変化に適応する新世代ロゴデザインまとめ

Source

ニューヨーク在住。
ブランディング、タイポグラフィー、デザイン史などについて執筆。

ロゴは死んだ。

と、恥知らずにもセンセーショナルな書き出しにしてしまったのは、あなたに関心を持ってもらいたかったから。だが、冗談を抜きにしても、これまでロゴという言葉が意味してきたこと、つまり固定的で常に変わらないブランドマーク、という在り方は揺らぎ始めている。実際に、ロゴをちょっと見てみよう。

Whitney Museum

logo design - whitney
Whitney Museumの新ロゴマーク(デザイン: Experimental Jetset

2013年5月、ニューヨークにある近現代アメリカンアートをテーマに扱うWhitney Museumが、以前のロゴデザインから上の画像のような細い線のジグザグ形に一新したことを発表した。かなり退屈な印象だなと、そんな風に感じるのではないだろうか。この美術館の以前のロゴはPentagramによるデザインで、シャルトリューズ色のくっきりとピクセルが見えるようなブロック文字だった。これでは時代遅れ感があるというのも否めない(これは、2000年代初めのドットコム・フィーバーの時に作られている)が、これには確かに個性があった。

logo design - whitney old
Whitney Museumの以前のロゴマーク(デザイン: Pentagram

しかし、すぐに分かったのだが、高度な理論でデザインを導き出すデザイン事務所Experimental Jetsetが手掛けたWhitney Museumの新しいロゴには、実は、これが唯一無二のマークではないという最も重要な特性があったのだ。唯一無二ではないというよりも、それは「変化に適応する」と言うのが相応しい。つまり、以下のように様々なテキスト、様々なブランド関連のマテリアルに適応して、無限のフォーメーションに広がったり伸びたりすることができるのだ。

whitney logo design
Whitney Museumの新しいジグザグロゴデザインは、そこに添えられるコンテキストに応じて何通りもの形状に変化する。

実は、このような適応が可能なブランドマークを採用している美術館は他にも多くあり、Whitney Museumはその1つにすぎない。Gizmodoによれば、現代美術はそれ自体に絶えず変化するという性質があるため、とりわけ美術館がこの戦略を取る傾向があるという。ロゴとはその機関がどういうものかを投影するものであるから納得だろう。

しかも、事実、美術館は進歩的なデザインのアイデアに対し平均的な企業よりもアンテナが高く、なおかつ、その受け入れにも前向きだという傾向はある。

MIT Media Lab

さらにGizmodoが示唆したのは、適応が可能なタイプのデザインの可能性を初めて実証したのがMIT Media Labのロゴだということ。赤、青、黄、3色のスポットライトで構成されるロゴは、アルゴリズムで40,000通りの異なる配列にアレンジでき、それぞれが完全に独特のパターンになるのだという。

MIT logo design
MIT Media Labのロゴは40,000通りのバージョンに変化し得る。

プロのデザイナーは常々、ある程度の一貫性を持ちながらも、それぞれに異なるグラフィックスへと拡張が可能なアイデンティティを生み出さなくてはならないと考えていた。よくあるのは、単に、ロゴのビジュアル的な要素はそのまま使い回し、補完的に使う書体を選ぶというもの。しかし、もし一貫したまとまりと関連のあるマークが無限に作り出せるとしたら? やってみるだろうか? 中には、デジタルテクノロジーがブランド戦略に及ぼした影響として、当然の結果だという人もいるかもしれない。

しかし、これが未来の姿になるのか? それともアーティスト気取りの美術館という集団だけに限られたトレンドでしかないのか? これから、程度の差はあるが同様に適応が可能なタイプのデザインを採用している他の美術関係の機関のロゴを見ていこう。あなたがどう思うのかも、ぜひ意見を聞かせていただきたい。

Tate(イギリス)

tate
このTateのロゴには焦点の合わせ方が中間調で様々に異なるものが存在する。これは常に変化する状態にある現代美術を表現している(デザイン: Wolff Olins

Asian Art Museum(サンフランシスコ)

asian art museum  logo design
Asian Art Museumのロゴデザインは様々なカラー、テクスチャ、イメージが組み込まれたあらゆるバージョンが存在する逆さまのA(デザイン: Wolff Olins

Woodmere Art Museum(フィラデルフィア)

woodmere
一番上のデザインはWoodmere Art Museumが最終的に選んだもの。その下にあるのは160 over 90によるデザインで、独立したデザインでありつつ関連も持たせた提案だ。

Museum of Art and Design(ニューヨーク)

mad  logo design
Museum of Art and Designのアイデンティティを生み出した。Asian Art Museumのロゴと同じく、いくつものテクスチャとイメージが組み込まれている。(デザイン: Pentagram

Brooklyn Museum

brooklyn museum
Brooklyn Museumのロゴマークは様々に異なるスタンプの形。(デザイン: 2×4

Design Museum of Boston

boston
Design Museum of Bostonのロゴは密度が様々に異なるドットで構成されたもので、一緒に来る人々のコミュニティを表現している(デザイン: Continuum

以上は全て、たくさん並べられたものが互いにわずかに違っていながらも、全てが一貫しているという点で、紛れもなく適応が可能なタイプのロゴデザインだ。今度は、適応が可能なロゴデザインというものの、より伝統的な意味を具体化したものを見ていこう。つまり、本来のオンリーワンのロゴというところだ。とは言いながらも、その特徴によって、一貫したアイデンティティを持たせるシステムを形成するために、様々に応用することができている。

Harvard Art Museum

harvard  logo design
によるデザイン。Harvard Art Museumは随分とシンプルなロゴデザインが1つだけ。しかし、このスラッシュによって、デザインソリューションはより広範囲の様々なものへと及ぶ(デザイン: 2×4

Centraal museum(ユトレヒト)

centraal
Centraal museumも極めてシンプルなコンセプトで、大きな1つの円に棒線で名称を指し示しただけのもの。下の画像では、このフレームワークが手を伸ばしてミュージアムの様々な部門を示しているものや案内標識にも使われていることが分かる(デザイン: Lesley Moore

Los Angeles County Museum of Art

lacma  logo design
LACMAのロゴシステムは独特の下線付きのカスタム書体を軸としている。(デザイン: 2×4

Exploratorium(サンフランシスコ)

exploratorium
Exploratoriumは最近、移転し、ブランドも一新した。この新ロゴマークに含まれる特大の「O」があらゆる巧みなマーケティングに役立っている(デザイン: Landor Associates

Stedelijk Museum(アムステルダム)

stedelijk
Stedelijk Museumのこのロゴは、その大胆すぎるシンプルさに批判的な意見も多くあった。下の画像では、文字で描かれた文字というコンセプトが、この美術館の名称からはかけ離れている他の情報をどのように取り込むのか、また、その普通のアイデアが案内標識にどのように適用できるのかを示している(デザイン: Linda Van Deursen)