ハーバードビジネススクール1年目で学んだ10のこと

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米国ハーバードビジネススクールのMBAプログラム1年目で学んだ、主要な10のこと。

過去1年間、私は数えきれない程いろいろな言い方でこの質問を受けた。ハーバードビジネススクール(HBS)で学んだこと全ては説明し切れないし、そこでの経験は文献に書かれている以上のものであった。しかし、みなさんにも少しだけその経験を味わってもらおうと思う。

これから紹介するもののうちのいくつかには文字通り衝撃を受けた。その理由は、その重要性を全く理解していなかったからだ。

各主要科目で学んだことを分かりやすい事例と一緒に説明していこう。ただし、HBSの方針に反するので、具体的な事例の詳細は省かせていただく(複数年使い続けられる事例もあるため)。中には分かりきったことであると感じるものもあるかもしれないが、そこにたどり着くまでの会話が異なる。

HBSのMBAプログラムの学生は、以下の科目を1年目に取る。

1. ファイナンス 1 (FIN1)

2. ファイナンス 2 (FIN2)

3. リーダーシップと組織行動(LEAD)

4. 技術・オペレーションマネジメント(TOM)

5. 財務報告と管理(FRC)

6. マーケティング(MKT)

7. 企業家的経営者(TEM)

8. 戦略(STRAT)

9. ビジネス、行政、世界経済(BGIE)

10. リーダーシップと企業倫理(LCA)

1. FIN1: 株価は、企業がこれから稼ぐと投資家が予想するお金の総額である

株価は決算発表の後大きく変動するのに、製品発表の後はそれ程でもないのはなぜだろうと以前は疑問に思っていた。今ならそれが分かる。株価には、企業価値が反映されているからだ。「価値」についての1つの考え方は、企業が最終的に稼ぐお金の総額である。決算報告は、そういったキャッシュフローを予測するための重要な判断材料なのである。

興味深いのは、もし損益計算書や貸借対照表、参照できる同等の数社の情報があれば、自分で計算できることである。この手法は、ディスカウントキャッシュフロー、あるいはDCF法と呼ばれるもので、背景にある主な考え方は、将来生み出すキャッシュよりも、現在あるキャッシュの方が、価値があるというものである。DCFを計算することによって、ある株が低く評価されているのか、高く評価されているのか、適正に評価されているのかを自分で判断することができるのである。

私が最も分かりやすいと感じた事例は、「全米パイプライン」であった。しかし、これを理解するには、12回はDCFの計算を行う必要があると言われた。

DCFをきっちり計算せずに簡単に株を評価するには、マルチプル法と呼ばれる手法を使う。これは、私の同業者の多くが好んで使う株の評価方法である。

2. FIN2: テクニカルな債務=財務的な債務

FIN2では、FIN1での理解をさらに深める。DCF計算に適用すると言うなら、過剰債務と「財政難というコスト」について説明しても良いが、中堅企業には意味がないと思う。

それよりもむしろ、FIN2で私が気に入っていたのは、担当教授である。彼女は、財務モデルを使ってテクニカル債務をシミュレーションする研究(暗号に似ている)をしている。これによって財務的債務とテクニカル債務の間にはあまり違いがないことが分かるのである。

産業界で働いていると、いつもテクニカルな債務の影響を定量化することはできないと感じる。更なる条件追加にどのくらいの期間がかかるのか、解決にどのくらいの時間をかけるべきかなどの点からである。

それは必ずしも正しくないと分かる。Carliss Baldwin氏は、テクニカル債務をシミュレーションする研究を行っており、企業が現在の解決と将来の解決の間でトレードオフする助けとなり得る。これが彼女のテクニカル債務における研究の初期の論文である。

3. LEAD: 自分の欠点を理解する

人々は自分が何を得意としているか分かっているものだ(それが今の自分を作り上げている!)。残念ながら、キャリアを積んでいく上では、物事は思い通りにいかない。周りの者に影響を与えることに対して、どう対処し、埋め合わせをするのか?

今年、私が実行した最適な方法の1つが、次の2つの質問に対して正直に答えることだった。

自分の欠点な何か?
どんな時にその欠点が現れるか?

