Appleから学ぶ「体験、そしてデザイン」という哲学

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Praxis事業開発ディレクター
@DiscoverPraxis
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あなたがもし若く、世の中で成功したいと思っているなら、一番の方法はプロジェクトを始めることだ。長期間、継続的に従事する必要のある本格的なプロジェクトを設計し、体系化し、実行するということは、最もやりがいのある学びの場となる。あなたが学習し、成長し、そして希望する分野で成熟するため、最大の新たなチャンスを提供してくれるだろう。

しかし、何かを構築するということは、苦労を伴う。

まったく新しいものを作ろうとする場合は、より一層大変だ。製品を構築するということは唯一無二の行為だ。新しいことが新しいままなのは一度きりで、新しい何かを構築するプロセスもまた等しく難しい。指導者や助言者、同僚、そして潜在的な競争相手から刺激されたり、助言をもらったりするかもしれないが、その人たちにとって有効だった事柄が、あなたの場合に特別に当てはまるとも限らない。

どのような製品であってもそれを実際に作り上げるプロセスは、本質的に分からないことで満ちている。何かを作り上げるプロセスの先頭に立っていれば、どのタイプの会社を合併するのか、またはどう製品を実際に収益化するのか、といった決断をするのに、心身ともに疲れることだろう。

思い描いてみてほしい。細かい先行作業を終え、チームを結集し、戦略を練り、製品を構築する準備ができた。ここまで来ても、「次は何をするんだっけ?」と圧倒されるような感覚を持つかもしれない。

オプション1: 機能を最初に構築する

何かを構築する時、最初にテクニカルな部分を作り、その後ユーザ体験を作るだろうか?

それとも、ユーザーエクスペリエンスを最初に作り、技術的な面に関しては先延ばしにするだろうか?

あなたが問題解決を常に考えるような実務的な人なら(つまり、思い浮かべる製品が既存のシステムのハックである、というようなエンジニアリングまたは思索タイプの人なら)、技術的な面を先に構築したい誘惑にかられるのではないだろうか。コンセプトは頭の中にあり、文書にもしてある。あとはコードを設計し、たくさんの開発者たちと内容を検討し、ターミナルの前で数日間タイプをカチャカチャ打てば、ちゃんと機能する製品が手に入る。美しいユーザーエクスペリエンスは後からいつでも作ることができるし、開発された製品がなくてはデザインを作るにも手間がかかりそうだろう?

それは間違っている。

オプション2: ユーザーエクスペリエンスを最初に構築する

まずユーザーエクスペリエンスから着手してほしい。構築する製品の構想を持っているエンジニアや思索家が1人いれば、その1人につき1ダースのユーザーが、直感的じゃないインターフェースに悩み不満を抱えている。そして彼らはその製品から歩み去ってしまうのだ。

消費者の製品への要求に迎合せよということではない。まずデザインからスタートして、そこから開発に立ち返れということなのだ。消費者が現在は別に欲しいとは思っていないような製品のアイデアを考え、既存のものよりもよい体験を提供することで消費者がそれを欲するように仕向け、問題も解決できることを証明するのだ。

「体験、そしてデザイン」というこの哲学の分かりやすい例といえばApple社の全製品ラインだ。1980年代のMacintoshから2000年代のiMac、そして2010年代のiPhoneまで、Appleはまずユーザーエクスペリエンスを念頭に置いて製品をデザインしてきた。Appleはラップトップと携帯電話の市場で相当なマーケットシェアを獲得した(そして事実上、タブレット市場を創出した)。これは消費者が望む、直感的なデザインに何年も重点的に取り組んできたからだ。使いやすいiBook(後のMacBook)、iPhone、そしてiPadを使いたいがために、人々は性能が高く(比較的)安価なマシンの元を去ったのだ。

この哲学は1997年、Steve Jobs氏のリーダーシップの元で非常に顕著になった。それより10年以上前に会社を追われたJobs氏がカムバックしてから間もない’97年のWWDCでのことだ。会場から悪意のある質問が発せられたが、それに対してジョブズはAppleの運営哲学を要約して答えとした。その哲学こそが、Appleを世界でもまれにみる最もパワフルな会社のひとつとしたのだ。

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これは私が繰り返し学んできたことですが、まずユーザーエクスペリエンスから始めて、テクノロジーに立ち返るべきなのです。テクノロジーに着手したあとで、どこに売ろうか考えても無理です。この会場にいる誰よりも多く、私はその失敗を何度も犯してきました。それを証明する手痛い傷も負ってきたので、確信しています。 — Steve Jobs氏

この哲学によってAppleは今日の地位を築いたのだ。一般的なコンシューマ指向の製品では、どのような産業でもほとんど同じようにできるはずだ。Uberの人気が高いのは、使いやすいからだ(アプリを開き、ボタンを押せば、車が配車される)。Airbnbの人気が高いのは使いやすいからだ(Webサイトに行き、ホテルを予約するのと同じように、地域と日付を入力し、オプションを選べばいいのだ)。

もちろん、専門性に特化した製品の場合、この戦略はそれほど有効ではないかもしれない。会計ソフトや手術用ロボット、法律の判例ソフトウェア、そして原子核破壊装置などは複雑に作る余地がない。これらの産業においては、UXとテクノロジーの妥協点は、限界利益よりもずっと高いのだ。

直感的で、使いやすく、楽しい体験から構築する

もしどこから手をつけていいか分からず苦戦しているのなら、2つのオプションがある。

オブション1.
まず、最初にテクノロジーを構築し、そのテクノロジーとぴったりくるユーザーエクスペリエンスをまとめあげ、市場に出してみて消費者が気に入ってくれるように祈ってほしい。気に入ってもらえなかったら、文句を言おう。消費者はこのすばらしいテクノロジーがもたらす明白な利益を享受する機会を失っているとか、移り気すぎる、などと。

オプション2.
まずユーザーエクスペリエンスを構築し、それに合わせてテクノロジーを作る。ユーザーエクスペリエンスは使って楽しいものがいいだろう。体験の中に機能性を見つけられなかったら、いつでも、直感的で、使いやすく、楽しい体験から構築していけばいいのだ。
あなたの製品を使いやすく、役に立ち、そして見つけやすいものにしてほしい。