Siriを超える生身の人間と人工知能の融合?「アシスタントアプリ」の可能性

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心理学とテクノロジー、経営学を中心に執筆、教授活動を行っているコンサルタント。
Hooked: ハマるしかけ』著者。

新作映画「Ex Machina」では、引きこもりの億万長者がロボットの人工知能を発明し、若いエンジニアがロボットに恋に落ちるかどうかを実験する。

今日、ロボットはSFではなく、ビジネスとなった。事実、スタートアップの波は、我々がもはや人間と話してるのかコードと話しているのか分からないほど生活を劇的にシンプルにしようとするトレンドの一部である。

前回の記事で、私はいかにそのようなサービスを使うかを議論したが、もう少しこのトレンドについて深堀りしたい。新しいテクノロジーと人間のアシスタントのペアリングがたくさんの新しいプロダクトを生み出し、いかに生活を向上させるかについて考えよう(ロボットが完全に人間を支配する日が来るかもしれないが。。。)

メッセージというメディア

日頃、私はSlackで同僚と話し、WhatsAppかFacebook Messengerで友人からメッセージをもらう。そして、帰宅途中に古き良きSMSを使って、妻に帰りを知らせる。

これらの会話から欠如しているのは交流だ。メッセージングは互いにコミュニケーションするためのものだが、ビジネスでのコミュニケーションとは今も昔も違う。

人間がコミュニケーションする全ての方法のうち、テキストメッセージは最もダイレクトなツールだろう。他のメッセージツールよりは、余計な情報をなるべく減らして送る。テキストの他には、聞き取り難いイントネーションや分かりにくい発音がなく、解釈する表情もなく、読み取るジェスチャーもない。テキストはコンピューターが理解しやすいものであり、早く処理しやすく、だからこそメッセージングは人間と人工知能が需要を満たすための共同作業をするために最適のツールなのだ。

「会話の交流」「見えないアプリ」といった言葉はWeb上で最近騒がれているが、どちらも私が考えているものとは異なる。

代わりに、ユーザーがアシスタントとの自然な会話で複雑なタスクをこなせるインターフェースをもつ「アシスタントアプリ」を提案する。

そのアシスタントは必ずしも常に人間である必要はない。アシスタントは人であっても、適切なときに自動スリプトを使ったメッセージやリマインダーを送れればいいのだ。それは複数の人間が1人のペルソナを経由してユーザーと関わりをもつことでもいい。もしくは、行き詰まった時だけ人間のヘルプを頼んでくれる人口知能でもいい。

例えば、Vida Healthを使って食べたものを記録するときにはMindyがいて、TimはNativeで旅行の予約をしてくれて、AmyはX.aiをつかってミーティングの管理をしてくれる。しかし、それぞれから連絡をもらったとき、人間かロボットかの区別はつかない。アシスタントアプリでは、メッセージの送信者はbotであったり本人であったりし、必ずしもいつも明確ではない。

カリフォルニアロール・ルール

アシスタントアプリのインターフェースによって、人々はインターネットをさらに活用することができる。チャットのように見えるため、インタラクションは親しみやすく感じられる。前回の記事で指摘したように、人は全く新しいものは求めない。慣れ親しんだことをできる異なる方法が欲しいのだ。(カリフォルニアロール・ルール参照)

会話アプリのインターフェースの魅力は、ユーザーに新しいことを学ばせないことにある。我々はすでにチャットの仕方を知ってるから、要求を送ることは簡単だ。アシスタントアプリは複雑な技術を使うためによく訓練を積んだ人を活用する。そのアシスタントは、時間がかかる分析や、素人が持っていないであろう知識や忍耐力のいるプロツールなど、いずれ必要となる複数のステップの要求を処理することができるのだ。

