ストーリーマップのつくりかた(前編)

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プロダクト開発において、ユーザーのストーリーの一つ一つを集め、予想し、問題解決を行い、最適化することが重要となる。その初期段階で有効な「ストーリーマップ」のつくりかたを、ヘルスケアアプリを例に考えよう(前編)。

本記事は、Rosenfeld Media社から出版されている私(Donna Lichaw氏)の著書『The User’s Journey: Storymapping Products That People Love』の第5章を抜粋した記事である。


ファネル分析、ストーリー分析のどちらも、ユーザーがある一定の期間にわたってアクションを取る一連のステップを表している。実際、多くの科学者やプロダクトを開発する人たちが言うように、データはストーリーを語る。そして私たちの仕事は、そのストーリーの一つ一つを集め、予想し、問題解決を行い、最適化するために、ストーリー構造の中にあるデータを調べることだ。

FitCounter(ヘルスケアアプリ)の例をとってみよう。私たちは内部分析に加え、潜在ユーザーに対して行ったテストで、私たちの分析が、鍵となる部分で脱落者が出る壊れたファネルを示したのは、以下のように解釈できるストーリーをユーザーが経験していたからだということが明らかになった。

  1. 導入
    潜在ユーザーは、自分が学んだり、誰かをトレーニングしたりすることに興味を持っている。

  2. 気持ちを駆り立てるきっかけ
    「開始」ボタンを見て、トレーニングを開始する。

  3. アクション
    ユーザー名とパスワードを入力する(少数の人がこの時点で脱落するかもしれないが、ほとんどの人がこのステップは完了する)。
    複数のトピックを「フォロー」するように催促される。例えば、ランニングだったり、ベースボールだったり。ユーザーはフォローする意味、またフォローすることで何が得られるのかを理解することができない。ユーザーの希望は、フォローすることではなく、マラソンに関して学ぶことなのだ(最初の脱落者が出るのがこの時点)。

  4. リスク
    緊張を迎える場面である。友人を「フォロー」するよう催促される。フォローするには、慎重に扱うべきGmailやFacebookへのログイン認証が必要になる。プロダクトまたはサービスが完全に信頼できるものであり、友人をフォローする価値があるのかということがはっきりしない限り、ログインはしたくはない。このケースでは、なぜフォローする必要があるのか? 友人がどのようにトレーニングしているのかを知るためだろうか? そこまでする必要が全く理解できないはずだ。現在のところ、このステップでかなり悩んでおり、サインアップするのを断念しようかと考え始めるだろう。

  5. 最終局面/決断
    次のステップに進むのであれば、最終局面を迎えることはない。

  6. 破綻する行動
    う〜ん、ここまでやる意味や価値は全くない。

  7. 完了
    サインアップが完了すると、ホーム画面に移動する。ビデオを検索したり、最新情報や人気プロダクトなどを閲覧したりすることができるだろう。そもそも、なぜこのサイトにやってきたのかを思い出せない人にとっては、検索や閲覧は面倒な作業だ。だが、実際には、ここまで成し遂げたのであれば、恐らく何かしらのプロダクトをクリックしただろうし、インタラクションするようになったはずだ。データ上では、このようなことは滅多に起こらない。最終的に自分が学ぶという当初の目標は達成できないし、ビジネスの観点からも、新規ユーザーを取り込むという目標も達成できない。

FitCounterにとって、ユーザーが最初にこのようなステップを踏むことがなぜ重要なのだろうか?マーケティングチームを雇って、新規ユーザーを得るために、後から手の込んだEメールを送ったり、プロモーションを行ったりするということはできないのだろうか?このケースでは、実際マーケティングチームは数ヵ月にわたって、このような行動を行った。しかし、あまり効果がなかったのだ。

FitCounterの大半のプロダクトやサービスにおいて、新規ユーザーを獲得するには、最初のステップが最も効果的であり、時には唯一の方法であったりもする。ここで新規ユーザーを獲得し、プロダクトやサービスの価値を知ってもらえれば、のちに彼らが戻ってくる確率は高くなる。ちなみに、これは対消費者のプロダクトやサービスにおいて実際に起こっていることであり、データ上でもそれが証明されている。

冒頭で話したこれらの熱狂的なファンは、最初のステップでプロダクトを使わずして熱狂的なファンにはなっていない。実際に私たちは、確信を得ている。ほとんどの熱狂的なファンは、最初のステップで最低でも3回は行動を起こしていた。例えば、ビデオの閲覧や共有、プレイリストの作成、リストへのビデオの追加といった行動だ。これらは質の良いインタラクションであり、検索や閲覧、意味もなくあちこちクリックするといったようなWebサイトやアプリでの行動は含まれていない。

私たちが所有する膨大なデータ全てを使うことで、機能しない利用プロセスを修復するための提案ができるのだ。想像していただけると思うが、全てはある程度の(もしくはそれ以上の)データから始まっているのだ。もちろん、データだけではなく、ストーリーもだ。

