ブランディングはユーザーの魂に宿る

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激しい競争の中で、理屈抜きでユーザーのロイヤリティを呼び起こす企業がある。情熱や感情に基づいたそロイヤリティは、ある1つのことによって引き起こされる。**ブランディング**だ。では、ブランディングとは何だろう? なぜそんなに重要なのだろう?

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画像Ranchers.net

ブランディングという言葉の起源は西暦350年頃までさかのぼる。古ノルド(ノルェー)語で「焼く」ことを意味する「Brandr(ブランドル)」だ。1500年代頃になるとこの言葉は牧場主が所有主であることを示すために、牛に押した焼印を意味するようになった。シンプルで瞬時に判別可能なこれらのシンボルは、現代のロゴの起源となっている。しかし、今日のブランディングは単に見た目やロゴ以上のもの、すなわち企業がユーザーから引き出すことのできる「直観」を表すようになった。そしてインターネットの出現により、ブランディングは競合より抜きん出るための鍵となったのだ。

ブランディングはユーザーの魂に宿る

一言で言えば、ブランドとは人々が企業に対して抱くイメージのことであり、ユーザーの魂に宿る価値の感情表現を、丁寧に収集し整理したものだ。ブランディングとは、ブランドを育てるための行動のことだ。ブランディングを正しく行うことにより、美しいデザイン、言葉、体験が調和し、すべてが統合され、特別な感情を育てる。「直観的」なブランディングの典型はAppleであり、ほぼ間違いなく世界一のブランドと言えるだろう。

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画像: Apple

「テクノロジーについて語られることが多いが、Appleはマーケティング重視の会社だった」。1997年、当時のAppleのCEO John Sculley氏は『ガーディアン』紙に対してこのように述べた。「Appleは当時の10年間で最も優れたマーケティング会社だった」。これを誰よりも理解していたのがスティーブ・ジョブズだ。彼は1990年代、破綻の瀬戸際からAppleを救い出した。デザインを一新し、野心的なメッセージを発信し、合理化された広告によって、ブランドをよみがえらせたのだ。

何よりもジョブズは、優れたブランド戦略の本質はCohesiveness(統一感)Consistency(一貫性)、そしてClarity(明瞭さ)を兼ね備えたものだと理解していた。これら3つのCがユーザーとの強い心理的なつながりを生み出す。Apple社製品やソフトウェアを使えば何を期待できるのか、ユーザーは知っているのだ。

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画像: Apple

あいまいで達成不可能に思えるかもしれない。しかし、ブランディングはコントロール不可能なものではないと理解することが重要だ。どのような企業でも、規模に関わらず、ビジネスを成功に導く好ましいイメージを開拓したり、影響を及ぼしたりするプロセスを積極的に引き起こすことができる。ブランディングは企業の設立時から始めるのが理想だ。一度ついてしまった一般的なイメージを変えるのは(不可能ではないが)難しいからだ。スティーブ・ジョブズはこう語った。

記憶をつくるチャンスこそがブランドマーケティングの本質である。
(スティーブ・ジョブズ)

ブランディングが絶対必要な4つの理由

自分でブランドイメージを作るのか、それとも他人に作られるのか。もし積極的に自分のブランドを定義しなければ、市場が定義してしまうだろう。そしてそれは好ましいものではないかもしれない。そのことこそが、意図的にビジネスのブランディングをする主な動機になるはずだ。その他に大切なポイントをいくつか書き加えておこう。

1. 競合に勝つ

もしあなたがデザイナーなら、新しいノートパソコンを購入しようと思う時、まずオンラインのApple Storeのページを開くのではないだろうか? Appleはブランドとして、あの美しいインターフェースと直観的に使える機能を完成させるのと同じくらいの年月を、イメージを育てることにかけてきた。あなたがそれほど調査もせずにMacBookを選ぶのは、市場には実際の競合製品がないと認識しているからだ。なぜだろう? それはAppleの「I’m a Mac」キャンペーンによって、ノートパソコンと言えばMacBookこそが間違いない選択だと、すでに確信に導かれているからだ。このことから分かるように、ユーザーにいくつかの選択肢がある場合には、ブランディングが決断を固めるのを手助けする。

2. プロダクトの価値を上げる

ユーザーがApple製品に対して他社の競合製品よりも高い金額を喜んで支払うのには理由がある。ブランディングはあなたの製品を、単なる商品からユニークな製品へと格上げし、高い値段設定を可能にする。初代Macintoshを取り上げたAppleの「1984」キャンペーンは、スーパーボウルのCMの革新的な時代の道を開いただけでなく、競合するブランドよりも高い価格でのプライシングを可能にした。その時から、Appleのすべてのキャンペーンは本質的かつ不変的なメッセージを発信し続けている。それは、先見的なカウンターカルチャーの象徴としてのAppleに対して、退屈で体制的で世間に迎合しているすべての競合他社、というものだ。

