今後のUXデザインツールの正しい使い方

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Philips Design イノベーションデザイナー
Team Canvas」作者
IDEOHyperIsland在籍

次々と出てくるデザインツールの背景と問題点、そしてデザイナーに求められる能力とは?(後編)

前編 → 「これ以上UXデザインツールは必要ない」


正しくツールを使う6つのポイント

1. プロセスの一部ではなく全体を把握する


500 MakersはProduct Huntで頻繁に出てくる製品の1つである。新世代のクリエータは開発やデザインの終了地点やマーケティングの開始地点などを気にする様子はない。

製作者のコミュニティの増加は、職人技の考えの変化のいい例だ。ソフトウェアエンジニアやデザイン、マーケティングなど様々な経歴を持ったプロが、最速で需要のある製品を提供し、フィードバックから学び製品を改善するという共通の考えのもとに集まっている。

一見、直感とは相容れないように思えるが、多くの場合、デザインの見た目は実際に提供するまであまり重要ではなく、世に出した後に学ぶべきことを学べばいいのだ。FacebookのプロダクトデザインディレクターであるJulie Zhuo 曰く「デザイン思考は製品思考になりつつある」のだ。

2. 異なる視点/思考で考える

Edward de Bonoの6つの帽子思考法をご存じだろうか。著者曰く、複雑で創造力を要する問題を解決するには、6つの思考タイプを象徴する帽子を順番にイメージでかぶって考えるのだそうだ。

デザイナーも同様の方法でUXやビジュアル、技術やビジネス、そして成長を象徴する帽子をかぶって付加価値のある製品の製作に取り組めばよいのではないだろうか。


VIABILITY (ビジネス) DESIRABILITY (人) TECHNICAL (技術)
技術的に実現可能な解決策に合致させる必要はあるものの、人間的要素と相互作用、ビジネスの実行可能性やマーケティング戦略を念頭に置くことは、デザイナーの日常作業の一部となるのだ。

よくある事例を挙げよう。デザイナーがある解決策を提案するが、開発者は使用されているフレームワークの観点からみると違和感を覚えると言う。この時点でデザイナーはフレームワークの機能や条件を全く考慮していなかったことに気が付くのだ。

問題は直感的な研究や共感を呼ぶ発見のためにツールがデザインされるのではなく、生産性の向上や慣習の維持のためにデザインされているのだ。この点が次の点へとつながるのだ。

3.実現したいことに応じてツールを選ぶ

特定の体験に対して形作られた仮定がある場合のみ、適したツールを選んで使用する段階に進むべきなのだ。逆はありえない。SketchFramer.JSInVisionPrinciple、単にHTMLやCSS、WordPressMeteorTypeformReadymag、あるいは他のツールの使用を決断する場合は、使用する必要があり、製品に関する仮定や制約、進めるための条件などが揃っている必要がある。


TypeFormは予想される製品の動作の初期試験あるいは大部分の動作試験に用いるのに十分である。

不要なツールの使用を停止するとか他のツール、例えば別のアプリ、Webプラットフォームあるいはハードウェアのプロトタイピングキット、マーケティング主導の生成エンジンに切り替えられる柔軟な対応が必要だ。ツールの概念はデザインの概念と共に変化するものだ。

4.「体験の質」という結果を想像する


『禅とオートバイ修理技術』

とてもいい本なので、読んでみてはどうだろう。

「結果を想像する」をどのように定義するかは、繰り返される作業において重要となり、どのツールを今使っているのかにおいてはそれほどでもない。著書の『禅とオートバイ修理技術』で、Robert Pirsigは「質」や「価値」は知覚体験によってのみ実感できるもので、瞬間的に知性では理解しきれないものと定義している。同様に、もし想像する体験の質を「結果」と定義した場合、最小限の条件設定で想像した体験を実現し、観察し、発展させることにデザイン思考を巡らせられるだろう。