正しいゴール設定

この時点で、このプロジェクトにおけるゴールは2つあった。

1. 新規ユーザーにサインアップを完了させる。
2. プロダクトを何度も使用してくれる「質の高い」ユーザーを獲得する。

ご存じの通り、ユーザーにプレミアムサービスにアップグレードしてもらうことが、私たちの直近の戦略ロードマップやプランではなかった。プロダクトを利用可能にし、収益を得る方法を探る前に意味をなすものにする必要があった。しかし一方で、戦略が正しい方向に向かっているという自信もあった。なぜなら、私たちがデザインし、プランしたストーリーは、プロダクトをこよなく愛する実際のユーザーから推定したものだったからだ。また、コンセプトや元のストーリーをテストしていたので、間違った方向ではないと分かっていた。間違った方向に進んでしまった時は、正しい方向へと誘導し、順応してきた。ではこのケースで、より完了率を上げ、成功するストーリーにするためにはどうしたらいいのか? 脱落者が出るかもしれないという危機を迎えた場面で、このユーザーストーリーを変換するために私たちがすべきことは何であると、このデータは教えてくれているのか?

“本質的な理由”にたどり着く

量的分析は“対象”(新しくサインアップする間に脱落してしまった人々)を解明してくれたが、その“理由”までは分からなかった。この疑問に対するより良い答えを求めて、なぜユーザーが脱落するに至ってしまったのかを明らかにするために、ストーリー構造を用いた。これは高い効果があり、問題のローカライズと原因究明、そして処理に多いに役立った。ガイドラインとしてストーリー構造を用い、なぜユーザーが脱落するのかという理由を説明するための一連の仮説を立ててみた。

例えば、アプリで友人を見つけるよう催促した際に、ユーザーが脱落するとした場合、彼らは新しいサービスに対して、ログイン認証するほどの信頼を寄せてなかったということなのか? あるいは新しい友人を追加したくなかったのだろうか? トレーニングがソーシャルではなかったのだろうか? 私たちが思っていたのとは違ったのだ。より分かりやすい答えを求めて、私たちの疑問について良いアイデアが浮かんだ際に、サインアップの流れについて、そしてトレーニングの仕方について(1人で行うか、他の友人と行うかなど)、既存のユーザーと潜在ユーザーに話を聞いてみた。私たちはトレーニングは、ソーシャルなものだと疑いもしなかったので、なぜこのステップが障害となっているのか解き明かす必要があったのだ。

サインアップのフローで分かったことは、私たちが予想していたものに近かった。潜在ユーザーは信用性という理由で友人をフォローしたがらなかった。しかしさらに大きな要因はプロダクトをどのように使用するかというメンタルモデルが破壊されるからだったのだ。「トレーニング開始」は潜在ユーザーに響く強い行動喚起であったが、対照的に「友人をフォローする」は違ったのだ。マイクロコピーほどの一見些細なものでさえ、ストーリー構造が何かというユーザーのメンタルモデルに一致する必要があった。さらに言えば、ユーザーはトレーニングをソーシャルなものと見なしていなかった。ユーザーが単独でトレーニングするか、友人とトレーニングをするかどうかを決めるのには、多くの様相が関係していた。

ここで私たちはユーザーが真逆の行動をとることに気付いた。つまりユーザーは半分の時間を1人でトレーニングし、もう半分の時間を友人とトレーニングする傾向があるということだ。単独で行うか、友人と行うかは一連の要素による。

・ アクティビティ(チーム戦か個人戦か)

・ 時間(平日か週末か)

・ 場所(ジムか自宅か)

・ 目標(5km走るのか、体重を減らすのか)

友人を「フォロー」しようかどうかについて考えるとき、潜在ユーザーがフォローするかどうかは数式で導き出すにはあまりにも複雑すぎる。率直に言って、何かにサインアップするとき誰もがすべきことは、数値以上のものだ。つまり、ユーザーリサーチのあと、私たちはプロダクトをソーシャルにし続けること、早い段階で友人とトレーニングする機会を与えることの価値を確信した。そう、このビジネスでは友人を誘ってくれる新しいユーザーを欲しがっている。友人がサインアップしてくれれば、プロダクトの新しいユーザーを獲得できるかもしれないからだ。そして、そうだ、このサインアップの過程をこのビジネスから省けるという確信を得られただろう。そうすれば、危ない橋を渡らず、より確実に新しいユーザーへと導くことができたはずだ。しかしながら、ユーザーが半分の時間で一定の行動をする場合、あなたはその状況のままユーザーが行動できるようなプロダクトを作りたいと思うだろう。そのことが、ユーザーベースのビジネス拡大を手助けするのであればなおさらだ。

サインアップのフローでのステップを含め、ユーザーが脱落する要因となる問題を省く代わりに、私たちは優れた映画製作者やスクリーンライターがやるようなことをやってみた。危機を効果的に使って、緊張と葛藤を用いたストーリーを作ったのである。私たちが望んだストーリーは、今までのものに比べてはるかに説得力があるだろう。


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ストーリーマップのつくりかた(後編)