ワンランク上のデザイナーに求められる3つの条件とは?

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未来のデザイナーが潜む場所

UX(ユーザーエクスペリエンス)デザイナー、インタラクションデザイナー、デジタルプロダクトデザイナー。呼び方はともあれ、これらは今、デジタルデザインにおいて最も求められている職種だ。そして、誰もが言うように、UXデザイナーに優秀な候補者は極めて不足している。単なるスキルギャップのせいだろうか?それとも、他に原因があるのだろうか?

フリーランス市場は景気が良く、良い単価とクライアントを選べるという魅力で多くの常勤デザイナーの離職を誘っており、スタッフの募集を難しくしているとされる。だが、それは状況の表れであって、原因ではない。また、単なるトレーニング不足のせいでもない。UXは高等教育での対応の遅れが認識され始めている分野だが、代理店や企業は質の高いOJTを提供している。しかし、シニアよりもジュニアや見習いの職務を補充する方がさらに難しい状況にあるのだ。

目に見えるスキルギャップの下には、全く別の問題が隠れている。スキルは、意志と機会と適性があれば、誰でも身に着けられる。そして最初の2つはあるとなれば、私たちが探し出せていないのは、適切な資質を持った候補者ということになるだろう。

UXの業界では、成功へのキャリアパスが定まっているわけではない。私が一緒に仕事をした最高のデザイナーたちを思い起こしてみても、学歴や職歴、持っているスキルなどは様々だ。しかし、そうした優れたUXデザイナーには、共通する3つの資質がある。

1. 創造力

これは、いわゆる芸術的な力を指しているのではない。もちろん、それは有用なスキルだが、UXのプロにとって不可欠なものではない。また、自尊心あふれる姿勢から「クリエイティブな人」と言われるようなデザイナーのことでもない。UXにエゴの入る余地はないからだ。ここで言いたいのは、世の中に新たな概念を打ち出していくような、創造的思考の人、問題解決力の高い人、そして次々と新しいものを作り出す人のことだ。そういう人は様々な代案を考え出し、明らかな物事を超越した見方ができ、誰かが問題点をまとめ終わる前に、その問題の解決案を5つ出してくれる。

創造力がなければ、イノベーションは起こらない。

2. 分析的思考

分析的に考える人は、物事を検証、確認、理解し、評価する。厄介な質問も投げかける。そして客観的な見方ができるので、誰のアイデアであろうとも常に最善の解決法を追求する。そういう人は、頭の中に目的をいくつか描き、その達成方法を考えることに集中できる。疑問点があれば、答えを得るために自らテストをデザインし、データを丹念に調べることもいとわない。

分析的思考の持ち主は、様々な分野に存在する。自然科学、社会科学、心理学、ビジネスアナリシス、プログラミングなど、系統立った考え方や問題意識の高さが要求される分野だ。

この資質は、あまりデザイナーと結び付けて考えられることはないが、最高のデザイナーは必ず備えている要素だ。優れたデザイナーは、仕事を客観的に評価し、メンバーに方向性を示すのだ。結局のところ、新しいものを生み出しても目的にかなっていなければ、デザインにならない。

3. 共感力

UXにおける共感力とは、自身の見方が、ユーザーの見方とは違っていることを受け入れられる力だ(実際、デザイナーがシステムを見る見方は、そもそも普通とは異なっている)。自分の意識をユーザーの心に置き、ユーザーの代弁者となり、ユーザーの思考と反応を予測できることだ。これは心理学における認知的共感、あるいは心の理論と密接に関わっており、ほぼ全ての人が持つ力だが、その程度は様々なようだ。

UXが進展するにつれ、オーディエンス調査、ペルソナ、ユーザビリティテスト、アナリティクスなど、ユーザーの目的やニーズ、行動を理解するのに役立つ広範なツールキットが開発されてきた。しかし、デザイナーが自分の好みを度外視し、ユーザーの見方がいかなる場合も重要であるということを受け入れられなければ、こうしたツールも役に立たない。

共感的思考の持ち主であるかは、特定の学歴やキャリアパスで示されるものではないが、仕事への取り組み方にはっきりと表れる。そういう人は、自分の決めたことが他の人にどんな影響を及ぼすかを予測できるのだ。共感力の高いデザイナーは、自分の作品を作るのではなく、ユーザーのためにデザインする。

候補者の既成概念を取り払う

これらの資質を兼ね備えた人はなかなかいない。だが、UX業界が人材募集に苦労している原因は、ユニコーンのような伝説的存在を求めているためではなく、1つの場所しか探していないためなのだ。

デザイン教育を受けてきた人たちが候補者として魅力的な理由はいくつもある。Adobeソフトを使いこなし、デザイン用語に明るく、輝かしいポートフォリオを携えているからだ。しかし、創作プロセスにおいて優れていても、私が挙げてきた資質に関わるスキルを伸ばしてくれることはほとんどない。彼らの多くは、UXに興味を引かれこの世界でキャリアを積もうと思っても、創造力や「先進性」と同じくらい調査や検証が重視されるということを知って、結局挫折感を味わうのだ。次世代のUXのプロを見いだすには、華やかな学歴にとらわれず幅広い分野の人材に目を向けるべきだ。

UX人材採用のチェックリスト

提示された作品リストを見ただけで採用を決めてはいけない。最も優秀な候補者は、まだ作品が形になっていないかもしれないのだ。

  • 完成作品だけでなく、スケッチやアイデア展開の提出も求める。
  • 理にかなった意思決定、調査、そして対象オーディエンスへの配慮がなされているという根拠を確認する。
  • 求人広告にデザインの学士号を応募条件として記載しない。創造に関わる仕事に挑戦したいと考えている優秀な開発者、心理学者、ビジネスストラテジスト、統計学者などの応募を妨げることになるからだ。
  • 求人広告で職務の多様性を強調する。そうすれば、もっと面白い候補者層からも応募が得られるだろう。
  • 既存のチームに似た人材構成を求めない。例えば、創造的思考にたけたメンバーが既にいるなら、もっとユーザに重点を置くべきかもしれない。
  • ソフトウェアのスキルや調査の経験に乏しい新人向けに、トレーニング機会を提供する。

需要が供給を上回る時は、視野を広げよう。当面のスキルギャップを埋めるために経験豊かな人材と契約することは、一時的で費用もかかる解決法だ。それよりも、成長すれば新たな概念と真のデザインイノベーションをもたらすようになる人材を発掘し、そこに投資しよう。スキルとは違って、資質は身に着けられるものではないからだ。