3. ユーザーとのつながりを生み出す

Anne Hathaway in The Intern
画像: 『マイ・インターン』

物語は感情レベルであなたとユーザーを結びつけてくれる。例えば、Appleは何十年にもわたり、革新的な広告キャンペーンや、セレブリティによるプロダクト・プレースメントによって、究極に先進的で野心的な高級品というイメージをたくさんの物語の中で展開してきた。これは特に都市に住むミレニアル世代に共振するテーマだ。

4. ユーザーのロイヤリティを育てる

Yui Kashima, left, and Nobuhiko Matsuda wait to purchase an Apple's new iPhone outside a store in Tokyo on Friday morning, Sept. 20, 2013. Apple released the latest iPhones 5C and 5S on Friday. (AP Photo/Koji Sasahara)
画像: 『The Japan Times』誌

Appleのブランドは本質的にユーザーが主導してきた。これはすべてのタッチポイントにおいて一貫している。すなわち、Genius Barでの卓越したカスタマーサポートや、すべてのコミュニケーションにおいて、透明性があり正直であること。例えそれが製品の欠陥についてであったとしても、だ。ユーザーのロイヤリティをとどめておく秘訣は、製品の必要性をブランド化できる企業の能力にかかっている。iPhoneは決して市場で最も革新的なスマートフォンではなかった。しかし付随する製品とのシンプルな統合を強化することで、Appleをまず第一に検討するのが簡単で便利だと思われるように仕向けてきたのだ。

ブランディングの手法

ここまでは理由を見てきたが、今度は手法について述べようと思う。まずはミッションとビジョンステートメントから始めよう。ミッションとは事業の頭脳だと考えよう。あなたの組織の現状と目的を定義した短く簡潔なステートメントだ。一方、ビジョンは心臓部であり、達成するべき長期目標達成の、刺激的で意欲的なスナップショットを定めるものだ。

ミッションとビジョンステートメントを組織の柱とすれば、ブランド戦略はその間のすべてを取り囲むものになる。これはやがてブランドガイドラインの形を取るだろう。ビジネスゴールをサポートし、競合相手から差別化し、ユーザーの気持ちをとらえ、決断のための枠組みを提供し、将来のマーケティングキャンペーンへのアイデアを生み出す、具体的なドキュメントだ。

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Firefoxのスタイルガイド(画像: Mozilla.org

会社の規模や方向性に変更があれば、ガイドに追加し、更新すればいい。Appleの約200ページのスタイルガイドは、間違いなく時代と共に変更されてきている。最新のすべての製品名の適切な記述方法や、拡大するインターナショナル市場向けにローカライズの方法などを記載するため拡張してきたのだ。一方、FirefoxはシンプルなインタラクティブなWebページで彼らの慈善精神を表明した基本方針を示し、ここからブランドについての個別の詳細についてリンクを表示している。facebookのガイドは、プラットフォームごとの各機能について説明し、適切な使用方法を解説し、便利な「心得」集を併記している。

優れたブランディングは優れたマーケティングである

基本原則として、製品にはライフサイクルがある。しかし、うまく管理すればブランドは永続する。ブランドのアイデンティティを正確に見極めることができれば、マーケティングも大幅に容易になる。ブランドバイブルと市場調査、市場分析とが結びつけば、製品を市場に届ける最善の方法を決定する戦略的アドバンテージが得られるはずだ。ラジオやビルボードのような古典的なマーケティングに集中すべきか? それとも、あなたの潜在ユーザーはYoutubeのバイラルな動画やSnapchatのフィルターに影響を受けるだろうか? マーケティングにはいくつかの戦術を組み合わせていい。しかし手を広げ過ぎないようにしよう。ブランドガイドを拠り所にし続ければ、本当に重要な戦術に集中することができるだろう。

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画像: Apple

例えば、Appleは有料広告にはほとんど経費を割かず、新製品発表とメディア上のバズマーケティングにほぼ依存している。一旦誘い込まれたら、あなたは優れたキャッチコピーの虜になる。AppleのMacBookの製品ページを見てほしい。他のコンピュータブランドと同様、技術仕様も記載されているが、目につきやすい場所にはターゲット層にカスタマイズされたコピーが集中している。画面の解像度の代わりに、「振動を使った触覚的な反応」や、「Retinaディスプレイ」、「Multi-Touchジェスチャー」などのフレーズが並んでいるのだ。空想的なバズワードだろうか? そうだ。しかしAppleのブランド価値は(2位のGoogleより87%多い)1,541億ドル(約16兆7,969億円)であり、このような革新的なマーケティングによって、 世界の最も価値あるブランドとして君臨しているのだ。

結局、マーケティングとはリードと売り上げをもたらすプロセスだが、ブランディングは、その上にあなたの評判とユーザーのロイヤリティを積み上げてくれる。Appleのような巨大企業から、創立したばかりの企業まで、優れたブランディングが成功の鍵を握っていることは明白だ。