これ以上UXデザインツールは必要ない

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Philips Design イノベーションデザイナー
Team Canvas」作者
IDEOHyperIsland在籍

次々と出てくるデザインツールの背景と問題点、そしてデザイナーに求められる能力とは?(前編)

The Slight Edge』という本の中で、起業家でもある著者のJeff Olsonは、なぜ情報と知識だけでは直面する問題を解決できないのか説明している。その際にアルコール中毒に悩むホームレスの例を出している。


ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが双子を生んだのでプレゼントを買うお金が必要です。

恵んだお金がプレゼントに使われるのかは疑わしいものだ。

Olsonは過去20年から30年の技術と医学の進歩で、アル中を完全に克服するために必要な情報をUSBメモリで渡すことができるのだと言う(例えば、12ステッププログラムのビデオや書籍、講義やサポートグループの連絡先など)。しかし、このように簡単に情報を与えたからと言って、アルコール中毒の克服には至るわけではない。

反対にあらゆる薬物(あるいはドーパミンの分泌を増進するもの)の中毒になる人は毎年増え続けている。著者曰く、多くの人に役に立つ情報を与えたり手にすることができるようにするだけでは解決にならないのだ。それは、問題が根本的に別の次元に存在するからなのだ。問題の解決策にも同様のことが言える。

ツールの多様化は応急処置にすぎない

デザインの世界に話を戻そう。過去数カ月間、新しいデザインプラットフォームの爆発的増加が見られる。FigmaやAvocade、Mervel、Fluid for SketchやAdobe Project Cometはあちらこちらで見られ、大抵使い勝手が良いツールである。

ツールの多様化には次の傾向が影響していると言える。

  1. デジタルデザイナーの需要が増え、この職に就きやすくなった。
  2. プラットフォームやそれらのインタラクション、ビジュアル言語などが統一された(例えばiOSのグラフィックがそれほど複雑ではなくなり構造化された。また、Googleは統合されたマテリアルデザインガイドラインを発表した)。
  3. 専門性により特化するようになった(デザイナーが求められるのはiOSのみに対応するデザインの作成で、全ての端末に対応している素晴らしいデジタルデザインではない)。


Sketchのようなデザインツールの場合、iOSやAndroid用にコンポーネントが設定されている。

これは理解できる。この業界が成長するにつれ、より断片化され、専門性に特化されている傾向の中、寡占のキープレーヤーであるGoogleやAppleは、特定の教育内容の応用やデザインのコンポーネント、ガイドラインなどの作成や流通、修得を簡単にこなしているのである。


世界におけるスマートフォン用OSの市場占有率(出荷台数)

スマートフォン市場の96.7%を占めるのは、iOS(市場の1/7を占め、統合され、アップスケールで、金を使う顧客が多い)とAndroid(市場の6/7を占め、断片化しており、古くて使用できないOSや端末が多くある。さらに、金を使う顧客が少ない)である。

しかし、UXデザイナーとして驚かされるのは、新しいツールがデザイナー向けであるということだ。新しいツールは次のことが重視されている。

  1. 既存のデザインプロセスの簡略化
  2. 相互作用のモデルの改善(例えば、アニメーションや端末の反応や動きなど)
  3. 分散型や遠隔型の見直しプロセスが有効
  4. 開発者への引き継ぎが簡単

これらはそれぞれ素晴らしいが、既存のデザインのワークフローの改善を強化することを基本的に重視している。

そういう意味ではこれらのツールは、「同じ作業をより効率的かつ遠隔で色んな人と作業ができるようにする」ということにすぎないように思える。

問題は、すでに既存のデザインワークフローには限界があり、デザイナーの定義が急速に変化していることだ。


コーヒーを飲んで、馬鹿なことをもっと速くエネルギッシュにやろう

開発者によってデザインされた良質な製品が、毎日のように生み出されているかを紹介しているのが、Product Huntのホームページである。確かに構造化されたデザインコンポーネントやドキュメンテーションの整った GoogleAppleのデザイン言語が存在するのに、果たしてデザイナーは必要なのか疑問に思う。SketchやPhotoshop、あるいは他のデザインツールなど必要ないのだ。


Ryan HooverProduct Hunt は、単なる楽しい商品の陳列棚ではなく、効率的なスタートアップの実験や顧客開発の早期導入に最適なプラットフォームの1つである。

デザインプラットフォームの多くは大抵応急処置にすぎない。多くの場合、後回しにされているが、あえて重要なものとして取り上げるべき課題はデザインに関する考え方がどのように変化したのかである。

デザイナーはアーティストやスタイリストではない

IntercomのPaul Adamsの書いたDribbblisation of Designという素晴らしい記事で、デザイナーの多くはアイデアの映像化とそれの静的(または、かすかなアニメーション)スクリーンへの連動を基本的なレベルでいじり過ぎていると書いている。さらに次のように述べている。

もし製品デザインがある特定のビジネス内に限定された人のための問題解決を目的とすると、UXデザイナーやUXデザイン製品と呼ばれるものはデジタルアートを実践しているに過ぎなくなる。彼らはアーティスト、スタイリストになってしまっている。美しい形態のものを実行する能力は確かに重要であるが、製品デザインをする上では重要ではない。[中略]デザイナーは問題と解決策をピクセル数で定義するのではなく、システムのコンポーネント間でどのようなことが発生するのかという観点から定義する必要がある。

この考えをさらに深めると、とても重要な推測に突き当たる。次のとおりだ。

デザイナーにとってこれまでは職人技だけで十分だったが、今や技術だけでデザインを成功させることはできない。

デザインとは、単に技術的にさらに美しくすることではなく、技術と思考でもって問題を解決することでもない。体験したことのない領域を常に描き続けることが求められる。つまり、デザインは、現状況下において、未来像を持ち込み、試験し、改善することを繰り返し実行する構造的な手法となるのだ。

出典:http://www.s-cordova.com/uxdesign/#uxui


後編 → 今後のUXデザインツールの正しい使い方