私の欠点は、批判的、忍耐力に欠ける、頑固、疑い深い、そして嫌味っぽいところである。そして、自分自身に影響力がないと感じた時や、過小評価された時にこの欠点が現れる。また、根本的に「正しい」と思っているのに、他人から同意を得られない時も同じだ。これが長引くと、私は非常に冷淡な人間になり、何もしなくなる。

このような状況を避けるよう努力していた時期もあったが、今ではうまく対処している。このような状況に陥った時は、チームに謝るように努力し、気持ちを切り替える。そうすれば、次からより迅速に対処することができるようになるのだ。

推奨事例:Erik Peterson氏 (A)

4. TOM: 原因を解き明かす

技術・オペレーションマネジメントコースの最初のモジュールは、プロセスフローのメカニズムに関することである(工場や注文生産工場など)。その他のモジュールは、技術革新やサプライチェーン・マネジメントに関することだ。

私は、最初のモジュールが大好きだった。律速段階とは何なのか、そしてそれがなぜ数学パズルに似ているのかを解き明かすのだ。このモジュールの一番いいところは、時には単純な問題が全オペレーションを遅らせる要因になるという点であった。つまり、最も遅い段階が一番考慮すべき点であり、これが他の全てを台無しにするということだ。何が問題になり得るのかを明らかにすることが重要なのである。だが、膨大で複雑化したデータを扱う場合、しばしば、何か問題なのかを解明するのは困難となる。

これを行う能力が備わっているかどうかを確かめることができる、2つの事例を紹介しよう。

プロセスフローに関してはNational Cranberry Collective
より大規模な同様のコンセプトはトヨタ生産方式を見てほしい。

5. FRC: 企業家のギャップを生み出す

FRCは、HBSでの「アカウンティング」のことである。アカウンティングのメカニズムだけではなく、動機付けや補償についても多く学ぶ。

私が気に入っていたのは、従業員は何に対して責任があるのかという「アカウンタビリティの範囲」と、従業員が彼らの仕事において何を決定するのかという「コントロールの範囲」の考えについてである。例えば、プロダクトマネージャは多くのアカウンタビリティ(製品の出荷)があるが、コントロールは比較的少ない(直属の部下がいない)。

従業員がコントロールよりもアカウンタビリティを多く持った場合、これを「企業家のギャップ」と考えることができる。これは通常、従業員自身が、コントロールの範囲を超えられるよう、後押しとなるインセンティブ・システムを通して作られる。ここで注目すべき点は、インセンティブ・システムを正しく活用することである。どのような行動が従業員の後押しとなるのか? どのような手段で従業員のメトリックを変えられるのか?

以前であれば私は、賢い人を雇い、「公平」な判断のもと給料を払っていた。今では、賢い人を雇ったら、彼らのため、また会社のために上手く機能するインセンティブ・システムを使って、企業家のギャップを与えるようにしている。この方がより公平な方法なのだ。

推奨事例:ノードストローム

その他、ボストン小児病院での労働時間 対 活動基準原価計算もとても楽しいクラスであった。いかに莫大な費用がかかっているか、そして費用管理についての内容である。

6. MKT: 価値に応じた価格設定を検討する

マーケティングは、最もフレームワーク化された科目である。5つのCに4つのP、そして6つのMといったブランドピラミッドだ。私は、このマーケティングで最も具体的なスキルを学べたと思う。

価格設定には、主に2つの種類がある。原価に基づくものと価値に基づくものだ。原価に基づく価格設定では、サービスを提供するのにどのくらいの原価が必要なのかを見つけ出し、それに利潤を加える。そしてその金額を販売額とする。

価値に応じた価格設定の背景には、以下の2つに大きな差があるという考え方だ。

1つは、製品を作るための費用、そしてもう1つが他の会社が値引きする金額だ(もしくは、更にどのくらい多くの製品を売れるか。だがこの場合は、製品に与えられる財務的影響である)。

