プロダクトの価格設定に関する5つの心理学的レッスン

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「この値段はいくらにすべきだろう?」

今なお、一部のサークルではお金の話はタブーかもしれないが、あなたの生活が、値付けの戦略を持っていること、自分の仕事の対価を請求することにかかっているという事実は無視できない。

「対価」はいとも簡単に使われる複雑な用語の1つだが、真剣に考えると、実際は極めて入り組んだ言葉なのだ。

労働価値説に従い、「サービスの価値はその製造に注ぎ込んだ労働量によって決まる」と考えた結果、罠に落ちる人は多い。他方には、「価値は買い手が決めるものだ。自分の請求額を誰かが払いたいと思うなら、それが適正価格だ」と言う人もいる。

「ウェビナーが500ドル? 問題ないと思うよ。X社も同じ価格設定だし。」
「ひと月9.99ドル? いいんじゃないの。グルメコーヒー2杯分でしょ。」

しかし、価値に対する机上の理論が想定していないのは、プロダクトの値付け戦略を持たなければ、ビジネスをつぶしてしまう可能性があることだ。

賢い値付けのメソッドは熟考しなければできない。オーディエンスを理解し、ビジネスを構築するために行った全ての仕事を換算し、自分で真摯だと思え、納得ができ、何よりも買い手にとって価値の高い価格を作り上げるメソッドだ。

しかし、どうすればそれを得られるだろうか。その大半はビジネスモデルとリサーチ次第だが、人が値札を見た時に何を感じるかを理解する助けとして、信頼できる研究がいくつか挙げられる。

1. 人は欲しいものを見る

人間が持つ、アンカリング効果という傾向のおかげで、価格の提示では、結局、初めに見たものが欲しいものだと言える。

アンカリング、あるいはフォーカリズムとは、決断を下す際に、最初に与えられた情報(「アンカー」)に強く頼ってしまう認知バイアスを指す。取引の交渉をしたり、その正当性を説明したりしようとしている時、最初に20ドルという価格を見ると、結果的に30ドルよりは20ドルに近い値付けになりやすいのである。

ではこの事実をいかに自分の味方につけるか?

常識に反する事例を挙げると、McKinseyのアナリストは、ある半導体メーカーが新製品を発売する際、(私たちが当然だと思うように)古い製品の価格を下げるのではなく、上げたことに気付いた。そのメーカーは古い在庫を売って追加の利益を得ただけではなく、初期価格を高く維持したことで、新規の買い手も新製品を正規価格で買う傾向が高くなった

相場や価格を上げる際はいつも疑問がわくものだが、初めの値付けが高いほど、結果的にさらに高い価格設定が可能になるのを覚えておこう。

2. 見え方・聞こえ方は極めて重要

価格のプレゼンテーションの仕方がその受け手の気持ちに及ぼす影響については、たくさんの研究がなされている。ちょっとしたニュアンスの違いで、買う価値ありと認識されたり、逆に高いと思われてしまったりする。

私が気に入っている事例をいくつか挙げよう。

  • 「奇」数を選ぼう。古くから言われてきたトリックだが、今でも有効だ。これは「チャームプライシング」と呼ばれ、最上位桁が変化する際に起こるポジティブな感情を指す。私たちの脳は、最初に見た数字で価格をコード化する。そのため、9.99ドルから9.19ドルに変更しても大した影響はないが、9.01ドルから8.99ドルに変わると、突如、価値の認知に変化が生じるのだ。

  • 大声で伝えよう。 『Journal of Consumer Psychology』に掲載された論文によると、消費者にとっては、音節が多い価格ほど、大幅に高く見えることが分かったという。これには、私たちが数字をどれだけ流暢に読めるかどうかが関わっている。「口に出す」のが難しい数字ほど、良くない印象を持たれる。つまり、1,999.99ドル (one thousand, nine hundred, ninety nine, and ninety nine cents)という表記の場合、1999ドル (nineteen ninety nine)という表記よりもずっと高く感じるのだ。音節が多いほど、「高い」と思うのである。

  • 人は物理的に小さな数字を好む。複数の研究が示すのは、ページの下部に価格を配置するほうが、上部に配置するよりも安いと思われるということだ。さらに信じがたいことに、フォントそのもののサイズも、人の認知とそれに対する感情に影響を与え得るのである。小さ目のフォントでは価格も低目に見えるという。

処理流暢性」のおかげで、価格を小さなフォントで表示すれば人はその価格を低く認識する。より大きなサイズの参考価格と並べれば、この方策は非常に効果的だ。 — Coulter & Coulter

