アートにお金を払ってもらう4つのポイント — 海外ギャラリストの視点

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人はどの様にアートにお金を払うのか?

現代アートギャラリー経営の経験を基に、アートを購入する本当の動機、背景、引き金について、理解を深めていきたいと思う。

まず、私は6ヵ月以内にアートを購入した人へのインタビューを行った。その中でも、私がまだ知らない部分を発掘するため、特に低価格帯(購入価格がおよそ6万円以下)のアート市場に焦点を当てた。

この記事では私が学んだアートを購入する際の4つのポイントに重点を置いて説明していきたいと思う。

1. タイミング

インタビューを通して、3つの共通する状況がアートの購入を促していることが分かった。

物理的スペースの変化
新しいオフィスへの移転、新しいマンションへの引っ越しなどをすると、今まで以上に物理的な空間へ注意が向くようになる。そうすると壁の空いているスペースに気が付き、そこを埋めたくなるのだ。

お祝いの記念
お祝いの記念として、長く形の残る物が欲しくなる特別な状況がある。特別な休暇、結婚、卒業、初就職、昇進などだ。
(この背景において、アートは宝飾品、家具、少し高めの財布やブリーフケースなどの小物と競い合う。)

お付き合い
仲間内からのプレッシャーが引き金となり、アートを購入する動機になる特別な状況がある。チャリティーイベント(イベントでは無料でお酒を飲めますが、ただより怖いものはないだろう?)や、生活に困っているアーティストの友人を助けるためなどだ。

2. アートの持つ魅力

ここでもいくつかのグループに分類することができた。

視覚的な魅力
これは分かりやすい購入理由だ。多くの人々がアートに対して直感的な反応を示す。そして、それがアートの購入を後押しする重要な要因となる。


「Ontario」 LandStyleのために描かれたOrlin Mantchev氏の作品

感情的な引き金
多くの購入者が、作品によって自身の幼少時代や好きだった場所を思い出したり、作品に隠されたアーティストの秘話などを知ったりすることで、ある種の感情的な反応が芽生えたと語ってくれた。インタビューの中で、その感情の芽生えから最終的に購入に至るまでの関連性を説明してくれる人はあまりいなかったが、私はそこに大きなエネルギーと感情が存在していると感じた。

他者へのアピール
これはとても興味深い購入理由のひとつだ。今回のインタビュー対象者で、これを購入理由だと明言する人はほとんどいなかった。しかし、インタビューの回答の端々からそれは伝わってきた。たとえ低価格の作品であっても、アートを買うことが同僚、友人、家族に対して、自身の生活の余裕、素養、幸福感を示すと考える人もいるのだ。

3. 購入の阻害要素

このトピックに関するインタビューはとても有意義だった。多くのエネルギーと感情が溢れ、コレクターとしてだけでなくギャラリー経営者として、多くのことを直接聞くことができた。

額縁
購入したアートを、どのように額を作り、壁に掛けるのか分からないと困っている人が多くいた。普段からアートを買わない人は、ほとんどの場合、額をどこで買うかすらも知らない。また、購入した作品のため額をカスタマイズしなければならないが、その値段に驚く。これの興味深い点は、購入前と購入後の両方で起こることだ。購入前は販売の障害となり、購入後に起こる場合は「消費」の障害となる。

永続性
多くの人がアートの購入は、大きな決断だったと感じていた。なぜなら、飾るのに場所をとるし、その空間に影響を与えるからだ。アートの購入を、ある種の永久的な決断だと考えてしまい、それが購入の決断を鈍らす原因となる場合がある。

送料
他の商品のオンライン購入と同じように、送料は購入を決意する際の懸念事項のひとつとなる。私がインタビューをした人々は、オンラインで予算に合ったアート作品を見つけても、送料がかかると、たとえ購入金額全体の中ではわずかな金額であったとしても断念すると答えた。

4. 無意識的に買う

これは、私にとって一番、理解しがたいものだった。実際、理解できない唯一のものだと思う(読者の皆様のためにも、この点について更に考えたいので何か意見があれば教えてほしい)。

アート購入者としての自覚
絵画のコレクターとは、黒いスーツに身を包み、夜は白いキューブ型のミニマルなギャラリーで過ごし、いとも簡単に数千ドルを支払っていくような人たちだ。とアート産業は人々を騙してきた。

この定義に照らし合わせると、私のインタビューの対象者たちはコレクターとはいえない。だから人々はアートを探したり買ったりすることが習慣になっていないのだ。

実際にアート(例えば限定エディションのデジタル画など)を購入した時でさえ、彼らに「アートを購入した」という自覚がないのだ!

アートにお金を払ってもらうための改善案

カスタマーリサーチは、単独では役に立たない。インタビューで得られた新しい仮説を元にテストすることが大切だ。では、私の現在の仕事に戻って考えてみよう。いくつかの実験をしてみることにした。

  1. 額を作る必要がなく、標準的な額に合うサイズのアートを提供する
  2. 国内の送料を無料にする
  3. アート産業に属さない人の視点でアートについてのブログを書く。つまり、口語体の自然な言葉遣いで「くだらない質問」をする。そうすることで、現代アートのとっつきにくさを軽減するのだ。

もし、皆さんの市場や顧客への理解をより深めるためにJTBDインタビューをお考えでしたら、ぜひ私にご相談ください
本原稿の執筆の際、助けてくれたMarc GalbraithCasper Klenz-Kitenge、そして最初にJTBDについて教えてくれたRe-Wiredの皆さんに感謝します。