミネーションのように静止画が映し出されていく作品が作られた。

その後、門戸は大きく開かれてきた。映画だけでなくテレビにも活躍の場を広げ、今がその最盛期となっている。2015年に発表された、2つの傑作をご覧いただきたい。1つは映画『Mission Impossible: Rogue Nation (2015年公開、邦題:ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション)』で、もう1つはテレビドラマシリーズ『The Man in the High Castle (2015年~放送、邦題:高い城の男)』だ。

他にも、近年作成されて評価に値する優れたタイトルシーケンスはいくらでもある(すばらしいリソースを有するWebサイト「Art of the Title」で、それらの作品をご覧いただきたい)。

しばらくその功績がアカデミー賞で取り上げられることはないとしても、世界中のデザイナーやデザインを愛する人々によってその真価が評価され、今後も更なる成長が続くはずだ。


▼99designsのデザイナーブログをもっと読みたい方はこちらからデザイナー登録!
http://99designs.jp/designers