Apple MusicのUXにおける3つの欠陥

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本記事は100%、Apple Musicをデザイナー的見地から考察したものである。サービスのコンテンツや楽曲などについてではなく、純粋にUXについての見解だ。

私自身は長年のSpotifyユーザーであり、そのサービスには非常に満足していたが、Appleが今回いかにして再び天下を取るのかというところから興味をもってApple Musicを使ってみた。なお、今回は主に私がいつも使っているデスクトップバージョンに基づいた意見を述べている。

洗練された印象とのギャップ

まず最初に見た印象はとても良い。この音楽ストリーミング配信サービスについて調べるためにAppleのWebサイトを訪れたのだが、そのクオリティには非常に感銘を受けた。素晴らしく、活気に満ちあふれ、モダンだ。AppleのWebサイトなら欲しい情報を楽々と見つけることができる。優れた構造に素晴らしいタイポグラフィ。スペースもうまく使われている。洗練されているのだ。まさにAppleと言えるだろう。私はApple Musicを試してみることにした。悲しいことに、実際の製品に触れた瞬間から、すべてが音を立てて崩れ始めた。

Apple Musicのマーケティングで重視された点は、ユーザ向けの立派なプレイリストを作るために、個人の音楽の好みを見いだす、いわゆるインテリジェントな機能を持たせることだった。少なくともこれまでは、そうではなかったのだ。

私は、自分の好きなジャンルや楽曲、アーティストを選ぶことに、かなりの時間を費やしてきた。好きではないものを徹底的に除外したかったからだ。だから、私の好みについて情報収集が行われた10分ほど後に、実際に不愉快なオススメを受けることになるのには本当にイライラさせられた。

私の好みだということで、Apple Musicが私にオススメとしてアーティスト(それは以前に、「好きではない」とマークしたもの)を提案したのだ。私が問題にしているのは、毎日Spotifyがオススメしてくれる数の、文字通り10分の1だということでも、そのオススメの仕方がひどいということでもない。

欠陥1. 使いにくさ

10年以上も昔のiTunesのレイアウトを使い、そこにすべてを詰め込んでもうまく機能はしないだろう。古いものでは限界がある。それはどう見ても明らかで、イライラさせられる。この新しい音楽ストリーミング配信サービス用に作られたものではないことが一目瞭然だったのだ。

10年以上も昔のiTunesのレイアウトを使い、そこにすべてを詰め込んでもうまく機能はしないだろう。

音楽をストリーミング配信するというコンセプトは、音楽を購入するという形態とは大きく異なるものだ。音楽を購入する場合は、とてもシンプルだ。お店に行って、お気に入りを見つけたら、それを購入して聴く。あなたの音楽ライブラリインタフェースとお店のインターフェースが分かれていても構わない。しかし、ストリーミング配信される音楽を購入する場合は、ソフトウェアとどう情報をやりとりするかというところのパターンがまるで異なってくる。あくまで私の場合だが、まず楽曲を探すことに一定時間を費やすし、楽曲を見つけるプロセスも無限にある。料金やディスク容量に限度はないし、探せば探すほど素晴らしい楽曲が大量に見つかるのだ。誰もがお気に入りが見つかったらプレイリストに加え、そのアーティストが好きなら名前をクリックして見つける。ドラッグ&ドロップでプレイリストを変更すれば、あとは楽しむだけだ。

音楽ストリーミング配信サービスの使用中、あなたの音楽ライブラリとサービス側のライブラリは同期している。Apple Musicではそうなっていない。そして、それこそが失敗の要因なのだ。

このサービスの使い勝手を悪くした要因は、時代遅れの古いデザインに固執したことにある。楽曲を管理したり、プレイリストを作成したり、また人気のある楽曲を試聴したりといったことができる手段がないのだ。プレイリストに一度に2つ以上の楽曲を追加することが簡単にはできなかったり、1つのプレイリストとして”注目トラック”のみを再生することができなかったりする。私は、自分が楽曲をコレクションしているライブラリとサービス側のライブラリとが分かれているという何とも扱いにくい仕様がApple Musicにおける主な問題点だと考えている。しかし、問題点はもう1つあるのだ。それは、Apple Musicがそれほどソーシャルなサービスではないということだ。

