先駆者は勝利者とは限らない — 長期的成功のプロセス

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「グロースハック」には急速な目標達成が求められるが、本当の成長には回復力と忍耐力が求められる。基本的な2つのマインドセットを軸に、人と会社の「成長の在り方」について考える。(後編)

前編 → グロースハックに求められる「しなやかマインドセット」

スローペースのメリット

ペースを落とし、結果ではなく、目標までの過程を重視することで、自分のやっていることを好きになるだけでなく、なぜやっているのかも理解できる。多くの場合、成果を収めれば成長したと見なされるため、理由についてはほとんど示唆されない。

私自身も過去に、数ヶ月間で雑誌のスタッフライターから編集者のポジションにうまく着くことができたことがある。しかし、編集という仕事の内容を理解せず、経験よりも肩書きがあった方がいいとの理由から編集者になってしまったのだ(結局メール以外に書く作業はほとんどなかった)。

昇進を急ぎ、出世を望んだ。しかし、時間はかけたくなかった。全てを手に入れたいと思ってしまったのだ。これは経験の浅い若いクリエイターに共通する思考である。


一歩ずつ着実に前進する人が成功を手に入れることができる。

しかし、ペースを落として時間をかける意義はあるのだ。

スローペースはむなしさと同じことだと自分に言い聞かせていた。しかし、この考えは間違っていた。最近分かったことは、時間を有効活用すれば、遅さは豊かさの宝庫となるのだ。-  Matt Steel (Grainのパートナーおよびクリエイティブディレクター)

スローペースは難しい状況に陥る前に、能力を研いでアイデアを生み出す機会を与えてくれる。

デザイナーのPeleg Top氏は、休みを取ることで「無になる時間」を作り出し、自分の仕事のペースを落している。まず彼は、毎週金曜日に休みを取ることから始め、最終的には月単位の長期休暇を取るようになったのだと言う。

(休みを取ることで)物事を離れたところから見ることができ、より多くものを生み出すゆとりもできた。金曜日を個人としての成長のために使うことで、仕事人としても成長することができたのだ。

みんなが忙しい状態に陥っているため、多忙だから生産的であると誤解しまう。仕事のために仕事をしていると、賢い方法ではなく、つらい方法で作業を進めてしまうことになるのだ。

別のペースの落とし方としては、BasecampのJason Fried氏とDavid Heinemeier Hansson氏が著書の『REWORK』で書いている、競合相手に「わざと負ける」方法に似ている。

自分を追い込んで長時間仕事をする代わりに、ペースを落として目標達成までの過程を理解してみる。そうすることによって、本来自分が何をするべきなのかが明確になり、解決するべき問題が分かるのだ。

競合相手を倒すためには、競合相手よりも作業を減らすこと。簡単な問題を解決して、困難で煩わしい問題は競合相手に解決してもらえばいい。一歩先に出る代わりに一歩下がる。勝つ代わりにわざと負けてみるのだ。

遅さやわざと負けること、休みを取ることは、現代の文化的通念である、グロースハッキングとは相容れない部分がある。しかし、これらはまさしく成功した人が成功するために取った手段なのである。

先駆者の優位性は存在しない

もし、自分を向上させることがペースを落とす理由にならないのであれば、会社のためにペースを落してみるのはどうだろうか。

これをAppleが会社として最初に導入したことはあまり知られていないが、実践されていることでは有名である。市場に出す前に、じっくりと時間をかけて完璧な製品を完成させているのだ。

iPodは市場に出た最初の携帯用MP3プレーヤーではない。しかし、最も成功したMP3プレーヤーではある。同じくiPadも最初のタブレット式端末ではない(iPadはAppleが出そうとした最初のタブレット式端末でもない)。それでも市場を独占できたのは、事前に時間をかけてデューデリジェンスを実施したからだ。

プログラミングとインタラクションデザインの先駆けであるAlan Cooper氏は次のように言っている。


「先駆者の優位性」なんてものは存在しない。だが、「最初の勝利者の優位性」は存在し、それが先駆者と錯覚されてしまうのだ。

Pinterestも成長を駆け上がるのではなく、ゆっくりと結果を出すまでの過程を理解することを受け入れた会社の良い例である。

FacebookやTwitter、Quoraの成長に携わってきたAndy Johns氏が、Pinterestの成長について考えを述べているが、そこで、Pinterestの遅い成長を褒めている。

あまりにも早い段階で強引な成長を重視し過ぎると、特に世に出せる製品がないと、大抵すぐに失敗してしまう。それは、多くのユーザを高い解約率と低い顧客維持率で獲得することになるからだ。反対に、素晴らしい製品を作成し、基本的な採用を行ってから強引な成長を試みれば、それが成功への近道になる。

自分の人生とキャリアにおいて、一番乗りになりたいのか一番になりたいのか考えてみてはどうだろうか。

遊びでしかバスケットポールをしたことがない人にとって、NBAで試合をするだけの心構えができていない場合が多い。しかし、疑念を抱いていたとしても有名になれる(さらには高額の給料をもらえる)という誘惑に普通は勝てない。

すぐに得た名声が長続きする人もいるが、全ての人に当てはまるわけではない。一番乗りだからといって一番でもあることはほとんどない。でも、ペースを落として目標達成までの過程を楽しめば、確実に成長し続けることができるのだ。

パフォーマンスではなく日々の行いを重視すれば、今を楽しむことができ、同時に能力を伸ばすことができる – James Clear氏



画像出典:Dustin ScrpittiBrainpickings.orgGrégoire Hervé-Bazin

この記事はblog.pickcrew.comに掲載されたものです。