5. 経営者目線でデータを分析する

実験は、意思決定を助ける一般的なツールとなりつつある。それに従い、私たちはより良い製品とエクスペリエンスをデザインするために、どのようにデータを解釈し、利用するかを理解する必要がある。

人間中心設計に基づいたデザインの最も基本的なモデルにおいては、ユーザのために問題を解決する際、ユーザニーズに共感できるような手法を用いる。どのような新しいプロトタイプであっても、定量的なデータを幅広く入手できるようになった。そのため、より良いデザイン上の決断を下すには、そうした情報の活用方法を学ぶ必要がある。分析担当者やプロダクトマネージャや開発担当者任せにすれば、それは第三者の解釈に頼ることになる。そうすれば、それをデザインの過程に適用する際に苦労することになるだろう。


Meteorのような開発プラットフォームにより、デザイナーはリアルなユーザーデータを生成するプロトタイプを作ることが可能になる。

Douglas Hubbardは著書『How to Measure Anything』で、測定の方法について述べている。正しい質問を投げかけ、たとえわずかな量のデータでも分析を行うことにより、多くの情報を得て有益な決断ができるという。Hubbardはいくつかの洞察を挙げているが、これはほとんどあらゆることにあてはまる。

  1. 自分が思うほど、自分の抱える問題は独自なものではない。
  2. 自分が思う以上のデータを手にしている。
  3. 自分が思うほど、データは必要ではない。
  4. 自分が思うよりも、適切な量の新しいデータは入手しやすい。

問題は、データを測定し、解釈する方法を知らないため、手にしているデータが価値あるものだとなかなか思えないという点にある。これを表す例を挙げてみよう。創設者として自分でビジネスを立ち上げたと考えてほしい。たぶん、誰もが自社の正確なコストと収益を計算しようと考えるだろう。立ち上げ当初はいろいろと問題が多い。しかし、分析さえすれば、収益があがるかどうか(Yes/No)が明らかになり、意思決定をするには十分と言えるだろう。

6. チームコミュニケーション

技術革新を通して言えるのは、人類の劇的な変化のほとんどが、ハードウェアの革新を通してもたらされたということだ(例えば、鍬、蒸気機関、トランジスタなど)。しかし過去20年間、革新の多くがハードウェアとソフトウェアの組み合わせによるもの、もしくは、ソフトウェア単独によるものだった。ソフトウェアの進歩はハードウェアよりも速い。これは、ソフトウェアの性質が分散的だという理由が大きい。そして、ほとんどのデジタルプロダクトデザインの進歩も、ソフトウェアと同じように速い。

私たちは程度の差こそあれ、現在も、iPhoneが発売された2007年当時とほとんど同じプラスチックや金属、ガラス製の本体を使っている。しかし、プラットフォームやビジュアル言語、可能なインタラクションなどの多様性は劇的に広がっている。

こうした状況下で、私たちは狭い範囲で専門的に深く掘り下げるか、幅広く浅い知識を持つか、どちらの選択も可能だ。あるいは、ソフトウェアに適用するデザインだけではなく、人間の相互作用にも適用できるように焦点を絞る選択も可能である。

Eliyahu Goldratのマネージメントを題材にした小説、『ザ・ゴール』では、製造業務に関する問題に直面した主人公が、問題を1つ1つ特定し、重大な障害を取り除いていく。それによって主人公は、工場全体の生産能力を劇的に改善することになる。


Team Canvasはチーム内のコミュニケーションを改善するツールの1つ。共同作業でのデザインの過程をより容易にする。

実に多くの障害が、デザインの過程における人間の相互作用と役割に関連している。非常にクリエイティブな人々が集まったチームで働くことや、効果的なフィードバックを与えたり受け取ったりすることを通して、共同で効果的にデザインを進める方法について学ぶことはまだまだたくさんある。

こうした意味で、情報やコツを共有したり、良い関係を築いたりすることに時間をかけるべきだ。このように変化が起きると、私たちは、集団行動への心構えをし、選択肢について十分な知識を入手し、ただちに活動できるように、あらゆる新しい技術を学ぼうという姿勢になる。