欠陥2. ソーシャル機能の欠如

私がSpotifyを楽しむ大きな理由の一つは、このサービスが非常にソーシャルなものだからだ。私は友人の活動を積極的にフォローしている。また、他のユーザーのプレイリストをいつもWebで閲覧している。私にとっては、それが新たに最高の楽曲を見つける最良の手段であり、Spotifyならそれがとても簡単だからだ。

Apple MusicにもConnectという機能があり、Pharrell Williamsから投稿された最新の画像を見られることは知っている。しかし、それ以外に何か知っているだろうか? それより、私はTobias van Schneiderが投稿した新しいプレイリストや友人が見つけた新たな素晴らしい楽曲の方にずっと興味がある。

Apple Musicでは友人をフォローすることができないし、他のユーザが作成したプレイリストを探すこともできない。それに代わる機能がキュレーションによるラジオステーションだ。Appleとその仲間によって選曲されたプレイリストになる。私にとっては、何とも扱いにくいものだ。

欠陥3. デザイン

3つ目は、私にとって最も衝撃的だったものだ。断っておくが、私はAppleの製品について言っているのではない。Apple Musicのデザインに非常に大きな欠陥があるのだ。


構造が分かりやすく読みやすいSpotifyと比較すると、扱いにくいものになっているApple Music

私は装飾的な部分について言っているのではない。例えば、カラーの配列や書体の選択などだ。そうではなく、もっと基本的なこと、つまりインフォメーションアーキテクチャや階層、レイアウト、読みやすさなどについて言っているのだ。Apple Musicで唯一はっきりしていることは、混乱を招くということだ。

デザイン上の主な問題とは? それは直感的で分かりやすいナビゲーションがないことだ。あなたが覚えていなければ、その構造におけるどこに自分がいるのか説明することができないのだ。

Apple Musicのメインとなるページ、つまりプレイリストや注目トラック、Top曲、アーティストを閲覧できる場所に、「Apple Music」あるいは「Music」といった名前ではなく、「New」という名前が付けられていることからも明らかだ。

他にも、些細なことではあるがイライラさせられることがあるので、以下にいくつか挙げたいと思う。

  1. プレイリストとして注目トラックを再生しようとしても、できない。
  2. Top曲リストからプレイリストへと一度に数曲を追加しようとしても、できない。
  3. あるいは3、4回のクリックでプレイリストに楽曲を追加しようとしても、できない。
  4. Beats 1で再生中の曲をサードパーティのアプリケーションを使わずに確認しようとしても…。
  5. あるいはプレイリスト上のどの曲を聴いているかを確認しようとしても…。
  6. アルバムからプレイリストに全曲追加しようとしても…。


プレイリストに素早くアルバムすべてを追加しようとしてみると…

率直に言おう。Apple Musicをしばらく使ってみると、Spotifyにおけるデザインの細部を崇拝するようになった。それは、再生中の楽曲がプレイリストでハイライト表示されるという点だ。また、プレイリストは常に一目瞭然で、そこへ簡単なドラッグで楽曲を追加できることだ。あるいは、Spotifyのスタート画面のシンプルな見た目もそうだ。


Spotifyの価値あるコンテキストメニュー

Apple Musicには主に3つの欠陥がある。使い勝手の悪いデザインになっていることと、意味のあるソーシャルな機能が欠如していること、そして(Appleの製品ではなく)デザインにある非常に大きな欠陥だ。

Apple Musicは未熟だ。使い勝手の悪いデザインになったのは、完成までのステップをおろそかにしたからか、あるいは急いでいて完成に至らなかったからか推測されるが、いずれにしてもフォローをしているつもりはない。

しかし、大丈夫。Apple Musicには素晴らしいライブラリはあるし、価格も妥当だ。家族みんなで使用できるファミリー共有だってある。さらには、同時に2つのデバイスで楽曲を再生することもできる。ただ、せいぜいフィアットであって、メルセデス・ベンツではないというだけだ。現状のApple Musicでは、他の音楽ストリーミング配信サービスにとって脅威となることはない。Appleクラスの製品とは言えないだろう。


この記事は2015年7月に書かれたものです