GoogleがWebフォントを無料で提供し続ける理由 — Google Fontsリニューアル[前編]

Source

ニューヨーク在住。
ブランディング、タイポグラフィー、デザイン史などについて執筆。

Googleは2010年にGoogle Fontsを開設し、Webフォントの無償提供を始めた。その後ほんの数年でGoogle Fontsは著しく成長し、今やWebデザイナーであれば利用しない理由はもはや無い。

当初のGoogle Fontsは、スタートアップ界隈で言うところのMVPと呼ばれるもので、利用するのに必要十分ではあるが、必要最低限のプロダクトだった。あまり洗練されているわけではなかったし、特に使い易さの面では褒められるものではなかった。しかしGoogleにおけるデザインの気運が高まるにつれて、いよいよUI/UXの本格的なリデザインが必要と判断された様だ。

improving google fonts
アイコンが分かりにくい、など
google fonts リリース版
Google Fontsリニューアルに向けたモックと、そのリリース版, via Google

そもそも、Webフォントとは?

インターネット時代の幕開けとなった1996年頃、当時Webデザイナーが使えるフォントといえば、全てのパソコンにインストールされている共通のわずかなフォントだけだった。もし訪問したWebサイトに独自の書体を使おうものなら、思った通りの表示がされないか、もしくはユーザーにすぐにその場で別途フォントデータをダウンロードしてもらわなければならない。これは非常に回線の遅いダイアルアップの時代ではあり得ないことだ。

そのためMicrosoftはインターネットのフォント環境を改善させようと、各種フォントを無償で配布することを決めた。これにはArial、Times New Roman、Verdanaなどが含まれ、Webデザイナーが使える書体の種類を増やした。これによってWebサイトの見栄えはいくらか改善されたものの、大抵同じような書体ばかりが目立ち、結局それよりユニークな文字表示を望もうとするなら画像に頼らざるを得なかった。

2009年、CSSに@font-faceが実装されるとようやく状況は変わり、Webサイトの訪問者の手を煩わせることなく、すぐにフォントデータをダウンロード、表示出来るようになった。このCSSとやり取りするフォントが、Webフォントと呼ばれるものである。

Adobe Typekitと、無料のGoogle Fonts

@font-face革命のおかげで、幾つかの月額Webフォントサービスが立ち上がった。これらは有用なWebフォントを揃えており、その多くは書体を供給する大手フォントメーカーと提携し配信している。中でも最大となるものがAdobe Typekitだ。

その頃、インターネット大手GoogleはAdobe Typekitに負けないよう、同等のサービスを無償で提供することに決めた。そう、ライセンスフリーなのだ。無償とは、Google Fontsに挙がっている全ての書体がオープンソースで、Webページのどこに使っても良いというだけでなく、商用利用、営利目的でも使って良い。しかもTypekitと異なり、自分のコンピュータにフォントをダウンロードし、自分でデザインを微調整することも出来る! さらにGoogleの圧倒的スペックのサーバを使えば、ダウンロードはそれこそ一瞬で終わり、Google Fontsを使うWebサイトでは確実に良い体験が提供できる。

そんなことをタダで提供するGoogleは、何の得になるのだろうか? 当然、彼らは単に良心から行っているわけではない。

Googleの狙いとは

TypewolfのJeremiah Shoaf氏によれば、その1つは文字の代わりに画像を使うことを止めさせたいというものである。画像ではGoogleの検索アルゴリズムとしてインデックスを付けられないためだ。もう1つは、ブラウザキャッシュをうまく利用し、ページの表示速度を上げたいというものだ。ユーザが一度あるWebフォントをダウンロードすれば、それ以降同じフォントであれば、異なるサイトであっても高速で表示される。Google自体、Google Fontsを自社のプラットフォームで使っているので、多くのユーザーが既にGoogle Fontsのキャッシュによる高速化の恩恵を受けられる前準備をしているのだ。

Googleは、インターネット企業である。インターネットがより速くより魅力的になることで利益が得られる立場にあるのだ。

無料のGoogle Fontsがあるのに高価なTypekitを使う人がいる理由

6年という月日の中で、Google Fontsはより多くの高品質な書体を提供するに至った。しかしフリーという事は書体デザイナーに利益を還元できないため、Typekitのような量や質は追い求めてはいない。例えば時々、カーニングがひどい書体があったり、フォントの規定のサイズ感がまちまちだったり、あるいは美的センスがイマイチの書体に遭遇したりするかもしれない。一方Typekitには、はるかに多くのフォントがあり、しかもその全てに最高の職人技が見られるだろう。

しかし無料という1点において、Google Fontsはこれ以上なく良い選択肢になり得るのだ。

[後編] 新しいGoogle Fontsの新旧比較もチェックしてほしい。