素晴らしいUXを実現する組織の条件とは

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企業がUXの必要性を認識し、まじめに取り組もうとすると、まず”UX○○”という部署を立ち上げると思います。しかし実際UXは組織全体の活動によって実現されるもので、1部署単体の努力では実現できません。次に紹介するのは、組織全体で連携が必要な6項目です。それらを大きく”理由”と”方法”に分けました。

理由

1. 価値観 ― 組織の信念とは

組織には明確な価値観が必要です。そして、素晴らしい体験を提供するには顧客中心の共感できる要素を価値観に含む必要があります。

AppleSouthwest AirlinesTargetの企業理念です。

2. ビジョン ― 組織の方向性とは

組織の方向性を全員で共有する必要があります。そのためには人々を刺激・高揚させる具体的な内容のビジョンが必要です。箇条書きではダメです。チーム毎に解釈が異なってしまい、素晴らしい体験を提供する機会を損なってしまうでしょう。これではビジョンとは言えません。Grouponではサイトをリニューアルする前に、社内限定で”北極星”と呼ばれる、この2年で実現する体験をイラストにしたものを掲載しました。Deborah Adlerのプロトタイプ”SafeRX”では、処方薬の錠剤用容器の理想形を具体化しました。これは容器に求められる要件を、ただリストアップするよりも効果的だったでしょう。

ビジョンについての良記事をJared Spoolが書いているので、読んでみるとよいでしょう。
The 3 Qs for Great Experience Design
The 3 Steps For Creating An Experience Vision

3. 目標 ― 組織の成功とは

Adaptive Pathでクライアントに初期段階にする質問で私のお気に入りがあるのですが“何をもってして成功とするか?”です。とても明確で素朴な質問に思えますが、多くの会社と仕事をしていく中で、その答えをしっかり持っている企業はそう多くは無いことが分かりました。しかしゴールや成功がはっきりしていないと、プロセスを進める上で判断が難しくなります。つまりどこに努力を注げば良いのかも分からなくなってしまいます。

Christina WodtkeがOKR (Objectives and Key Results)について詳しく書いているので、興味のある方は読んでみてください。

方法

4. 評価制度 ― 社員のやる気を起こすには

評価制度は、他の項目より局所的な施策に見えるかもしれません。ただこれは組織の古い慣習に束縛されてしまい、素晴らしい体験を提供するための最高の計画を邪魔する原因にもなります。

企業は社員のパフォーマンスをどう評価するべきなのでしょうか。何を基準に報酬(昇給、賞与、昇進)を与えるべきなのでしょうか。どのような勤務態度を称賛するべきなのでしょうか。

数々の金融サービス機関と仕事をして分かったのは、それらの企業が人事評価する際、関わる業務ユニット内(金融取引、仲介、保険、融資)、あるいは顧客とのチャネル(店舗勤務、電話折衝、オンラインサポート)におけるパフォーマンスを基準としていることです。顧客エンゲージメントは、各個別の業務サービスや、単体での接点では決まりません。そのため部署内に閉じた評価制度は、部署間の協力の妨げとなり、UXという観点からは受け入れがたい制度となります。

最近Irene Auと話した際に、彼女のUXチームの指導歴や彼女がGoogleで直面した課題について教えてくれました。Googleでは「より多くの物を世に出す」ことを奨励しており「何を出荷したのか」という質に対して目を向けられていませんでした。そのため、素晴らしいUXを提供するために、最適化と改良が必要だったとしても、それを行おうとはしませんでした。

5. プロセス ― 組織の運営とは

「正しい道は1つとは限らない」ということを、まずは理解してください。全てに通用するプロセスという物は存在しません。素晴らしいUXを提供するためには、事細かに定義されたプロセスを取り払い、特定の問題の解決に使える手法や技術を柔軟に取り入れる必要があります。

とは言え、一般的に良いUXの提供につながる組織には特徴があります。

それは可能な限り早い段階で、機能横断型チームとして機能することです。ウォーターフォール型開発のような、作業工程を分けてチームからチームへと移す様なやり方では、より粗末なUXを提供することになります。複雑な問題を解決するためには、問題点や構成要素の整理や調整を必要とするだけでなく、初期段階からチーム全体の関与を必要とします。それはキックオフミーティングの話ではなく、企画、デザイン、開発、すべての段階で組織全体の連携が必要なのです。

事前に定性的な実地調査を行うことで、ビジネスチャンスが明らかになり、見識が備わり、創造力が刺激されるでしょう。プロジェクトの初めから見込顧客と既存顧客を巻き込むことで、顧客の置かれた状況、行動パターンを理解します。顧客に関する見識を得ることで、新しいビジネスチャンスを捉えることができ、価値を提供することができるのです。

デザインとプロトタイピングはプロセス全般を支える作業であり、プロセスの工程では無い事に注意してください。プロセスの初期段階からデザインとプロトタイピングは行えます。(さらに詳しく知りたい人はThe Double Diamond Modelをお読みください)

時には考え事やドキュメント化することよりも、手で作り構築することを優先的に行ってください。素晴らしいUXを提供している組織は、より良いUXを提供できるよう絶えず工夫に改良を凝らしています。

6. 能力 ― 必要なスキルとは

どの様な体験を届けたいかによって必要なスキルは異なるため、一般的に必要とするスキルを挙げるのは非常に難しいです。しかし、組織が素晴らしいUXを提供するために必要とする、共通の新しいスキルがいくつかあります。

ストラテジックデザイナー

プロセスの早い段階でデザインが必要とされるので、デザイナーがビジョンと全体計画を理解・賛同していなければなりません。しかし全てのデザイナーがこうした議論が得意というわけではありません。そのため、戦略上の懸念を一緒に検討し、積極的に関与し、ビジネスアナリストやプロダクトマネージャー、エンジニアに対して独自のスタンスを取れるデザイナが必要です。

プロトタイプエンジニアリング

一般的にエンジニアリングは、様々なコードやライブラリなどを有効に組み合わせてプログラムを完成させる、生産工場の様なものだと考えられています。インタラクティブデザインとプロトタイピングの様な新しい世界では、様々なコードが再利用できるかどうに関係なく、迅速にインタラクティブプロトタイプを作成できる人の需要が高まっています。

迅速なインタラクティブプロトタイプの作成を可能にできるのは、素早く作業をこなせるエンジニアか自らのデザインをいち早くモックに落とし込めるデザイナーのどちらかです。いずれにしてもユーザが体験し意味のあるフィードバックを出せる、新しい解決策のプロトタイプを迅速に作成できることが重要です。プロトタイプから得られるユーザの声は、後の問題解決のための情報として活用できます。

他にもきっとあるでしょう

この記事で、私は素晴らしいUXを実現できる組織の条件についてまとめましたが、網羅したとは思っていません。修正や改善、補足など、皆さまのご意見をお待ちしています。