アシスタントアプリが役立つ3つのケース

1. 1つのゴールに対して、たくさんの選択肢があるとき

グローバルメディアエージェンシーのCaratによる最近の調査によると、41%の人はネットショッピングで購入するための選択肢の多さに圧倒されてしまっている。

例えば飛行機の予約をする時、お客さんは「最もお得なチケットを買う」という1つのゴールしかない。ややこしいたくさんの選択肢は不要であり、彼らは「コレ」というものであれば1つしか求めていないのだ。旅行者がネットで予約をする前に、優れた旅行エージェントはその選択肢を狭めてくれるだろう。しかし、今では自分でしなければならない。

エージェントを使わなくなると、我々は自然に安くて質の良いサービスを求める。そして、アシスタントアプリでは、ユーザーは妥協する必要は無くなる。

Nativeのようなアプリでは、旅行者はアシスタントにテキストで「午前9時から午後5時までマンハッタンのミッドタウンでワークショップがある。サンフランシスコからの29日の往復便を予約してくれ。深夜便でも構わない」と指示を送れる。人間のNativeのアシスタントは洗練されたツールを使って選択肢を選び、最適な2~3つのオプションを返せる。

アシスタントアプリは検索が好きな人や、主観で最適な手段を選ぶ人には向いていない。例えば、ほとんどの人にとって服を買うこと自体は楽しい。最適な選択肢を教えらえることはそれほど役立ちはしないだろう。

しかし、特に企業で使う場合は、ユーザーはたくさんのオプションを捨てていかなければいけなくなり、アシスタントアプリを使う機会が増える。将来、サイトの集客を上げるためのやクーポンキャンペーンを立ち上げるためのマーケティングキャンペーンの運営など、複雑なタスクがアシスタントアプリによって処理される未来を想像できるだろう。忙しいユーザーにwebの複雑なインターフェースを使ってもらうより、アシスタントアプリが最良の選択肢を提案してくれるのだ。

2. データ収集は簡単だが、分析が難しいとき

アシスタントアプリは特に分析の作業をするときに便利だ。例えば、Vidaアプリはバックエンドを使って食品アレルギーを診断するために栄養士を活用している。Vidaでは、ユーザーは食事の前に写真を撮るだけだ。そして、アシスタントが悪い反応を起こしている物を突き止めるために食べた物と感じたことを比較する。この種の分析はユーザーにとっては負担だが、プロツールを使う熟練のエージェントには容易いことだ。

このアシスタントは、情報の異なるソースにアクセスできることでより強力になる。ユーザーにとってデータ処理は頭が痛くなるが、アシスタントアプリ会社にとっては良いチャンスなのだ。

例えば、Nativeで旅行の予約をするとき、アシスタントは過去のマイレージを知っていて、数個のプランを提案でき、次回は無料の航空券をもらえるようになる。旅行エージェントが彼のカレンダーにアクセスできれば、会議の前後でフライトの予約ができ、空港までの往復のレンタカーの予約もできるようになる。Nativeからの返信では、「その日の最後のミーティングを決めるのにたっぷり時間を取れる2つのUnitedの飛行機を見つけました。どちらが良いですか?」と聞いてくれる。

企業にとっても、アシスタントアプリは神の手になる。例えばアシスタントがあなたのwebサイトを常にアップデートしてくれたらどうだろう。特殊な技術をもつ人を雇うより、顧客転換率を上げるためのテストを定期的に行える特別に訓練されたアシスタントが最新のツールを使える。面白いことに、これらの企業用ツールはそれほど新しい技術や人工知能を必要としない。リクエストやアップデートはメッセージングのインターフェースで行われるが、全てのテストや数字処理は訓練された人間によって行われる。サイトのオーナーはアクセスを与え、テストを承認し、それに続く良い結果を承認していけば良いだけだ。

複雑なオンラインツールを勉強したり、ダッシュボードを管理することから解放される忙しいスタッフを想像してほしい。アシスタントアプリでは、それが叶えられるのだ。

複雑なインターフェースの他に、アシスタントアプリサービスは小さいスクリーンに適している。顧客はスマートフォン上でドロップダウンメニュー周りを探すのは困難だし、同じことをスマートウォッチで行うのは不可能だ。しかし、スマートフォンやウォッチ上で、簡単な英語でアシスタントアプリで要求を聞かせることは簡単だ。