  • 大売出しをする際は、できる限り正確な数字を出そう。コーネル大学の研究者によると、価格が細かいほど(例えば、362,978ドルと350,000ドルを比べた場合)、買い手は多くを支払うという。そのほうが交渉しやすいからだ、と思うかもしれないが、実際には、数字の認知のされ方に起因することが分かった。日常生活で、どんな時に正確な数字を使うか考えてみよう。なるべく低い価格に抑えようとする時が多いのではないだろうか。たとえそれが数百ドル、数千ドルになっても、その認知は変わらないのである。

3. 後悔の痛みを和らげよう

買った後に後悔した経験はあるだろうか。大きな、ひどい間違いを犯した買い物の後に突然やってくる感情だ。

良い買い物をしたり、サービスを受けたりした時、結果としてはいい気分になるかもしれないが、誰にとっても、取引の瞬間にお金を失う痛みはなくならない。なぜなら、やると決めたことが、今や、将来の自分の可能性に影響するという事実があるからだ(何かに20ドル払った、つまり他のものにその20ドルを費やすことはもうできない)

MITとカーネギーメロン大学の研究によると、この痛みは2つの要因から生じるのだという。

  1. 支払いの顕著性(例:お金が手元から離れるのを目にすると、より強い痛みを感じる)

  2. 支払いのタイミング(例:消費した後に支払うと、より強い痛みを感じる)

であるなら、痛みを和らげるためには、どのように値付けの構造を変えればよいだろうか。Uberのケースを考えてみよう。

昔ながらのタクシーでは、乗車中、料金メーターがジリジリと上がってゆくのが目に入り、さらに目的地に着いたら自分の手でお金を渡すことになる。Uberでは、メーターもお金の受け渡しも目には見えない。全ては視界に入らないので、それについて考えることもない。

前払いは買い手を喜ばせ、満足させ続ける強力な方法なのだ。

4. 「見えないように」値段を上げよう

できるだけの手を尽くしたいと思うのが当然だが、顧客に気付かれずに値段を上げる方法があるとすればどうだろう。

ウェーバーの法則は、気付くことができる刺激の差異は、元の刺激に比例するとしている。これはどういう意味だろうか。基本的には、価格も含めたあらゆる刺激の変化の度合いは、その始点を基準とする相対的なものだということだ。簡単に言うと、にぎやかな部屋では叫ばなければならないのに対し、静かな部屋ではささやき声でも聞こえるだろう。

そんなことは知っている? しかし、変化の差を気付かれない、元の刺激(例えば、元の値段)に由来する閾値があるのも分かっているだろうか。

マーケティング担当者はウェーバーの発見を信頼し、マジカルナンバーは存在しなくとも、「人が変化に気付き始めるのは元の価格の10%から」という見解に落ち着いているようだ。つまり、2%、5%、8%までなら、ほとんど気付かれずに「ひっそり」値上げできるかもしれないのだ。

同時に、人々に「安くなった」と積極的に気付いてもらうには、10%以上、値下げしなければならないということでもある。

5. 最安値を争わない

最安値を争うことがもたらす最悪のシナリオは、勝ってしまうことだ。次に最悪なのは、負けること。

その競争にガッチリ向き合えば、市場で「勝つ」可能性はあるが、スタンフォード大学の研究によると、価格比較を行う場合、顧客に価格を比較する全うな理由を提示できなければ、むしろマイナスの効果を及ぼすと指摘している。コンテキストなしで、競合とのあからさまな価格比較を顧客に見せると、逆にそれが原因で、自社の主張を疑われる可能性がある。

スタンフォードの研究者によると、なぜ最安値なのかをコンテキストに織り込まない限り、ただ顧客に比較させようとするだけでも「何かだまされているのではないか」と恐れを持たせる原因になるのだという。


以上に紹介した研究成果は、顧客が価格に対してどう感じ、それはなぜかを理解する一助にはなるかもしれないが、あらゆるプロダクトに対する本当のテスト、現実世界を無視することはできない。

BasecampのJason Fried氏は次のように言っている。

まだお金を出していない人に、いくらなら払うか、と尋ねても意味はない。「払う」「20ドル」「払わない」「100ドル」などと答えるのはタダだからだ。回答を集めるだけムダである。

身銭を切った回答だけに価値がある。何かにお金を出したという事実が答えなのだ。その答えにこそ意味がある。

170315
http://HowMuchToMake.com/

最後に、プロダクト作成にどれほどのリソースが費やされるかを知らなくては、請求などできない。そのために私たちは、ロゴ、Webサイト、アプリのアイデアを形にするにはいくらかかるかを手早く計算するシンプルで簡単なツール『
HowMuchToMake』を作った。是非使ってみてほしい。