デザイン部門は「No」と言えているか

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デザイナーのリソース調整が必要に迫られるという状況はデザイン部門がうまく行っていない可能性を指す。本質的にデザイン部門はリソース不足になるという点を理解し、仕事への姿勢を考える。

ある日Twitterでこんな質問を受けた。

デザイナーが複数のプロジェクトにアサインされてる状況で、リソース調整やプロジェクトの計画はどうするのがベストだと思う? — Sally Carson

私は140文字に収まる内容で返した。

簡単な答えとしては、デザイナーをもっと雇えばいい。または仕事の質が維持できるだけの数にプロジェクトを絞り込むことだ。つまり、時々はプロジェクトを断らざるを得ない。 — Peter Merholz

しかしその後もよく似たような質問を受けるので、もっと深い説明をするべきだと考えるようになった。

まず軽い説明から入ろうと思う。恐らく、デザイナーは足りていない。デザインチームについて時々Sallyと同じような苦労をしている人の話を聞くが、問題だと感じる点がある。それは、少なすぎる人数で、たくさんの物事をどうにか回そうとしていることだ。それに元々、求められるクオリティのものを仕上げるために何人の力が必要になるか理解されていないし、人手が余っているよりは足りない方がつましい経営である(それに費用の節約にもなる)。よって大体のデザイナーチームは人手不足だ。

では十分にデザイナーを確保できない場合どうすれば良いのか。この議論に関して私は新著『Org Design for Design Orgs(デザイン会社のための組織デザイン)』で、以下のように述べた。

デザイナーは自らの首を絞める気質を内包している事が多い。その1つは、デザイナーは人を満足させたがるということだ。デザイナーは、他人(クライアント、同僚、ユーザー)を喜ばせたいと願うものだ。だから何かを頼まれた時、大抵のデザイナーは二つ返事で快諾してしまう。デザイナーに特徴的なもう1つの気質は自分が蚊帳の外に置かれたままプロジェクトが進むのを嫌う、という点だ。当初のデザイン通りではない形でプロダクトが納品されそうだと気づいた時、デザイナーだったら、たとえ頼まれていなくても、ひどいプロダクトがリリースされないように、どうにかして良くする方法はないかと行動するものだ。

そう考えること自体は悪くないのだが、それがもたらす結果は自壊的だ。最近のプロジェクトチームは最小限まで人数を絞った編成になっている。あまりにも多くのタスクが並行して進められているので、メンバーの残業は多くなり、その結果、成果物の質もいまひとつになる。デザイン部門とは、良いものを生み出してこそ存在意義が認められる組織だ。もしデザイン部門が担当するプロジェクトが多すぎてゴミを生み出してしまったら、それと付き合っていくのは社内の他の部門だ。デザイン部門の責任者は「No」と言う勇気を出さなければならない。デザイン部門は、プロジェクトの優先順位付けが適切に行われ、十分な人数のスタッフが配置され、質の高いソリューションを生み出すのに十分な時間が与えられて初めて本領を発揮できる。これは極端に長いゆとりを持たせたスケジュールを設定して、いつまでも熟考や探求ができるようにしろと言うのではない。デザイン部門の優れたリーダーなら、これ以上仕事を増やすと質を維持できなくなって売り上げが上がらなくなる、という限界点を心得ているはずだ。肝心なのは、質を維持できる分量の仕事だけを引き受けて、本来不向きな仕事は断る権限をデザイン部門に与えることだ。

会社組織とは常に、社内リソースで進められる適切な作業量以上の仕事をこなそうと挑戦する。さらに優先順位の設定ができていない人は多い。「優先順位の設定」の主な意義は、冒頭のSallyの質問の通りだ。プロジェクトチームに適切な人員を配置して、達成しなければならない目標への集中力を高めるということだ。既に配置されているデザイナーをさらにリソース調整する必要は本来ないことだ。配置された場所で仕事をしているのなら、それが即ちリソース調整された結果なのだから。デザイナーのリソース調整をしなければならない状況に直面した場合、それは少なすぎる人数でたくさんの物事に取り組もうと欲張りすぎている兆候だ。もしプロジェクトがリソース不足でうまく進んでいなかったり、長い間進捗が無い状態(例えば解散したり、違う目的のために再編成したりするなどの動きがない状態)が続くのであれば、そのプロジェクトが今必要では無いことは明らかだ。

デザイン部門の責任者にとって、特に他部門からの信頼を得たいと望んでいる時に、周りの同僚に向かって「No」と言うのはつらい。しかし、これは避けられないことだ。ここは信念を曲げずに頑張ろう。チームに十分な人員が揃っているからこそ、良い仕事ができることを周りに示そう。周りの理解が深まればデザイン部門にもっと人を増やせと騒いでくれるようになる。

この動きは最終的に、全社的な他の問題、言い換えれば新人採用や雇用の問題にもつながる。こういった問題は取り組む価値のあるものだ。