経験に囚われないための5つのクリエイティブ思考術

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最高の自分になるには、どうしたらいいか? 素晴らしい成果を続々と生み出し、創造性に富み、聞き上手でありながら自分を売り込む術も心得ている。そんな自分になるための方法を説明した記事は、山ほど転がっている。

これは、ごく自然なことだろう。

人は皆、できる限り高みを目指そうとするものだ。そして競争相手より1%でも、2%でも秀でたいという思いから、あらゆることを行う。

書籍を読んで新しいことを試し、過去を教訓にしようと努めるのだ。

こうして私たちは、あと数パーセントを追い求めることに多大な時間を費やし、より大きな変化を遂げるチャンスを見逃しているのだ。

このあたりで、考え方を変えてみてはどうだろう?

些細なことにこだわるのをやめて、一度まっさらな原点に立ち返ってみるのだ。

なぜ全てを手放す必要があるのか

人生の教訓は、Chuck Palahniukの映画『ファイト・クラブ』に凝縮されていると私は思っている。

全てを失って、初めて真の自由を得る

あなたは今、自分はこの上なく自由な状況にあると感じているかもしれない。でも実際は、何にも縛られていない人など存在しないのではないだろうか。私たちは自ら背負い込んだ金銭的負担や社会的重圧に加え、無意識のうちに築いた心の壁や偏見で身動きが取れなくなっている。

Robert Pirsig氏は、『禅とオートバイ修理技術』という著書の中で、 「南インドに古くから伝わるモンキートラップ」について説明している。この話には、中に米が入った状態で杭につながれたココナッツが出てくる。ココナッツには非常に小さな穴が空いていて、米を取るにはその穴から手を入れるしかない。そして、サルは米をつかもうと拳を握るのですが、そこで穴から手が抜けないという状況に陥る。物理的に手が抜けないだけではなく、精神的に手放せなくなってしまうのだ。

上記の例では米だったが、日常生活の中で私たちは皆、アイデアや感情、信念などに固執するという過ちを犯している。そこにプラスの要素はないと、頭では分かっていてもだ。何かを手放さざるを得なくなった時、私たちの邪魔をするのは自らの経験なのだ。

これは科学的には、アインシュテルング効果と呼ばれ、先入観や過去の経験にとらわれて、より良い選択肢が目に入らなくなってしまうことを意味する。

オーストリアの心理学者Merim Bilalic氏は、この効果の程度を調べるために一連の実験を行った。彼女はチェスの名人たちに、あらかじめ配置されたチェスボードを見せ、勝つための2つの手を提示した。有名な5手詰めと、あまり知られていない3手詰めだ。

すると、ほぼ全員の名人が有名な方の手を選んだ。ところが実際に早く勝てるのは、もう一方の手であった。この結果を受けてBilalic氏は、以下のように語っている。

彼らのような名人でさえ、自らの知識に頭の中を支配されており、最良の戦術が見極められなかった。

経験は私たちを照らす光にも、視界を遮る影にもなる。

このようなことは目に見えないからこそ厄介だ。私たちは過去の経験を通して自分の世界観を作り上げ、過去と同じことが将来も起きると考えるよう脳裏に刻み込んでいる。

こうして私たちは、自らの経験のせいで視界が狭くなり、その先に無数に広がっている(多くの場合より良い)選択肢が見えなくなっているのだ。

では広い視野を取り戻すには、どう努力すればいいのだろうか。

1. エゴを捨て去る

長年の経験を通して形成された”自我”やエゴを捨てる上で要となる考え方は、意外にも仏教にある。仏教の基本理念は、己の願望や物への執着、(仕事とプライベート両方の)不健全な関係を断ち切ることだ。しかし私たちは、これらの問題からなかなか離れられません。上記のことを頭から排除したら、その分だけ心に穴が空くのではないかと不安だからだ。

人はなかなか苦痛から逃れられない生き物だ。未知のものを恐れるがゆえに、慣れ親しんだ苦痛を選んでしまうからだ。 — Thich Nhat Hanh氏

しかし、何人もの偉大な創始者たちが語っているように、空虚は恐れるべきものではない。むしろそれは、過去の経験に縛られず、新たな視点で世界と向き合うチャンスなのだ。

世界中のあらゆる場所を巡ろうと、ひたすら星空の下を飛び回っていた — Jack Kerouac氏『路上』より

Leo Babauta氏の「Zen Habits」というブログには、空虚感と向き合い、それを生かす方法について書かれた貴重な助言がある。まずは手始めにEmpty Container(空っぽの入れ物)Letting Go(手放すということ)の記事を読んでみてほしい。