今後のデザインツールの5つの変化

デザイナーが直面する様々な変化に対応するため、使用するツールも同様に変化していくだろう。

1. チームコミュニケーション用のデザインツールが増えていく

それは詳細なフィードバックや資材開発のための単なる道具ではなく、人と人をつなぎ、視覚的な思考を促し、共同で創造するためのツールである。

2. デザイナー用のツールは開発者用のツールに近づいていく

デザイン畑出身の製作者と、元ソフトウェアエンジニアだった製作者の間には、ほとんど違いがない。違いを挙げれば、それは全て、面倒なコーディングと、我慢強さと、運の良さに関係するものである。


出典:https://twitter.com/maebert/status/629685513012793344

FramerJSFuseのようなツールは興味深いパスを設定する。つまり、インタラクションへと翻訳するために、開発の構文や語彙を単純化しようとする。もしあなたがデザイン以外の分野の出身ならば、Meteorなどの開発プラットフォームがあっという間にデザインツールそれ自身になってしまったことに気が付いたかもしれない。それによって開発のフロントエンドとバックエンド、さらにdependency management は、アマチュアの開発者にとってさえ、いともたやすいものになる。

3. いずれにせよ、コーディングの知識は必要

これは納得できる。学校に通う子どもたちが、授業の一環としてコーディングを学んでいる。私たちの生活は誰かが開発してくれたソフトウェアの上に成り立っている。そしてソフトウェアがどのように動くのかを知らないと、多くのことを見逃してしまう。私たちは、自分でソフトウェアを製作する機会が多い。デザインの過程を強化するにはコーディングを学ぶ必要があるということは、実によく理解できる。このことは、次の点にもつながる。

4. プログラミングツールはより身近なものとなる

デザイナーとプロトタイプの製作者は、開発の基本的な方法は何十年も変わらないと、長年訴えてきたが、最近になって事態は急速に動き出した。いくつもの大手アクセラレータが支援先として探しているのは、コーディングの過程の簡素化を目指すスタートアップだ。

Y Combinatorは、スタートアップに求めることを述べているページで、次のように語っている。

私たちの社会の大半の人々が、より簡単にソフトウェア開発を身近に感じられるような製品を作ることが特に重要であると信じている。実際、私たちは、新しいプログラミングの方法に関心がある。きっと、もっと簡単にプログラミングできる方法があるはずだ。それを見つけ出すことは、社会に大きな影響を与える。フレームワークの質は向上し、プログラミング言語は賢くなってきているが、プログラミング自体には何の変化もない。「プログラミング言語の次には何が来るのか? 」と考えてみるのも1つの方法だ。

こうしたことを踏まえると、仮説と学習の間の距離を縮めるために、開発者と共にプロトタイプを作り、共同製作できるようなフレームワークを探すことが大切だということは理解できる。

5. 組織内の文化的な基盤がより一層必要となる

デザインコンサルティングの分野における先進企業であるIDEOのような会社は、めざましい結果を何度も生み出すような正しい文化を確立することの価値を理解している。一度、開放的で価値駆動的な文化を創出すれば、そこでは誰もが、失敗を恐れずに自由に経験し、構築し、共同で作業できる。創造的な成長を育む環境を自然と作り出すことになる。ビジネスの本質は、工業デザインからサービスデザインやデジタルデザイン、さらに組織デザインへと変化するかもしれない。しかし、確固とした文化的な基盤があれば、どんな時でも新しい技術を選び取り、進化することは容易なのだ。

まとめ

様々な場所で発生している応急処置が、やがて、より有意義で協調的な解決策へと収束し始めるような、はっきりとした兆候が見られる。そうした解決策によって、デザイナーが必要とされるゆえんである、実現可能な未来を即座に心に描き進化させるという作業が可能になり、さらには視覚的デザインやコーディングも可能となっていくだろう。