プロボノのすすめ: 社会を変えるデザインの力とスキルアップ

Source

数カ月前のこと、私のおじであるTimは、Illinois州Antiochの中心街にある小さな劇場を再建するプロジェクトを立ち上げた。築100年の劇場が、老朽化して荒れ果て、設備も時代遅れとなったために閉鎖されていたのだ。大規模な改修が必要だったが、それには莫大な費用がかかるとみられていた。

おじは不動産の開発業者だ。私財を投じて、このプロジェクトを発足させた。それでも、おじ1人ではどうにもならない。おじはKickstarterのクラウドファンディングプロジェクトでキャンペーンを展開し、10万ドルの改築費用を調達しようと考えた。

そしてそのキャンペーンのためにこんなWebサイトが作れる人を誰か推薦してくれと、私に言ってきたのだ。

「上手い速い安い仕事が今すぐにできる人を求む。冗談は半分だけです。」

ここまで無茶な条件に当てはまる人物は、私しか知らない。私はプロジェクトの趣旨に賛同し、自分の副業にする価値があると思ったので、(タダで)手伝うことにした。

おじは、マーケティングのネタは幾つか用意していたが、もっときっちりした形にまとめなければ話にならないことは明らかだった。私はこの劇場の過去と未来のイメージをつかみたかったので、劇場の成り立ちを教えてほしいとおじに頼んだ。そしておじの話から得たイメージを元に、ビジュアルのデザインに取り掛かった。私がフォントの書体や色を探してきて、おじと一緒にロゴを作った。

Antioch Theatre logos
ロゴのスケッチはこのとおり。つづりをちょっと間違えている。

続いて、地域の人々に対して私たちのメッセージを伝えるための印刷物のデザインを何種類か作成した。印刷物には、パンフレット、ポスター、そして劇場の正面に掲げた、面積約19平方メートルの大きなバナーも含まれる。

Antioch Theatre banner
これがその巨大バナーだ。

こうしてようやく、私はプロジェクトのWebサイトを開設する一方、おじのTimはKickstarterのキャンペーンを始めて、プロモーションのイベントも幾つか開催する計画を立てた。

プロジェクトでは終始、コピーライティングに細心の注意を払っていた。劇場に長い歴史があることと、この場所で劇場を存続させることは町全体にとって大きな意味があることを、丁寧に説明した。プロジェクトの資金を提供してくれる人たちに、それだけの価値がある出資だと納得してもらいたかったからだ。

まとめると、私は約3週間の間、本業の合間にプロジェクトに取り組み、統一感のあるデザインの掲示物と一貫したメッセージで、強力なマーケティング活動を展開することができた。Antiochの中心街付近ならどこでも、あらゆる店舗のショーウインドーに「SAVE THE ANTIOCH THEATRE」(Antioch劇場を救おう)ロゴのポスターが張られているので、見逃すことはないだろう。

しかしこれだけのプロモーションを展開しても、私たちは資金集めが成功するかどうか、確信が持てなかった。これまで見過ごされていた古い劇場に再び注目する人はいるだろうか。郊外の小さな町のプロジェクトが、Kickstarterで本当に6万5000ドルも調達できるだろうか。キャンペーン開始後しばらくは、募金額が2万5000ドル前後で伸び悩み、もはやこれまでかと思ったこともあった。

でもそれは杞憂だった。その後キャンペーンは予想以上の活況を呈し始めて、終わった時には当初の目標額を2万ドル以上上回る資金を調達していた。おかげでストレッチ目標(当初の想定より少し高めの目標)まで達成してしまい、映写装置を3D対応のプロジェクタにアップグレードすることができた。

こうしてマーケティングを実行して、資金を集めて、劇場が再建できた。めでたしめでたし…なのだが、実はまだ続きがある。私たちのキャンペーンは新しいエネルギーを呼び起こしたようで、劇場周辺の中心街全体を再生しようという、新たな運動が起こったのだ。

これは誇張ではない。私たちが発信したメッセージは、町の有力者たちの心を動かして、中心街全体の再生という新たな取り組みが実現したのだ。また、このメッセージで、多くの人々に「やればできる」という信念を伝えることができた。地域住民は、新しい運動の高い志にも応えることだろう。

これこそデザインの力だ。見る人を勇気づけて、社会をよりよく変えることができる。これは、日頃クライアントからの依頼に応えてデザインしている時や、いつもの決まったテーマに取り組んでいる時、あるいはデザイン以外の仕事を本業としている場合には忘れがちなことだ。

さらに、プロボノ(職業で得た技能を社会貢献活動にそのまま生かす)活動をすると、日常業務の枠を超えて、初めてのことに挑戦する機会が増えるので、結果的に本業のスキルも上げられる。例えば今回のプロジェクトで、私は SketchBasecampについて、これらの製品を全く使ったことがなかった人たちと一緒に、使い方を学んだ。製品の操作を覚える中で、幾つか興味深い課題を見つけた。また、日頃の業務ではめったに使わない機能も活用した。こうして色々な教訓を得たので、私自身のBasecampの習熟度が上がった。

時間とスキルがあるのなら、たまには無償の仕事[^1]を引き受けることを強く勧める。大いに共感できる事業を見つけたら、後押しをしよう。金銭を得ることを目標にしない場合は、普段とは全く異なる要因が仕事の原動力となり、自分でも驚くほどの結果を出せるかもしれない。


Jessicaのチャートは正しい。プロジェクトに携わっても本業とのバランスを失わないように、自分はどこまでやるのか、範囲と限度をきっちり決めて、周りのメンバーに自分の役割を明確に伝えよう。