2. 固定概念を捨てる

私たちの世界観は、自分の好きなことや嫌いなこと、意見、道徳、倫理などで満ちている。しかし、それは重要であると共に大きな目くらましになり得る。

新しい考えを受ける時よりも、どのように初対面の人を無意識に判断する時の方が、自分の人間性が最も顕著に表れる。私たちは不規則で混沌としたものではなく、過去の経験を基準に判断する。

この混沌としたところで、人は最も創造力を発揮できるのだ。BrainPickings.orgの創設者であるMaria Popovaの言葉を借りると、創造力とは関連付いていないものを関連付ける能力なのだ。

固定概念を捨て、あらゆる考えやつながりを受け入れるように意識してほしい。

3. 初心に戻る

初心者の心には多くの可能性がある。しかし、専門家と言われる人の心には、それはほとんどない。— 鈴木俊隆氏

禅の教えである「初心」は、再び初心者の心を持って人生を経験することの強みについて話している。

赤ちゃんが歩けるようになる過程を思い出してほしい。赤ちゃんはまず、立ち、よちよちと前進し、そして何回も何回も転ぶ。しかし、何回も立ち上がり、歩こうと頑張る。

人は新たな技能を身につけるとき、基本的なところから吸収していく。それぞれの内容を十分認識し、集中力と意志をもって学習する。

人は何かに熟達してしまうと、意識的に何かをすることはなくなってしまい、頭が自動運転モードになってしまいがちだ。

初心者のように振る舞うことは、経験を生かすことができなくなる、判断ができなくなることにはならない。反対にそれらを手段として、いざという時に使えば良いのだ。

初心者の心を持つことは、経験を否定することではない。先入観なしに新しい状況に自分たちの経験をどのように適用するか考えることのなのだ。— Mary Jaksch氏

4. 考えを巡らせる

思考を自由にしてほしい。午後だけや週末だけそうするのではなく、1週間や1カ月間考えをあらゆる方向に巡らせてほしい。

思考がさまようことは、将来を計画するのに役立つだけではなく、巡らせた考えをそれぞれ関連付けることで、工夫した問題解決能力の強化になることが示されている。そのため、多くの解決策はいきなり何もないところから「現れる」のだ(アイザック・ニュートンとリンゴの木を思い出してほしい)。


さまよえる思考は時間に捕らわれない、だから我々は過去から学び未来の計画を立てられるのだ。
— FERRIS JABR氏

思考がさまよっている間に「失うもの」は、別の体験をしたり道をたどることで、後で取り返すことができる。

5. 難問をじっくり考える

熟慮は過去から学ぶ上で最も重要な手段だが、客観性を持つことで最強の手段となる。

例えば、第三者の観点から自分の過去の行いや選択を見てみてほしい。なぜ、そのような行動に出たのだろうか。なぜ、そのような選択をしたのだおるか。

客観性は、新しい知識を学習する能力に大きく影響することもある。ハーバード大学大学院経営学研究科の研究で、二重過程の学習方法を実行し、「自分の行動を意識する」人の方が、しない人よりも、研究室での実験と実世界での実験の両方において成績が23%近くも改善されることが最近分かった。

自分の先入観について熟孝してほしい。何に傷つき、なぜ傷つくのかをじっくり考えるのだ。単に、過去を振り返り正しい行動をしたと結論づけるだけではだめなのだ。熟慮とは、自分をじっくり見つめ直し、無意識の行動の原因を追及するのだ。

まとめ

本稿で一番理解してほしいことは、過去の経験によって、未来の色を左右し、多数のチャンスを見逃してしまう可能性があるということだ。

過去の経験を重視するために、迅速な決断ができるかもしれないが、堂々巡りになってしまう可能性もある。

その連鎖を断ち切るのだ。一歩下がって、先入観や予想、固定概念をなくし、客観的に物事を見る機会を自分に与えるのだ。

自分の未来を過去で定義するのをやめた時、驚くべき光景が見えるだろう。


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この投稿はCrew blogに掲載されたものです。
画像出典:Charles S.Made with Unsplash