この2つの間のどこかに金額を設定するべきである。

私は、このスペクトルの最高値で金額を設定することはないが、代価以下の金額に設定にしないように、この2つを書き出す必要があることは分かっている。

この事例は、コカ・コーラの自販機で見ることができる。しかし、私が気に入っているプライシング・モジュールの事例はロンドン五輪の価格設定である。

7. TEM: 信頼する相手を慎重に選ぶ

これは多少冗談が入っているが、私は人を信じやすく、また私の多くの友人もそうである。

クラスでは、スタートアップ企業のYieldEXの事例を扱った。この会社は、ある技術者によって設立されたのだが、当時、会社を売却するか、もしくは大きくしていくかを検討していた。簡単に推測することができると思うが、当時売却はされなかった。Yieldexは最近AppNexusに買収されている

この事例の詳細は記述しないが、クラスには異なる意見を持つものが数名いた。私は個人的な興味は取り除いた上で、質問してきた人に対して純粋に助言をしようとした。他の者に対して良かれと思っての行動だったし、彼らもまた私と同じことをすると思ったのだ。

私の考えは受け入れられたのだが、「自分にとって都合がよく、誰もが利己的であると信じていれば、世界は上手く動く」という反対の意見も確かにあった。

この時の議論は、私のキャリアにおいて、他の者の意見をどう捉えるかということに影響を与えたことは言うまでもない。これから会社を一緒に設立する可能性のある人たちやベンチャーキャピタルは、あなたにとっての最善の利益を願っているかもしれないし、そうでないかもしれない。状況を慎重に判断すべきである。

8. START: 財務諸表から戦略が明らかになる

戦略とは、業界における原動力、そして業界での立ち位置を明らかにする方法である。

財務諸表を見れば、競合他社の利益がどこから生まれているのかを確認することができる。製造原価は安いのか? 管理費用が抑えられているのか? もし企業が低コスト戦略を推し進めているのであれば、他のところに費用をかけているのか? それはどこなのか? なぜそうしているのか、またどのようにして全体的な戦略につなげているのか?

財務表を検証することで、推測でしかなったことが、戦略として見えてくるのである。

ウォルマートの事例を見れば、それがよく分かるであろう。

9. BGIE: 同様の政治問題が至るところに現れる

政治問題についてはうんざりさせられる。私は、可能な限りこの手の話を避けるようにしている。なぜなら、単純に政治については疎いからである。

各国で20以上の事例を扱うことで、政治が私に教えてくれた重要なことが1つある。それは、異なる政治状況にも類似した部分がたくさんあるということだ。基本を学び直すのはそう難しいことではない。国際情勢に関するやり取りを維持していればいい。

その1つがGUIDESの指標である。これは、一般的なマクロ経済指標のいくつかに重点を置いたものだ。

また、その他の問題では、多くの価値を見出すことができる。イギリスの植民地政策、国 対 州、オランダ病(資源の呪い)、ソブリンファンド、輸入代替、経常収支、財政赤字、IMF金融引き締め政策、フリーキャッシュフローや独立金融政策、固定為替相場の「トリレンマ」。

これらの問題は、アイスランドからインドネシアナイジェリアといった世界各国に現れている。夕食会の席で、無言でいるのを避けるためだけでも、これらについては学ぶべき価値がある。

10. LCA: 直感が間違っていることもある

リーダーシップと企業倫理の科目は、倫理学と酷似している。授業を通して、財政的、合法的、倫理的に選択の意味合いを検討するフレームワークを発展させる。

多くの人は(私も含め)、直感を頼りに物事の良し悪しを決めている。LCAでは、あらゆることを考慮した上でフレームワークを使って判断することを教えている。最初は難しくなっていくと感じるが、次第に直感を頼りにすることができるようになる。

良い例が、イラクで起こった暴徒化である。この内容を読むと、誰かに電話をしたくなる衝動に駆られるかもしれない。そして自分自身を反省して心を入れ替えることだろう。

この科目、そして率直にこれら全部をまとめると、Oliver Wendell Holmes Jr.氏が述べた、以下の引用の一言に尽きる。

複雑なもののこちら側にある単純さなど、私は問題にしない。だが、複雑なものの向こう側にある単純さに、私は人生を捧げる。- Oliver Wendell Holmes Jr.氏

この記事に掲載した全てのレッスンは、HBSの複雑なものの向こう側にある私のシンプルさと言えよう。


Aldrich 011 – 昨年私が、MBA 2016 Section Eを受講した際の教室