3. 友達のような関係を求めるとき

会話型のインターフェースでアシスタントと共同作業している時は友達と会話するように感じられる。これらのアプリはアシスタントの偏りのない提案をユーザーが信頼できるときに最もよく機能する。

しかし、友達がお金を儲けるために話し始めると、その策略はすぐにばれてしまう。同じように、アシスタントアプリは価値が客観的なフィルターである定額制のモデルに最も適している。もしNativeが委託を獲得するために特定のホテルを薦めてきたり、Vidaがビタミンを推奨してきたら、すぐに信頼を失うだろう。

他に、友達のように感じれるアシスタントアプリの特徴はインタラクションの頻度にある。友達にテキストを送るとき、返事がくるまでに少し待ちたいだろう。同じように、ユーザーがアシスタントアプリを使う時はすぐ返事がほしい時ではない。最良の選択を選んだり、テストをしたり、データ分析をすることは時間がかかるため、アシスタントアプリは瞬時にフィードバックを返すことに向いてはいない。

誰が人間を求めるのか?

しかし、人工知能による音声認識機能ですでに十分ではないのだろうか?まだそれほどでもない。

GoogleとAppleは100%コンピューターコードでできたSiriのようなバーチャルアシスタントを開発しているが、このような自動化されたテクノロジーは特定のシナリオでしか通用しない。すなわち、ユーザーが単純な質問に対する即座の情報を求めるときだ。反対に、アシスタントアプリは要求が複数のステップを必要とし、人間味のある方が良い時に向いている。

先週、私がクレジットカード会社のサポート自動音声案内に電話したとき、必死に人間と話そうとしていることに気づいた。要件を伝えるのに何回か失敗したあと、機械的で、過剰なロボットのような声で「だ・い・り・に・ん!!」と話していた。

何度もトライしたにもかかわらず、最後に「わかりました。担当の人をお呼びします」と自動音声は答えたが、彼女が「私のクレジットカードの問題」を理解したのか、「ロボットのように話す人間の問題」を理解したのかはわからない。ロボットのように話すことは笑える例かもしれないが、問題がユーザーはマシーンが理解できるように要求を言わないといけないということなのだ。。

今日、それに対しては3つの解決策がある。ユーザーに番号で要件を特定させるか、人間のサポートに転送するか、もしくは最も不快な「会社のホームページを見ながら、自分で解決する」ということだ。

しかし、人口知能の能力が向上するように、アシスタントアプリサービスは代用品を供給できるようになる。人工知能が改善されたように、それぞれの人間の秘書はより多くのユーザーをもつことができるようになるのだ。洗練されてきた技術を使いこなす人間を活用することは、未来のビジネスでの方法となるだろう。このスタートアップが成功したら、誰もがロボットに恋に落ちることだろう。

まとめ

・アシスタントアプリはアシスタントとの自然な会話を通して複雑なタスクをこなすために作られたインターフェースである。

・チャットのように見えるため、会話のインターフェースは使いやすい。(カリフォルニア・ルール参照)

・アシスタントアプリは消費者と企業での使用で拡大が期待されている。

・アシスタントアプリは以下の特定の状況でよく機能する
1. 1つのゴールを目指しながらも、たくさんの選択肢を持っているとき
2. たくさんの選択肢を調べたくないとき
3. データ入力は簡単だが、処理と分析が難しいとき
4. 従来のスクリーンのインターフェースでは複雑すぎたり、小さすぎたりするとき
5. 偏りのない信頼できる提案が必要なとき
6. 要求がすぐには解決される必要がないとき

アシスタントアプリは流行るだろうか?皆さんはアシスタントアプリを使っているだろうか?他にどのようなケースでアシスタントアプリが役立つだろうか?意見があれば聞かせてほしい。



著書
『Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール』